29.4

 ヤンから、俺といると落ち着いて眠れたから眠るまでそばにいて欲しいと言われた。医者が言うにはもういつ生まれてもおかしくないらしいから、だからこそ不安になるのかもしれない。これからは、ヤンが眠るまで手を握っていよう。ヤンはもう俺の気配では警戒することがない。俺が部屋を出入りしたところで起きないのだ。

 勿論、一人でいたい時は言って欲しいと伝えてある。


 起きている時も寝ている時も、髪を撫でてやると心地良さそうにするのがまるで猫のようだ。事実、ヤンを動物に喩えるなら猫なのだろう。ヤンの生き方はしなやかだ、と思う。強い芯がありながら、それを周りに押し付けることはしないし悟らせもしない。捉えようとすればするりと抜け出してしまうような。

 もっとも、俺の前でのヤンは膝の上で丸まって、撫でられるのを待っている猫に見えてしまうが。そんなところもまた可愛らしいのだ。

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