347ページ目…クズハの覚醒【2】
男の生理現象とは言え、目覚めて直ぐにクズハの温もりを感じつつ貪り尽くす。
まぁ、クズハも求めていたからと言うのが一番の理由だが…。
「も、もう、らめでしゅ…
僕ももう限界だ…僕はクズハの中に欲望の塊を吐き出す。
そしてクズハの身体が、一際激しく震えたかと思うと、急にクズハの身体が光り、僕の身体は弾き飛ばされてしまった。
『ドガッ!』
予期せぬ衝撃に、一瞬、息が詰まる。
何事かと思ってクズハを見ると、そこにはクズハの姿が無く大きな繭があるだけだった。
「え?どうなってるんだ?ク、クズハッ!?」
僕は慌てて気配探知でクズハを探す。
だが、クズハの気配は目の前の繭の中から感じられた。
「い、いったいどうなってるんだ?」
僕はそう呟くと繭に触れる。
『トクンッ、トクンッ…。』
柔らかい様な、それでいて硬い様な…温かい様な冷たい様な…よく分からない繭。
だが、そこからは確かに規則正しい鼓動が感じられる。
僕は不思議と、クズハは大丈夫だと言う気持ちになった。
「
「
「
少し遅れてプリン、ローラ、アリスの順で、僕の部屋と駆け付けてくる嫁~ズ。
だが、僕が何か言う前に彼女達は唖然とする。
そりゃそうか…何せ、目の前には人がスッポリ入ってしまいそうな大きな繭があるのだから…。
「
この繭からクズハさんの気配がするのですが…。」
「あぁ、僕にもよく分からないが、その繭の中にクズハが居るみたいだ…。
プリン、この繭、どうしたら良いと思う?」
とは言え…僕には、この繭をどうして良いかは分からない。
このまま放置して良いのか、それともこの繭を壊してクズハを救出したら良いのか…。
その為、プリンに相談したのだが…そんな不安もローラの言葉で解決する事になる。
「
クズハ、進化する…ローラ、それ分かる。」
「し、進化だってッ!?」
ここで言う進化とは、魔物がその存在を新たな魔物へと変える事を言う。
その場合、今までの魔物よりも数段強力になる事から、強化ではなく進化と呼ばれていた。
「そう、進化…だから、
確かにローラが言う通りなら、素直に待つのが無難ではある。
が、確かに妖狐族として魔物としての血が濃いとは言え、クズハは魔物ではなく獣人…。
そんなクズハが進化などするのだろうか?
だが、まだ幼生とは言え、ローラは神獣フェンリルである。
ならば、その言葉は事実なのだろう。
その事を踏まえて、僕達は自然とクズハが繭から出てくるのを静かに待つ事にした。
◇◆◇◆◇◆◇
1日、2日…と、時間だけが過ぎていく。
そして、3日目の朝、とうとう繭に罅が入っていく。
『ピキ、ピキ…。』
まるで卵が孵化するかの様に罅割れていく繭…次第に繭全体に罅が入ると、再び静寂が訪れた。
「う、生まれるのか?」
僕達みんなに緊張が走る。
1分…5分…10分…普段なら大した事がない時間でも、今は異様に長く感じる。
そして、30分が過ぎようとした時、変化が現れた!
「あ~もうッ!全然、壊れないッ!!」
聞こえてきたのはクズハの怒った声…若干、大人びた感じがするのは気の所為だろうか?
そう思った次の瞬間…。
『ボ、ボボボッ!』
次々と繭に火が付き、業火となって繭が燃えていく。
しかも、その火は何時もの赤色や青色の炎では無く、黄金色に輝いているではないか…。
「何て綺麗な火なんだ…。」
どれだけ時間が経ったのか…気が付くと僕は、黄金色に輝く炎に包まれた繭に心を奪われていた。
…ん?ちょっと待て、黄金色に輝く繭…だと?
「ク、クズハッ!?」
我に返った僕は炎に包まれた繭の中にいるであろうクズハに声を掛ける。
だが、その瞬間、繭は『ガラガラ』と音を立てて崩れ落ちた。
クズハは無事なのか?僕は慌てて崩れ落ちた繭へと駆け寄る。
すると、崩れ落ちた繭の中から見知らぬ美女が立ち上がる…。
いや、見知らぬとは言ったが、何処かで見た様な顔立ちである。
「ぷは~!やっと外に出られた~!
あ、
僕をご主人様と呼ぶ美女…どことなくクズハを連想させる。
「もしかして…クズハなのか?」
「や、やだな~当然じゃないですか?
それともご主人様には私が別人に見えるんですか?」
「う、うん…って言うか、まるっきり別人?」
「えッ!?」
自称:クズハの動きがピタリと止まる。
「え~っと、その…鏡いる?」
「は、はい…お願いします。」
僕は自称:クズハに手鏡を渡す。
「あ、ありがとうござ…って、誰ですかコレ…。」
まぁ、そうなるわな…。
何せ、クズハは美少女と言っても過言ではないが、美女ではない。
少なくとも、大人の女性と言う感じではなかった。
まぁ、身長自体はさほど変化はないが、今までのクズハよりもスタイルが良くなっている上に、纏っている雰囲気が大人のそれだ。
そして…『傾国の美女』と言う言葉が似合いそうな、危ない雰囲気を醸し出していた。
「ご、ご主人様、これが私…なんですよね?」
「あぁ…そうだな…って言うか本当にクズハなんだよね?」
「そ、そうですよ…って言うか、
言われてみれば、クズハは嫁と言う立場でありながら僕の奴隷だ。
「そうだ!それがあったッ!いや、解除しなかったか?」
いや?結婚した時に奴隷紋は破棄した気が…。
とは言え、念の為、奴隷紋は発動させようとする。
だが、やはり奴隷紋には何の手応えがない。
「ゴメン…やっぱり、解除してるみたいだ…。」
本当に結婚した時に解除したのか、クズハが進化した時に破棄されたのかは分からないが、目の前の美女からは奴隷紋での繋がりを感じない。
「だ、だったら…ご主人様と…ひ、一つになれば…わ、分かりますよね?」
『パサリ…。』
目の前の美女が服を脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿になる。
そして、一歩…また一歩と近付いてくる。
その仕草に、僕は見覚えがある…この瞬間、僕は確信した。
そう…この美女は間違いなくクズハだと…。
「待った、クズハ!もう分かったから大丈夫だッ!」
こんな美女に言い寄られたら、僕の理性など軽く吹き飛ぶ。
そう思った僕はクズハにストップを命じる。
「いいえ、待ちません…だって、今の
「ク、クズハさん?何か目が座ってるんですけど…って、ちょっ!?そこはダメ、ダメだってば…。」
「それでは、
「あ、あぁぁぁぁぁぁ!」
朝から響く男の声…誰得だよ?と思う情けない声が上がる。
ってか、これ、立場逆じゃね?
僕はそんな事を考えつつも、哀れにも情けない声が森に響いたのだった…。
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