組織は戦略でなく歴史に従う

「組織は戦略に従う」


ビジネスマンなら、

一度は聞いたことがある人も

多いのではないだろうか。


経営学の大家、

アルフレッド・チャンドラー氏の

余りにも有名な名言である。


地域拡大戦略に基づき

あのエリアを攻略したい

だからそこに拠点を出す。


コンクリートだけでなく

木造の非住宅に挑戦する。

その為の専門部隊をつくる。


やりたい戦略を実現するために

組織をつくることが重要だ。


この名言はそういう教えだと

達社長は理解している。


しかし、逆に言えば、

多くの組織が、そうなっていない

からこそ、この言葉がクローズアップ

されるのではないのか?


少なくとも達社長は

そう考えている。


ある事件があったからだ。


実は、

不動産会社と組むことになる

分譲住宅開発事業の話が

持ち上がった。


達社長の会社、

現時点では戸建て住宅事業には

取り組んではいない。


それでも土木部主体の宅地造成と

建築部が担う周辺施設の建設は

請負える可能性のある、

大きな事業であった。


しかし、このプロジェクト、

わざわざ声をかけて頂いた

にも関わらず、残念ながら、

他社に取られてしまった。


土木と建築でチームを組んで

挑んだのだが、

土木事業部と建築事業部の

軋轢で、チームが思うように

機能しなかったのだ。


この両事業部。実は、

伝統的にあまり関係が良くない。


部門間の切磋琢磨と言えば

聞こえは良いが、

お互いに足を引っ張りあってきた

歴史があるようだ。


そうしたこともあり、

本来一体で進めるべき

案件だったにも関わらず、


事前打ち合わせ段階から

両部門での情報の溝や

断絶が起こり、

声をかけた不動産会社側が

その調整に嫌気がさし、

失注につながったようだ。


無論、それだけが

失注要因ではないだろう。


しかし、

「なぜ、もっと情報共有を

密にしてくれないのですか?」


そう、不動産会社から何度も

言われたのも事実である。


実は、こうした事は過去も

少なからず起きているという。


「組織は往々にして歴史に従う」


戦略はしばしば、組織という

しがらみに規定されるのだ。


「土木部に頼らずとも、

他でしっかり取り返しますよ」


とは、建築部長の言葉。

照れ隠しもあるだろうが、

失注を余り気にする様子もなく

そう言う。


しかし、この発言

本質的に間違っている。


失注したことも問題だが、

より、大きな問題は

失注の仕方にあるのだから。


すなわち、会社全体ではなく

建築部の存続が目的化している。


「部門あって会社なし」

どこかの国のようだ。


達社長は、そう感じている。


先輩経営者が良く言う


「組織は、しばしば、

その設立目的を見失い、

存続する事自体が目的になる」


老舗ゆえの、戦いがそこにある


達社長にとって

なんとも大きな難題である。






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