第19話 獅子は牙を向く
森の中を走るというのは、予想よりも体力がいるものだ。森の地面には茶色くなった枯れ葉やサイズの違う石、そして舗装されていないでこぼこ道は容赦なく体力を奪っていく。
そもそもレクリエーションで使っている指定ルートは、元々ホテル側がハイキングコースとして利用している。
当然そのコースから外れた日向達は、コースを走る人より倍近くの体力を奪われている。現に日向と心菜の顔からは汗が浮かび上がり、息切れを起こしている。
樹の方はまだ余裕があるらしく、軽く息を吸って吐いてを繰り返している。
「はぁっ、はぁっ……。とりあえずここまでくれば安全だろ」
「う、うん……そうだね……」
「ぜぇっ……はぁっ……こ、こんなに走ったの、中二の時にクラスメイトの女子にいじめとして参加させられた町内会マラソン以来かも……」
「……おい、こんな時にそんな重い話すんなよ……」
思わず暗い過去話した日向に樹がツッコむと、彼は頬を伝う汗を手の甲で乱暴に拭いながら微かに見えるホテルを見る。
「よし、あと少しでホテルに着く。そうすれば――」
瞬間、後方の森から爆発音が聞こえてきた。それに続くように悲鳴や怒声が響き渡り、日向達は顔を見合わせる。
もし日向達が思っていることが間違っていないとすれば、さっき爆発が起きた場所はレクリエーションの指定ルートがある場所のはずだ。
「クソッ、今度はなんだよ!? これも白石の仕業か!?」
苛立つ樹が癖のある赤髪を掻きむしる。日向も心菜も今起きていることが分からず戸惑っていると、パキッと後ろで枝を踏む音が聞こえてきた。
まさかもう怜哉が来たのかと思って思わず振り返ると、そこにいたのは見知らぬ男だった。
褐色の肌にボサボサの金髪をしていて、鋲飾りがついた黒革のジャケットを羽織っている。
そのジェケットの上には獅子のエンブレムがチャームポイントとして縫いつけていて、それだけ見ると一見パンクロックな恰好をした人と思えるが、彼は日向の顔を見た瞬間、綺麗な歯を見せながら笑う。
「へぇ、情報通りまあまあいい女だな。これが獲物じゃなかったら普通に見逃すのにな」
「獲物……?」
不穏な単語に樹が前に出ると、男はおどけた態度を取る。
「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は堂島猛、魔導犯罪集団『獅子団』のリーダーだ。以後お見知りおきを、未来の魔導士達」
男――堂島の口から出た『獅子団』の三文字に日向達は瞠目する。
『獅子団』は、関東を活動範囲としている魔導士崩れによる犯罪集団。彼らの行った反IMF活動は新聞やニュースで何度か目にしたことがある。
だが、半年前にIMFの人間がスパイとして『獅子団』に入り、情報を流したことによって壊滅まで追い込まれていると聞いていた。
その組織のボスと言える男が目の前に現れたことにますます混乱する。
「そんな有名なお方がこんな遠い島に一体何の用で?」
「用、か……。そうだな、そこの琥珀の髪の嬢ちゃんを攫いに来たってところか?」
「……え?」
堂島の狙いが自分? 理解した直後、日向は必死にその理由について考え始める。
魔導犯罪者である彼の思い当たるとしたら、無魔法だ。でも日向が無魔法を使えることはIMFが情報漏洩しないよう徹底的に管理している。
一番高い可能性としたら、『獅子団』に入っているメンバーの誰かがIMF関係者で、日向の情報を伝えた、というものだ。
堂島の言葉にさらに厳しい顔をする樹が、目をこっちに向けながら『逃げる準備しろ』と伝えてきた。それを見て日向はなるべく小さく頷き、心菜の手を取りながら少しずつ後退させて行く。
「……なんでこいつを狙うんだよ。こいつはどこにでもいる平凡な学生なんだぜ? お前らみたいな奴が狙う意味はあんまないと思うぜ?」
「残念ながらあるんだよなー、これが。お前らが勝手に呼んでる魔導士崩れの中には、IMFの秘密事項さえも手に入れちまう情報屋が数は少ないがいるんだ。で、数日前にある情報を手に入れたんだ。『この腐った魔導士界を変える魔法を使う女がいる』ってな。それを聞いた俺はクソみてぇに高い金払ってそいつから情報を買った。そしたらサービスとしてこんなものまでくれた」
堂島はジャケットの内ポケットに手を突っ込んだと思ったら、そこから一枚の紙のようなものを取り出すと、それを掲げるようにこっちに見せてきた。
その紙の正体は、写真。写真には入学してから初めて悠護達に出かけた時の日向の姿が写っていた。目線がカメラに合ってないのを見るに、恐らく隠し撮りだろう。
「驚いたぜ? まさかこんな女があの無魔法を使えるって。しかも【五星】の妹らしいからどんなのかと警戒してたが……意外と大したことがなくて安心したぜ」
「おいおい、見た目で人を判断するのはちと軽率じゃねぇか? それに日向を捕まえてどうする気だよ」
「決まってんだろ、このクソったれな世界を壊すんだよ。あの魔法があればIMFの連中なんか敵でもねぇ。それどころか世界征服も夢じゃない、スゲェ道具がこの世にあるなんて最高じゃねぇか!!」
自分が妄想する未来を恍惚な顔で語る堂島。それを聞いていた樹の顔が嫌悪感を滲ませる。
恐らく魔導具技師の道を目指す彼にとって、今の発言は許せないのだろう。人を道具扱いする、利己的で自分勝手な考えが。
それを聞いた樹は、ズボンのポケットから黒い手袋を取り出してそれを手に嵌める。
「……テメェ、ふざけんなよ」
「あ? 何がだよ」
「その人を道具みたいに言ったところをだ。道具っつーのはな、人が大事に扱い、そして壊れた時は今まで役に立ってくれたことに感謝しなくてはならない、いわば『隣人』みたいなもんだよ。けど人は道具と違って意思もありゃ思考もある、そいつを道具扱いするのは道具そのものに対して侮辱してるのと同じなんだよ」
怒りに瞳の中で炎を燃やす樹を見て、堂島はわけが分からないと言わんばかりに怪訝そうな顔をする。
「はぁ? テメェこそ何言ってんだよ。人だって道具みたいなもんだろ? 使える奴は体がぶっ壊れるまで使って、使えねぇ奴は自分の視界に入らないようにどっかに捨てる。IMFの連中はそんなことしてんだぜ? なら俺も同じことしても別にいいじゃねぇか」
だがそんな樹の言葉を堂島は跳ね返す。向こうが人を道具として扱っているなら、自分も同じことをしても当然な物言いは、日向も心菜も嫌悪で顔を歪めてしまう。
そんな日向達を見て、堂島は忌々しそうに舌打ちする。
「んだよ、その顔。これだから魔導士って奴は……
そう言うや否や堂島がパチンッと指を鳴らすと、木の後ろや茂みから一〇人の男達が現れる。体格も年齢も国籍も違うが、唯一の共通点は彼らの服の左胸には獅子のエンブレムが縫いつけてある。
一気に敵に囲まれる中、樹は彼らの手に持つ武器を見て再び堂島を睨む。
「改造魔導具まで持ち込みやがって……。テメェら、それでどれだけの人傷つけてきたんだよ」
樹の言葉に堂島はギロリ、と睨んで来た。その瞳に宿るのは、黒い炎の形をした憎悪一色だった。
「……傷つけた? それはこっちのセリフだ。魔導士になれず、居場所もプライドも何もかも失うだけでは飽き足らず、魔導士制度という狭っ苦しい決まりに適していないからって問答無用で捕まえられ、新たな魔法の発展という名目で搾り滓が残らないほど散々利用される……。
そんな理不尽な世界でも生きることしか術がねぇ俺達は、そのせいで心も体も傷が絶えねぇどころか毎日毎日増えやがる! 今まで数えられねぇほど傷つけられてきたんだ、なら俺達が仕返しをしても悪くねぇだろ!?」
森の中で反響する堂島の声は、心が締め付けられるような感覚になるほど悲痛なものだった。ダークブラウンの瞳から見える憎悪は、さっき見た桃瀬さんのとは違うもの。
彼自身も数えきれないほど理不尽な目に遭い、数えきれないほど心と体に傷を負い続けている。それが今の魔導士界のせいだと言ったのなら、彼の言い分はきっと同じ傷を持つ者なら共感できるものだろう。
(……だけど)
同じ傷を持たない日向達は共感できない。運よく正しい道を進む日向達に、彼らの気持ちを共感することは永遠に来ない。
それが現実。この魔導士界が抱える問題は、どれも一朝一夕では解決できない。いや、そもそも解決するのかさえ怪しい。ちゃんと解決してくれると信じたくても、信じていいのか分からない。
そんなことはとうの昔に理解しているのか、堂島は静かに息を吐く。
「……これ以上は時間の無駄だ。そこの無魔法使いは俺達が頂く」
パチンッと指を鳴らすと、『獅子団』は武器を構えてじりじりと近づいていく。
その時、樹が嵌めた手袋がサファイアブルー色の魔力に包まれる。
「『
詠唱と共に男達の足元に先が鋭い岩が地面から生え、それらは日向達を囲むように男達の前に立ち塞がる。
岩は樹の背よりも高いが、森に生える木より低い。ちょうど木の半分くらいの高さのある岩の向こうでは、早く壊そうとあちこちで破壊音が聞こえてくる。
ガリガリと鼓膜さえも震わせる岩を削る音に、樹は日向の方に体ごと向けた。
「日向、俺が時間を稼ぐからお前は心菜と一緒にここから逃げろ」
「で、でも、彼らの目的は日向なんだよ? これはあたしがどうにかしないといけない問題なのに、なんで樹がそんなことしなくちゃ……!」
「
「茶化さないでよ! これはあたしの問題なの! あたしが解決しないと一向に収まらないのくらい樹だって分かってるでしょッ!?」
怜哉の件だって、今だってそうだ。全ての原因は日向にある。
その原因となってしまった日向が解決しないといけない。そこに誰かの手なんて借りてはいけない。
それなのに、どうして無関係のはずの悠護や樹が関わろうとする? わけが分からず頭を抱える日向に、樹は至極冷静な顔で言った。
「……日向」
静かに日向の名前を呼ぶ樹に顔を向けた直後、バチンッ! といい音がしたかと思うと額に鋭い痛みが走る。
何が起きたのか簡単に言ったと、樹にデコピンされ確かも手加減なしの。
「いったぁぁぁ~~~ッ!?」
「はぁ……、お前のそういう自立心は美点だけど短所だよな」
赤くなった額を押さえる日向に、樹は肩を竦めながらため息をつきながら目の前で跪くと、乱暴な手つきで頭を撫でる。
「日向、確かにこれはお前の問題だ。お前が解決すべきという点では同感する。……でもな、何も全部一人で抱えることはしなくていい。言ったろ? 俺達は友達のお前を助けたいんだよ」
「……樹……」
「それに、俺もちょっとあいつらにイラついていてな。ストレス発散としても相手してぇんだよ」
一瞬呆然としてしまうが、後半のセリフで思わず笑ってしまう。
そうだ。日向はもう一人じゃない。今の日向には、悩みを打ち明け、一緒に問題を解決してくれる信頼する友達がいる。
そのことがこんなにも嬉しい。目を瞑り黙り込んでいた日向が小さく頷いたのを確認すると、樹は嬉しそうに歯を見せるほど口角を上げる。
「よっし、じゃあとりあえずここにいる連中は俺がブッ倒して、あのクソ野郎は日向がブッ倒すのは当然だな。それで心菜、お前はどうするんだ? もし日向が心配って言ったならいてもいいが……」
「……ううん、私はここで樹くんの手伝いをする。パートナーだもの、それくらいしたいよ」
「……そっか。じゃあそれでいくか」
その合図と共に、日向は腰に巻いていたホルスターから《アウローラ》を取り出す。
「『
詠唱を唱えると同時に引き金を引くと、銃口から琥珀色の魔力が溢れ出す。
発砲音がした直後に琥珀色の魔力は日向を中心にした周囲に広がり、樹が生み出した岩の盾も、改造魔導具に纏っていた魔力も全て消える。
『獅子団』の人間も堂島も目の前に光景に瞠目する中、日向はこれからするべきことについて考えていた。
新入生実技試験後、無魔法が使えるようになったことで陽の指導の下、無魔法について調べることになった。
悠護達相手に何度も使った結果、無魔法は『魔法を無効化する魔法』という点はほぼ確定し、IMFが危惧している『魔法に関するものの消失』の可能も十分あるとも言った。
実際魔法を使っていない状態でみんなに無魔法を使ったら、『魔力がすり減る感覚がする』と教えてくれた。
次に調べたのは発動効果時間。これは単純に無魔法を発動して、どれだけの時間無魔法を持続させられているのかを知るために、無魔法を使う際の魔力量を少しずつ変えて調べてみた。
一番少ない魔力量だと一〇秒、一番多い魔力量だと一時間ほど無魔法の発動効果時間であることが分かった。最初は一番多い魔力でたった一時間だけなのかと思ったけど、よくよく考えると使い手である日向以外の魔導士にとってはその時間の間魔法に関するもの一切使えないため、むしろ長い方かもしれないと思った。
そして今、日向が使った無魔法の量はレベル2――発動効果時間一分半しかないものだ。だけど隙を突いて逃げる分には十分な時間だ。
「走れッ!!」
樹の合図と共に一目散に踵を返し、呆然としていた『獅子団』の間を抜けるように走る。
地面を蹴り上げるように走る日向の姿に我に返り、『獅子団』の一人が追いかけようとした瞬間、後ろから樹が魔力を纏った拳で思いっきり後頭部を殴る。
ドサッと倒れる音を聞きながら、日向は脇目も振らずに走り続ける。
『獅子団』のリーダーである堂島を倒すための『舞台』を探すために。
☆★☆★☆
キラキラと輝きながら宙から降ってくる琥珀色をした魔力の光の粒。
その輝きはまさに天上の神が敬虔の信者に与える祝福の光だと思ってしまうほど美しい。現に堂島を含む『獅子団』のメンバーは、まるで魂を抜かれたかのように光に魅入られてしまった。
こんな美しいものを道具として利用するにはあまりにも惜し過ぎる、とどこか遠い目をした堂島はそっと手を出す。光の粒として可視化されている魔力は堂島の手の上に乗ると、雪のように溶けて消える。
(そういえば、琥珀って確か『幸運』の石としても有名だったな)
何千万年前の針葉樹林の樹液が化石になった天然石。ヨーロッパでは『幸せを運び、愛を伝えるもの』として考えられており、イギリスでは結婚十年目記念日を『琥珀婚』と呼び、琥珀のアクセサリーを贈る習慣がある。
そんな縁起のいい石と同じ色を持つあの少女は、きっと幸せに満ちた未来が訪れるだろう。
だがそんな未来を握り潰すのは堂島自身だ。そう思うと少しだけ後ろ髪を引かれる思いになるが、視界に映る獅子が彫られたドッグタグを見て頭を振る。
(なに躊躇ってやがる。やっと犠牲だらけの戦いが終わるんだぞ? ここで足を止めたら今までの苦労が水の泡だ!)
身も心もボロボロになった『獅子団』にとって、日向は自分達が求めた救世主そのもの。それを逃せば、今まで歩んで来た傷だらけの人生を否定することになる。
何度も殴り蹴られても、何度も血を吐いても、何度も仲間を失っても、それでも前を進むことをやめなかった。この理不尽なクソったれな世界を変えるためなら、いくらだって手を黒く染めてやると決めたのだから。
標的の少女を追おうとした仲間が、赤髪の少年に殴り倒されるのを見ながらも堂島は冷静な顔で指示を出す。
「……標的は俺が追う。お前らはあのガキどもの足止めをしろ。いいか、殺すなよ? 聖天学園の連中は人質としても価値があるからな」
「ウッス。リーダー、お気をつけて」
「ああ」
自身の身を案ずる仲間の声を聞きながら堂島は日向が走り去った方向へ走り出した。
走り去る自分達のリーダーを見送ると、『獅子団』は戦闘態勢を取る樹と心菜に顔を向ける。いくら魔導士候補生とは言え、彼らは自分達と違いきちんとした教育を受けている。
だがこの合宿に参加しているのは一年生がほとんどだ。指導役の上級生と付き添いの教師は別働隊の陽動に手を焼いているはずだ。
だからこそ、こんな連中は自分達の敵ではない。
「さて、随分舐めた真似しやがったなぁ? これから泣かしてやるから覚悟しろよ?」
「ハッ、テメェらに負けるほどそこまで弱くねぇよ」
「んだとぉ!?」
挑発的な物言いをする樹に、『獅子団』の一人が声を荒げる。
すると、樹の隣にいた心菜が亜麻色の髪をなびかせながら一歩前に出た。見た目麗しい心菜の姿を見て『獅子団』は下卑た笑みを浮かべる。
「なんだ? もしかしてお嬢ちゃんが俺達の相手をしてくれるのか?」
「……いいえ、私は争い事や暴力は苦手です。ですので、
「あ? 彼女?」
心菜の言葉に『獅子団』が訝しげな顔をする。ここにいるのは日向と堂島を除くと、仲間達の他に樹と心菜しかいない。
恐怖で気が狂ったのか? と思った時だった。心菜は服の下に隠していたペンダントを取り出す。
トップにはクロス・フローリーと呼ばれる十字架が細い鎖に通らされており、太陽の光で銀色に輝いている。
心菜はそれを両手で包むように握りしめる。奇しくも、その姿はまさに神に祈りを捧げる修道女そのもので、誰もがその荘厳な雰囲気に呑まれてしまう。
ゴクリ、と誰かが唾ごと息を呑んだ瞬間、
「――おいで、『リリウム』」
心菜の桜色の唇が、静かに詠唱を紡いだ。
ペリドット色の魔力が心菜を囲むように渦を巻いく。すると、心菜の背後に宙に浮く『何か』が出現する。
その『何か』はウィンプルと呼ばれる頭巾の下から百合の色をした美しい髪を晒している修道女で、手には巨大な十字架がついた自身の身の丈より少し長くした黄金の錫杖を持っている。
しかし顔は能面みたいにのっぺりしていて、口も鼻も耳もない。唯一顔にあるアーモンド形の金色の瞳が無感動に『獅子団』を見ていた。
「ま、魔物だとっ!?」
突如現れた修道女に、『獅子団』は驚愕の声をあげる。
魔物は『生きた魔法』と呼ばれる特殊生命体で、召喚魔法によって使役が可能となる。顕現するだけでも魔力を消費するデメリットはあるが、術者以上の力を発揮するメリットがある。
魔導士ならまだしも魔物相手では勝手が違うため、『獅子団』は怯えながら無意識に数歩後退してしまう。
そんな彼らの姿を見て、心菜は苦しげな顔をするが『獅子団』を睨むようにキッと目を鋭くさせる。
「こんなこと、本当はしたくないです。でも私は日向を守りたい。そのためなら私は――戦う覚悟だってしてやります」
心菜の声が引き金となったのか、リリウムは錫杖の先を握ると横へ引っ張る。
そこから出て来たのは、鈍色の刃。錫杖に仕込まれていた剣を杖と言った鞘から抜き取ると同時に、『百合』の名を冠した魔物に心菜は命令を下す。
大事な友達を守るために、その刃を振るわせる価値がある命令を。
「――リリウム! 私達の敵を倒してッ!」
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