第2話

「なんだ、改まってどうした?」


「私を御嬢様と同行させてください!」


 騎士の誓いを立てて私の守護騎士になってくれていたハリーが、とんでもないことを父上に願い出ています。

 豪胆な父上もすこし驚いておられます。


「オリビアは王太子殿下に対する不敬罪を受けている。

 国王陛下も追放刑を言い渡された。

 王家による明らかな冤罪だが、今はまだ表立って逆らう事はできない。

 だからオレンモア侯爵家の家臣を護衛につけることはできない。

 どうしても同行するというのなら、オレンモア侯爵家を追放しなければいけない。

 その覚悟で言っているのだな?」


「はい!

 私は御嬢様に対して守護騎士の誓いを立てております。

 他の者ならば、オレンモア侯爵家が偽って護衛をつけたと思われてしまいますが、私ならば堂々と御嬢様についていくことができます」


「ふうむ……」


「私も、私も同行させてください!

 ハリー殿一人では、御嬢様に身の回りの御世話ができません。

 どうか、どうか、同行させてください!」


「ふうむ……

 ハリーは守護騎士なので、王家も他家も文句は言えんだろう。

 いや、むしろ他家は称賛してくれるはずだ。

 だがアバは王家に付け入るスキを与えてしまうかもしれん」


「侯爵閣下、私は御嬢様の乳姉妹でございます。

 追放刑に処せられた御嬢様を見捨て、一人安穏と暮らすことなどできません。

 他家の方々も、王太子殿下と国王陛下のなされようには、内心危惧を覚えておられるではないでしょうか?

 表立っての護衛をつけるのは無理でも、守護騎士や乳母や乳兄弟が忠誠を示すことは、今後の事も考えて認めてくれるのではないでしょうか?」


「ふうむ……」


 父上が熟考されていおられます。

 確かにハリーとアバの言葉は考慮に値します。

 父上も、アメリアが刺客を放つと明言した以上、父娘の情で私を無防備で行かせたくはないのです。

 ですが同時に、オレンモア侯爵家の当主としては、明らかに証拠となる言葉を吐いたアメリアを処断する好機でもあります。


「分かった。

 ハリーとアバにはオリビアについていってもらう。

 だが二人とも召し放ちになるぞ。

 いいのだな?」


「「はい」」


「侯爵閣下、重ねての願い、無礼を承知でお願いしたします!」


「まだあるのか?」


「はい、母の事でございます。

 母は乳母を務めさせていただきました。

 今の条件でしたら、御嬢様についていくことが可能でございます。

 母が希望したら、一緒に御嬢様のお供をさせてください!」


「エスメはもういい歳ではないか。

 それにエスメの性格なら、必ずオリビアと同行すると言いだすぞ。

 それでは残されるテディはどうなる?」


「父の事は心配ございません。

 妹も弟も侍女たちもいます。

 心配なのは御嬢様ではありませんか!

 どうか、どうか、伏してお願い申し上げます!」


 ハリーとアバの想いが伝わってきます。

 うれしくて、涙が止まりません。

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