第82話 土

パラ…



パラ…





パタン



「…ねえ~、これ次の巻ある~?」

「…んー? …ああ、それが最新刊。面白かった?」



う~ん…



「まぁ…、それなりに…」

「異世界転生モノの中ではけっこう人気なんだけどなぁ、それ」



ふ~ん…



「最初に主人公が死んじゃうのは何でなの?」

「死なないと転生できないじゃん」



ん~…?



「でも記憶残ってるよね」

「生き返った先で昔の記憶を駆使するってのが、異世界転生の醍醐味ですから」



え~…



「それ、辛くない?」

「あー…、そっちの考えに行っちゃうか…。でも、そうしないと物語始まらなくない?」



あ~…



「それもそうかぁ…」

「まぁ、異世界転生モノの始まりかたにもいろいろあるけどね。この本の始まりかたは王道かなぁ」



へ~…



「…王道ねぇ。…これって元の体ってどうなってるの?」

「え…? いや…、わかんない…。今のところそういう描写は無いし…。気になんの?」



うん



「気になる」

「なんで?」



え~?



「自分に置き換えたら怖くない? これだと過労死だけどさ~」

「うん」



キリッ



「思いがけず死んじゃったとは言え、セミの脱け殻みたいに放置するのはダメだと思う。アタシは嫌っ!」

「いやいや、ちゃんと埋葬してあげるから…」



え~…



「ほんと~? 残したりしない? ちゃんと土に戻してよ~?」

「…あたしってどういうイメージなの?」



うんと~…



「"寂しくて離れたくないー"って、アタシが死んでも駄々こねるイメージ」

「えー…、違…、うーん…」



ふふ



「正解でしょ?」

「…まぁ、…寂しいよ。…いなくなるんだもんね」



ふっふっふ…



「死ぬときは道連れにしてあげるね…」

「嫌だー…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る