第24話 技術者

「しかし……結構派手に壊したな」


 俺達は小さな部屋に通された。どうやらそこはニナの私室らしい。機械の部品が散らかっている。


 ニナは少し呆れながら、サヨの左腕を見ていた。サヨはナゼか少し恥ずかしそうだった。


「相手はロボットか……まぁ、大方、旧式化して壊れかかったヤツが暴走したんだろ?」


「え……よくわかるね」


 思わず俺は驚いてしまった。ニナは得意げに微笑む。


「まぁ、こういう仕事をしているとだんだんわかってくるんだよ。どういう経緯でぶっ壊れた、とか、故障したとか……で、そっちの顔の傷は?」


 ニナはそう言って今一度サヨの方を見る。


「これは……元からだ」


「元から、か。皮膚用の装甲も余っているから、あとで貼ってやろう。で、ナオヤはどこか悪いところはあるのか?」


 ニナはそう俺に聞いてくる。悪いところ……思い当たる限りではそれはないように思える。


「……一応、元気かな」


「そうか。何よりだ」


 それから、ニナは手際よくサヨの左腕を修理していった。それこそ、人間が機械を直しているかのようだ。実際は、機械が機械を直しているわけなのだが。


 しばらくの時間が経って、ニナが作業を止める。


「よし。これでちょっと接続してみるか」


 そう言って、ニナはサヨの腕に左腕を接続する。すると、元通りにサヨの左腕は動いていた。


「おぉ。すごいな、ニナ。まるで人間の技術者みたいだ」


「ハハッ。まぁ、慣れだよ。慣れ」


 しかし、サヨの方はと言うと、治ったというのにあまり嬉しそうではなかった。


「サヨ……大丈夫?」


「……あぁ。大丈夫だ」


 そう言うとサヨは立ち上がる。


「……皮膚用の装甲の場所は?」


「なんだ。自分で取りに行ってくれるのか?」


「違う。貼り替えくらい自分でできる」


 サヨはなんだか不満そうだった。


 ニナは先程の動かない人造人間がいた場所にそれがあると教えた。サヨはそのまま部屋を出ていってしまった。


「……なんだか、サヨ、機嫌悪いな」


「それはそうだろう。自分と同型の人造人間に会って、気分がいいわけがない」


 ニナはなぜか嬉しそうにそう言う。


「ニナは……嬉しそうだけど?」


「私は変わっているからな。動いている姉妹がまだいるってわかったことが、嬉しいのさ」


「……A型人造人間も、今はもういないの? さっき動かないけど、たくさんの機体を見たけど……」


 すると、ニナは遠くを見つめるように目を細める。そして、小さくため息を付いてから話を続ける。


「あれは、新しく作られたやつだ」


「え……作られた、って……工場で? 工場が稼働してたの?」


「違う。一人の人造人間によって作られたんだよ」


「人造人間によって……作られた?」


 流石に俺も信じられなかった。今のニナの言葉を正しく理解するとするならば……


「そうだ。工場の設備を使わずに、自分の力だけで人造人間を作ることができる人造人間が、かつて、この工場にはいたんだよ」

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