353ページ目…その台詞を言うな!
新しい鎧が完成した次の日、僕達は再び魔王の城を目指し移動を始めた。
うん、移動を始めたと言った…が、そこには昨日まで何もなかった場所に、ぽっかりと大きな穴が空いていた。
「さて、多数決を取りたいと思う…この穴を調べようと思う人~。」
「「「………。」」」
だが、僕の呼び掛けに対して、誰も手を上がる物はいなかった。
まぁ、魔王の城へ向かっているのだから、下手な寄り道はしないと言うのは、当然と言えば当然の結果だ。
「はい、満場一致でこの穴は無視して行きます。」
僕はそう言うと、大きな穴を迂回する様に回り、魔王の城を目指した。
『ヌチョリ…。』
「ん?みんな、今、何か聞こえなかったか?」
もう少しで、大きな穴を迂回し終えると言う所で、僕の耳に何か変な音が聞こえた。
その為、嫁~ズみんなに確認したのだが…。
「いえ、私の耳には何も…。」
「わ、私の耳にも何も聞こえなかったです。」
「私には何も…何か聞こえたのですか、御主人様?」
「いや、僕の空耳だったの様だ…変な事を聞いて悪かったね。」
確かに、僕の耳に何か聞こえた様な気がしたのだが、他の者には何も聞こえなかった…。
特に、音に敏感なクズハにも聞こえていないのだから、本当に僕の勘違いだったのかもしれない。
そんな訳で、僕達は気にせずにその場を後にしたのだった…。
◇◆◇◆◇◆◇
『ヌチョリ…ヌメリ…ヌチョリ…ヌメリ…。』
それから十数分後、穴の中から大きな
その化け物は地上へと完全に姿を現した後、周囲の匂いを嗅ぐ…。
(美味そうな匂い…。)
蜥蜴の様な姿をした化け物は、その匂いを追って移動を開始したのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「
そう叫んだのは、全力で狐火を化け物にぶつけたクズハ(尻尾の数は1つ)である。
つい先程、僕達の後方から突如として現れた蜥蜴の様な化け物-個人的には
ちなみに、剣での攻撃もその粘膜の所為で、本体まで届かず無効化されている…だけではなく、刃の部分にくっついて斬れなくなっていた。
まぁ、その為に先程クズハが狐火で攻撃したのだが…。
「クソッ!まさか、こんな化け物がいるなんて…。」
今まで攻撃を防がれる事はあっても、無効化される事がなかった為、余計に焦りを感じる僕は、思わず愚痴を零してしまった。
「それより…そろそろ我に付いた、このキモイ粘液を取って欲しいのだが…。」
そう言ってきたのは、元上級魔族グリコ・ノールこと、生きてる魔剣『皆殺しの魔剣:デストロイヤー』である。
ぶっちゃけ、
だが、先程もデストロイヤーが言った様に粘膜…粘液によって、完全に無効化されダメージを与える事が出来なかったのである。
まぁ、ソレだけなら良かったのだが、刃の部分に粘液がベットリとくっついており、その粘液が邪魔して、そこらの木すらも斬れなくなっている。
その為、生きてる魔剣であるデストロイヤーも気持ち悪がって粘液を取れと言ってきたのである。
「そう言われましてもね~…。」
ハッキリ言って、こんな粘液…僕は触りたくない。
また、クズハの狐火も無効化する事からしても、火で炙った所で取れそうにもない…そして…。
「〖魔法:
一瞬、プリンが魔法を使ったのか?と思ったが、どうやら今回はアリスが使った様だ。
粘膜や粘液と言う事から液体に近いと仮定して、凍らせようとした様だ。
「やったかッ!?」
あ、それ言ったらダメなヤツだ…。
デストロイヤーの台詞に、ピコンと旗フラグが立った気がした。
そして、当然の様に先程同様に、その姿を現す化け物…。
だが、それは囮で、その背後でプリンが大きな水球を化け物に落とそうとしていた。
「いっけ~!」
掛け声と共に落とされる水球…だが、化け物の身体にぶつかって飛び跳ねた水滴が周囲の木や地面に落ちた…その瞬間。
「ジューーーーーッ!!」
と、大量の煙と…まるで何かが焼けている様な音を出している。
「今度こそ、やったかッ!?」
その光景を目の当たりしたデストロイヤーが再び叫ぶ。
「だから、お前はその台詞を言うなってのッ!!」
流石に、二度目となるとちょっと怒りが湧いてくる。
その所為で、危うくデストロイヤーを放り投げる所だった。
「す、すまん…つい…。」
そして、フラグの回収に従ったかの様に無傷で現れた化け物…が、ターゲットを僕に定め尻尾を振り回して僕に攻撃をした。
だが、デストロイヤーへのツッコミの所為で、意識を逸らしていた僕は反応が遅れ、気が付いた時には僕の目の前まで迫っていたのだった…。
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