第43話 管理者
クロミナの後についてしばらく歩いていく。シェルターは想像以上に大きいようで、いたるところに人造人間が住んでいるようだった。
「……いつからここにいるんだ?」
サヨが尋ねると、クロミナが振り返る。
「私には正確な年数はわかりません。『管理者』ならわかるかと」
「そうか……管理者ってヤツも、人造人間なんだろ?」
「いえ、管理者は管理者です」
クロミナはそれ以上は何も言わなかった。サヨは肩をすくめて俺のことを見る。おそらく人造人間であることには間違いないのだろうが……このシェルターに街を作ろうと考えた人物は一体どんなヤツなんだろうか。
「ここです」
と、しばらく歩いて、シェルターの壁際までやってきた。そこには扉がある。
「さぁ、どうぞ」
そう言ってクロミナは扉を開け、中へ入っていく。俺とサヨもそのまま扉の中に入ってしまった。
扉の中は……大きな部屋のようだった。外と同じように堅固な作りとなっている。
違うのは、そこがまるで……工場のようなことであった。作業台やネジなんかの部品……それらが辺りに転がっている。
そして、部屋の奥に黒い人影が俺たちに背中を向けて座っている。
「『管理者』。先程報告した外部からの訪問者を連れてきました」
すると、黒い人影は立ち上がった。それが立ち上がると同時に……俺は驚いてしまった。
大きい。とにかく、大きかった。俺やサヨの二倍以上はあるだろうか。
それでいて頭部は俺やサヨのように人間の顔ではなく、黒いヘルメットのようなものであった。
彼は白い白衣のようなものを着ていたが、頭部の真ん中には青い丸いライトが灯っていて、なんだか不気味な存在に見えた。
「よく連れてきてくれました。クロミナ。後は私に任せてください」
「はい。では、お二人とも、私はこれで」
そういって、クロミナは俺とサヨをおいて出ていってしまった。残された俺達は巨大な人造人間と対峙することになる。
それにしても大きい。人の形をしていることで人造人間とわかるが、そうでなければ、ロボットにしか見えないだろう……と、俺はそこまで考えて思い出した。
確か、工場で出会ったニナが話した人造人間を作る人造人間……その特徴が、今目の前にいる人造人間とよく似ているのである。
「はじめまして。サヨとナオヤ。私は『管理者』……いえ、クロト、と呼んでください」
優しげな声でそう語りかける人造人間……クロト。
サヨは警戒するように鋭い視線を向けている。
「お前が……この街を作ったそうだな。随分と珍しい趣味を持っているな」
「趣味? いえいえ。これが私の仕事ですから」
クロトはわざとらしい身振りで否定する。
「仕事……街を作るのが、仕事なの?」
俺がそう質問すると、なぜかサヨとは反応が違った。彼はその頭部の青いライトをなぜか俺に集中させる。
「おぉ。こんなところで出会えるとは思いませんでした。素晴らしい……よく見せてください」
そう言って、なぜかクロトは俺に頭部を近づけてくる。意味がわからず俺は思わず後ずさってしまった。
「あぁ、申し訳ない。これは、後にしましょう。先程の質問、街を作るのが私の仕事か、ということでしたね?」
「え……あ、うん」
「半分当たっていて、半分間違っています。街そのものを作るのは私の仕事ではありません。私の仕事は……街に住む人達を作ることですから」
「え……じゃあ……」
俺が先を言い終わる前に、クロトは青い光が灯る頭部を大きく頷かせる。
「えぇ。私の仕事は人造人間を作ることですから」
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