09 ユウコ/結子

二階にある寝室のベッドでうとうとしながら本を読んでいると、下の階で物音がした。今日は帰って来ないかもしれないと思っていたので、嬉しくて急いで向かう。家の中に、お酒の気配が侵入してくるのがわかる。沙耶、珍しくたくさん飲んできたな。玄関に近づくと沙耶以外の匂いを感じた。男の人の匂い。電気をつける。玄関で仰向けに倒れている沙耶に、知らない男の人が覆いかぶさっていた。

「なにしてるの」

自分でも声が震えているのがわかる。男の人はこちらを見るなり出て行った。急いで玄関の鍵をかけ、沙耶の側へ座り込む。鼓動が煩い。自分の心臓が耳の中にあるみたいだ。

「沙耶、大丈夫?」

抱き起こすと、酔っ払った沙耶が私を押し倒して、右手で私の胸を愛撫しながら口の中へ舌を押し込んでくる。アルコールの味がする。動きが止まったかと思ったら、上目遣いで申し訳なさそうに言った。

「お水飲みたい」

いつもと変わらない様子にほっとする。

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