218ページ目…嫌な予感

 聖騎士団の中で、紫の鎧と言うのは、団長と副団長が着る鎧だと言う事が、プチスラ達を経由して得た情報だ。


 そして、その情報はプリンから僕に回ってきた…だがしかし、その紫の鎧を着ていたのは魔族だったと言う事は…。

 つまり、それは聖騎士団の団長と副団長が魔族に体を乗っ取られたのか?

 それとも魔族が化けていたのか?

 どちらかまでは分からない物の魔族が関わっているのは確かな訳なのだが…。


 だが、それ以上に問題なのは、プリン達にも話したが、他の聖騎士団のメンバーの記憶から団長と副団長の記憶が消されている事が問題だったりする。

 何故なら、魔族達が聖騎士団の記憶を消すと言うのであれば、それは即ち、記憶を改竄かいざんする事が出来ると言う事に他ならない。

 まして、一度、記憶を改竄されてしまえば大事な情報が失われると言う事でもある。


 そして、それは遠距離から『ちょちょいのちょい』と弄れる物ではないと言う事だった。

 では、その対象者が、何らかの原因で牢屋に入れられたりして、誰にも会えない場合はどうなる?

 まして、その記憶の価値にもよるが、誰にも知られたくない物だとしたら?

 この世界では、元の世界と違い、簡単に人が死ぬ…魔物に殺されたり、気にくわないと言う理由だけで、簡単に殺される事がある世界だ。

 ならば、その魔族とやらが記憶を消すのが大変だと思った場合、物理的にその記憶都やらを消滅す事があっても、何ら不思議ではない…。


「急いで〖魔法:空間転移ゲート〗をッ!!」


 と、言うプリンの声に、一瞬たりとも躊躇する事なく空間転移の魔法を使うと、僕は佐々木さんが捕まっている塔へと転移したのだった…。


◇◆◇◆◇◆◇


「あれ?ムゲンさん、さっき、帰ったんじゃないんですか?」


 流石に塔の前に、直接、転移する訳にはいかないので少し離れた所に転移してた。

 そして、急いで塔まで来たのだが…幸運にも、ちょうど帰ろうとしていたラムダさんに合う事が出来た。


「ちょうど良かった!ラムダさん、緊急事態です!

 もう一度、佐々木さんに…聖騎士団のリーダーに会わせて下さい!」


 僕は、ラムダさんの顔を見るなり、捲し立てる様に詰め寄ると、緊急事態と言った事もあるが、僕の焦った様子に、ラムダさんは顔を引き攣らせながら肯いた。


「わ、分かったから落ち着け…俺には分からんが、緊急事態なんだな?」

「はい!僕の予想が正しければ、最悪、佐々木さんが殺されます!」


 ラムダさんは僕の台詞を聞いて、即座に塔の扉を開ける様に言う。

 その指示を受けた門番は、急いで扉を開けようとするが、慌ててしまい鍵を取り落としてしまった。


「す、すいません…今すぐ開けますから…。」


 だが、次の瞬間…。


『ドッガーーーン!』


 落とした鍵を拾おうとする門番…だが、それよりも先に、塔の中から爆発音が聞こえた。

 その瞬間、の頭の中には最悪の事態が過ぎった。


「すいません!ラムダさん、壊した物は後で修理します!」


 僕はそう言うと、闘気弾オーラショットを使い、塔の門を吹き飛ばす。

 下手に魔法を使うよりも、一瞬で撃ち出す事が出来、威力もそこそこある闘気弾は、刹那の時間でも短くしたい場合には最適だったりする。

 もっとも…最大火力での闘気弾であれば、発動までに、ある程度の時間が掛かる為、急いでいる時に最大火力の闘気弾を選ぶのは悪手だったりするので、急いでいる場合は魔法が良いのか闘気弾が良いのかは微妙だったりする。

 とは言え、今はそんな事よりも、佐々木さんの安否が心配である。


 僕は階段を飛ぶ様に登り、佐々木さんの牢屋の前まで辿り着く。

 すると、そこには頭を吹き飛ばされ、壁に埋まっている死体が転がっていたのだった…。

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