第9話 コンビニ
「……なんだろう、あれ」
旅を続けていると、目の前に現れたのは、珍しく灯りがついている建物だった。
「誰かいるのかな……行ってみよう」
「おい、待て」
と、サヨが俺の肩を掴む。言葉だけでなく、行動で制止されると、さすがに俺も止まらざるを得なかった。
「え……どうしたの?」
「お前なぁ……いくらなんでも不用心過ぎるだろう。どんな奴がいるかもわからないのに、いきなり飛び込んでいく奴があるか」
呆れ顔でサヨはそう言う。確かにそういう可能性も一理あるといえばある。
「でも……入ってみないとどんな人がいるかわからないだろう?」
「それはそうだが……入ってみて危険な奴がいたらどうするんだ?」
「それは、その時でしょう。逃げるしかない」
俺の答えに、サヨは納得してくれたようだった。大きくため息を付いて、小さく頷いている。
「……わかった。お前の好きにしろ」
とりあえず、俺とサヨはそのまま建物に近づいていく。建物は確かに灯りは付いているのだが、薄暗く、中にどんな人物がいるかはわからなかった。
「……ここから入って良いのかな?」
おそらく、入り口と思われる場所があった。俺はそこを指差してサヨに確認する。
「お前が入りたいって言ったんだろう? お前が判断しろ」
サヨにはそう言われたので、俺はそのとおりにすることにした。そのまま入り口の方に向かって歩いていく。
そして、入り口の前に立った瞬間、自動にその扉が開いた。それと同時に軽快な音楽が流れる。
建物の中は外から見るよりも明るかった。そして、入り口の近く、小さな敷居を挟んだその先に、一人の人物が立っている。
男性は俺よりもかなり年上のように見える。人間で言うと40代くらい……いわゆる中年男性であった。
「あ……いらっしゃいませ」
その人物はひどく驚いていたようだったが、俺を見るとそう言った。
「え……あ……どうも」
俺もぎこちなく挨拶を返す。
「えっと……アナタはここで何をしているんです?」
「あー……そうだね。俺、シロオっていうんだけど……ここは『コンビニ』だ」
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