第14話
「そうだね、皇帝陛下は公私のけじめをつけられる方なのだよ。
それに今回の件は両方考えておられる。
陛下や私に敵意が向かないように、イザベラを生贄にしたのも確かだよ。
だが同時にイザベラがこれ以上嫌な思いをしないように、かばったのもの確かだ。
代々の皇帝陛下は、どうしようもない馬鹿を除けば、常に家臣を抑えることに腐心してきたのだよ。
家臣の暴走を許せば、利権を求めて簡単に隣国に攻めこもうとする。
そんな事を許せば、皇国の民も隣国の民も、皇室も民も望まぬ戦争で死傷することになるからね」
驚きました。
何の問題もないと思っていた大帝国が、内部では皇帝陛下や皇太子殿下が腐心するほど問題だらけだったのですね。
いずれ私がその大帝国の皇后に成るのかと思うと、身の引き締まる思いです。
「では、私は皇帝陛下ため皇国のため、何をすればいいのでしょうか?」
「そうだね。
まずは私の子供を産んでくれることだね。
それ以上に大切で役に立つことはないよ」
あれぇぇ。
ルーカス様が奇麗に結い上げられた私の髪をほどこうとされます。
真剣な話をしていたと思っていたので、私にはそんな気はなかったのですが、ルーカス様は欲望の籠った眼で私を見つめられます。
こんな時のルーカス様を止める事はできません。
熱く硬い想いを私に届かせるまでは、政治向きの話など無粋なだけです。
その事は私が女王でルーカス様が王配であった時に思い知りました。
いまは互いの愛を確かめ合うだけです。
一度では済まないでしょう。
ルーカス様は朝まで私を放してくださらないでしょう。
私も嫌なわけではありません。
皇国に入ってからは公式行事が多すぎて、愛を確かめ合う機会が減ってました。
ルーカス様の愛だけが私の頼りです。
「皇太子殿下、皇太子妃殿下、おはようございます。
昨晩は励まれたようでございますね。
皇帝陛下も皇后陛下もたいそうよろこんでおられます。
今日の公式行事は欠席するようにとのお言葉でございます」
恥ずかしい!
皇族王族の宿命とはいえ、房事まで公式報告されるのです。
義父義母の皇帝陛下と皇后陛下に、房事が行われた日時や回数まで報告され、公式記録として残されるのです!
その場を見守り報告するのは女官ですが、直ぐにセバスチャンやジョセフに伝えられますから、侍従や護衛まで知ることになるのです。
羞恥心の強いものには耐えられないものがあります。
「そうか、それは助かるよ。
皇帝陛下も皇后陛下も皇孫の誕生を心待ちにしておられるのだろう。
では湯浴みと朝食の用意をしてくれ」
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