第10話 どうしてこうなった


「あのね、要くん。本当に、私に責任を感じる必要とかないから。私、そんなにバカじゃないからね? 」


「綾香さんはばかしゃないですよ」


 要くんはグラスを二つ用意してワインを注ぐと私に一つ渡してくれた。


 要くんがワインを飲む。

 私も思わず飲み干す。


『寝ちゃうのね? 』と、ホッとした顔をしたもんだから要くんに呆れられた。


「綾香さんって男女関係に結構ポンコツですよね? いくらなんでも眠り上戸が女上司の前で飲むわけないでしょ? 」


 ???


「ぼく、そんなにダメですか? 」


 はぁ……と、不貞腐れる要くん。


「確かにお酒弱いですけど、眠くなりますけどね? 」


 ???


「綾香さん、騙され過ぎですよ」


 要くんは私から空いたグラスを取って、ベッドサイドに片付けた。ピザも片付けた。


 ピザの匂いに刺激されながら、私は要くんが最初っから私とその気だったのに気がついた。


 そんな気もしてたけど、期待という消失感を封印しようと努めてた。


 もっと言うと……井達くんだって初対面からお互い惹かれあってる気がしてたの。だんだんとそれっぽいムードにもなってた。でも、ご縁が無かった。それがトラウマになったから否定で入るのが、私の恋愛の自制心になった。


 要くんが膝を立ててジワッと近寄ってくる。わんこが狼みたいになってて、いけないものを見ちゃってるかも。


「綾香さん、もう一回ちゃんとやってから考えてもらえませんか? 」


 私は生唾を飲んだ。

 ピザは冷えちゃいそう。


 私は要くんに組み敷かれて、愛撫されながら服も肌着も一枚ずつ剥がされた。私の感じるところを探られて気付かれて、要くんも裸になって……やっぱりいい♡


 替えがあるかと聞かれてストッキングが破かれると、どんどん攻め入られていく。


 密室に解放され声が溢れて、あの日の濃度を超えていく。


 快感の狭間にちょっとだけ話しかける。


「ダメだったとかじゃないから……」


「……うん。知ってる」


 要くんは手短に答えてキスで私の口を塞ぐと、艶っぽい目で私を捕らえてそのまま休ませてくれない。


 冷える汗と熱い肌を何度も密着させて、とろけていく。


 ——要くんは確信犯だ。


 実は自信家だし、嘘もつくし、騙すし……わんこも本性もどっちなんだか手に負えないけど、真っ直ぐ満たしてくれるから好き。


 このまま愛して欲しくて求めると、要くんは甘く応えてくれて、心の隙間までキスで埋め尽くされそう……


 朝、ラブホテルをチェックアウトして「好きです」と告白を貰ったのは、私の部屋に着いてからだった。


 あの夜、私に服を脱がされていた時本当は起きてたなんて……酷くない?「綾香さんが楽しそうだったから」って、酷くない?


 それから週末と言わずに要くんはうちに転がり込んでる。少しずつ部屋に要くんの日用品が増えていく。


 実家が近いというのは本当で、ある日は親の車に乗せてもらって来たのにはビックリした……。

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