第25話 面倒

 人造人間を作る人造人間……かつては、各地の工場で人造人間が作られたと、サヨが言っていた。


 しかし、今では俺達がいる工場も稼働していない。それなのに、人造人間を作ることができる人造人間って……どういう存在なのだろうか。


「……その人は、今どこにいるんだ?」


「さぁ……私を置いて勝手にどこかに行ってしまったからな。わからない」


「……ニナは、その人造人間と長い時間一緒だったの?」


 俺がそう言うとまたニナは目を細くして昔を思い出しているようだった。


「そうだな……元々、私も半ば壊れかけでこの工場に辿り着いたんだ。もうすぐ機能停止する……そう思っていた矢先に、アイツが現れた。そして、あっという間に私の故障をすべて直したんだ」


「へぇ……じゃあ、ニナがサヨを直せたのは……」


「あぁ。ソイツの技術を見様見真似で真似していてたら、いつのまにできるようになったんだよ……といっても、私ができるのは真似だけだ。さっき、動けない私の姉妹がいただろう?」


 姉妹……さっき俺とサヨが見つけたA型人造人間のことだろう。


「あれは、ソイツが作ったものだ。私の姿を真似して作ったんだと……ハハッ。すごいよな。まだ世界に昼が存在していた頃でさえ、工場を一つ動かして作っていたっていうのに、人造人間一体が簡単にそれをやってのけるんだぞ?」


 まるで今でも信じられないというようにニナはそう言う。確かに俺でもそんな話はにわかには信じられなかった。


「とにかく……すごい人だったんだね」


「あぁ……だが、どこか……恐ろしかったな」


「え? 恐ろしかった?」


「そうだ。まぁ、見た目からして普通の人造人間じゃないんだ。人の形をしているが、全身、夜の闇みたいな真っ黒でな……それにデカいんだ。私達より……頭3つ分くらい大きいんじゃないかな。まぁ、こればっかりは実際に見ないとな。写真があればよかったんだが……」


 ……なんだかニナの話を聞いているとだんだんそんな人造人間が実在しているのかわからなくなってきた。


 でも、実際に、A型人造人間は作成されているし、ニナがサヨの故障を直せたのもソイツのおかげ……ということは、実際にいるのだろうか。


「おい」


 と、そんな話をしていると、サヨが戻ってきた。その顔は……目の前のニナとまったく同じで、傷一つない綺麗な顔になっていた。


「おぉ。やっぱり美人だな。私達の顔は」


 ニナが嬉しそうに、そして、どこか自慢気にそう言う。しかし、サヨはやはり不機嫌そうだった。


「……ナオヤ。用事は済んだ。さっさとこんなところ出ていくぞ」


「え……もう?」


 俺がそう言うとサヨは不機嫌そうな視線を向けてくる。明らかにいますぐここから出たいのだろう。


「そうだぞ。せっかくここで会ったのも何かの縁だ。同じ姉妹同士、もう少し話をしようじゃないか」


「……私は、お前なんとか話をしたくない」


 そう言うとサヨは今一度俺の方に顔を向けて、責めるような目つきを投げつけてくる。


「ナオヤも……ソイツとそんなに話をしたいのなら、ソイツと旅を続ければいい。顔も体つきも、私と全く同じなんだからな」


 そう言ってサヨはまた部屋を出ていってしまった。


「あ……サヨ……!」


「放って置いていい。どうせどこにも行かないさ」


 まるで分かりきっているかのようにニナはそう言う。


「え……でも……」


「私のことは私が一番分かっている。今は一人にしてほしい……そんな面倒な性格をしているんだ、私達は……それより、お前に少し見てもらいたいものがある。来てくれ」


 そう言ってニナは立ち上がった。


 サヨのことも気になったが……サヨと同じ顔をしているニナの言うことはどこか説得力があり、そのままニナの方について行ってしまったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る