第22話 姉妹
「……随分と大きい建物だな」
俺達の前に現れたのは、とても大きな建造物だった。何本ものパイプや、大きなタンクがいくつも存在している。
それは夜の闇の中ではまるで巨大な生物の死骸のように見えた。
「これは……工場か?」
サヨが珍しそうにそう言う。工場……何かを生産する場所だという認識しかない。しかし、電気が付いていないところを見ると、今は稼働していないように見える。
「……ねぇ、ここでは、人造人間を作っていたりしたのかな?」
ふと、俺はそんな質問をしてしまった。
「……それは……わからないな。ただ、昔はどの工場でも人造人間を作っていたとは聞くが……」
「じゃあ、もしかして、左腕を直すパーツ……それだけじゃない。顔を直すパーツもあるんじゃない?」
俺がそう言うとサヨは少し考え込んでいたが、小さくうなずいた。
「パーツを見つけただけでは直すことはできないが……探してみる価値はあるかもな。それに……」
と、サヨは目を細めて俺の事を見る。
「お前……どう見てもこの工場に入りたそうな顔をしているからな」
……どうやら完全に見透かされてしまったようである。俺は素直にそれを認めた。そして、俺達は工場に潜入することにした。
しばらく探してから、工場の入り口の一つと思われる場所を見つけた。俺達はそこからそのまま工場の中に入る。
工場には電気が通っていないようで、外の闇よりも暗い。そこかしこに、何の部品かわからないものが転がっている。
「……さすがにホテルみたいなロボットはいないみたいだな」
サヨはやはり警戒しているようだった。俺もさすがにいきなりなにかに襲われたら対処できる気がしない。
と、そんな時だった。
「ん? サヨ、あれ……」
前方に多数の人影が見える。俺は思わずその場で立ち止まってしまった。
「……お前は私の後ろから付いてこい。片腕でも、お前より私の方が戦闘力があるだろうからな」
サヨの言うことは最もだと思い、そのまま俺はサヨについていく。人影は俺達が近づいてもまるで動かない。
「え……こ、これは……」
いきなりサヨが立ち止まってしまった。俺も同時に立ち止まる。
「サヨ、どうしたの?」
「これは……姉妹達だ」
サヨが驚いた顔で、そう言った。俺も目を凝らしてみてみる。
と、確かに前方に複数あった人影の顔は……サヨの顔と全く同じだった。それら複数のサヨと同じ顔をした女性はまるで人形のように動かない。
「……ということは、ここは……人造人間の工場だったのか」
「その通り。しかも、A型人造人間のな」
声がいきなり聞こえてきた。俺とサヨは同時に振り返る。
「珍しいな。こんな場所に客……しかも、そのうちの一人は姉妹とは」
暗闇の中でぼんやりと浮かぶその姿も、サヨと全く同じ容姿の女性なのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます