環境は変化し、顧客は進化する

同じエリアで創業し、

地域の人ならよく知る

老舗の有力食品問屋。


その会社が倒産すると

ある社長仲間から聞かされた。


創業90年を超える堅実な会社。


「地域を代表する会社が・・」

達社長は、正直驚きを隠せなかった。


豊富な品揃えとスピーディーかつ

リーズナブルな価格が売り

だったそうだが、


もの余り、web時代で、

顧客小売り企業の

店頭販売が苦戦するなか、


ある主たる小売り顧客の

「増客企画なき商品調達は縮小する」

という方針転換、

すなわち、販売支援機能という

ニーズに対応出来ず


ライバルだけでなく新興企業にも

遅れをとり、取引が激減したことが

引き金になってしまったようだ。


より多くの商品を早く安く・・から

顧客の販促支援が出来る会社へ


簡単に言えば、

それが出来ず会社を畳む

ことになったのだ。


環境は変化し、

顧客は進化をしていく。


そしてそれは、

企業のあり方を大きく

変革させていく


「あり方の変革」


私達建設業、最大課題の一つが

人材確保と育成、定着である。


何より育成方法の大変革が

求められている。


達社長の会社も例外ではない。


従来、建設業の教育は


「石の上にも3年」


現場で経験を積みながら、

少しずつ身につけていくやり方が

主流であった。


「現場が一番」


そういえば聞こえは良いが

実態は、違うと達社長は考えている。


一言で言えば

教えているとは程遠い丁稚奉公


大きな声では言えないが

達社長には、そう見えてしまう。


教える側が忙しすぎる。

そこにも理由があるだろう。


しかし、今や

現場で働く職人さんの高齢化は

深刻な問題であるにも関わらず、


若い人材の、採用はままならず、


仮に採用できたとしても、

3年離職率3割以上・・


「現場丸投げ教育」は

働く人の価値観の変化もあり

随分前から通用しなくなっている。


しかし、

忙しさもあり、教育改革は

残念ながら手つかずに近い。


一方、デジタル技術の進化は

凄まじく、現場でなくとも、

教えられることは、

想像以上に増えている。


例えば

建築部長はこんな言い方をする

「現場で見て徐々に盗む」から

「動画を見て直ぐに試す」へと


人材育成のやり方は、

間違いなく一変し始めている。


そして、

こうした対応が出来ない、


つまり、

教える時間の確保や

教え方改革に投資出来ない会社では

ますます若者離れが進み、


最悪の場合、

いわゆる人手不足倒産に

つながりかねないのだ。


幸い、達社長の会社では

人材はなんとか確保出来ている。


しかし、

人材の定着には苦戦している。


まだまだ、

教え方改革が不足している。

つまり、変わりきれていないのだ。


「建設業の人材育成は経営の決断」


「もっともっと変わらなければ」


達社長は、遅めの昼食をとりながら、

そう決意を新たにした。

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