215ページ目…聖騎士団の真実

「そのアルファってのは名前じゃなくコードネームだ。

 俺の名前、本名は『佐々木 竜之介』…名前を聞いて分かる様に俺は日本人だ。」

「なッ!?日本人だって!?」


 捕らえられていた幹部クラスと呼ばれたアルファさんが僕に驚きの真実を告げる。

 そう…『佐々木 竜之介』と名乗る彼は僕と同じ日本人だったのだ。


「あぁ…と、言うより聖騎士団は全員、この世界に転移させられた地球人だ。」

「地球人?それは…どう言う事ですか?」

「そうか…やはり、何も知らないのか…。」


 佐々木さんは何か考えてから、再びしゃべり出した。


「えっと…確か、夢幻君…だったよね?

 君は僕と同じ日本人だよね?」


 同じ日本人だからか、名前から判断出来たのだろう。

 確認と言う形を取ってはいる物の、確信を持って言っている様だ。


「は、はい…それが何か?」

「君は、この世界に来た時の事を覚えているかな?」

「えぇ、まぁ…家にあった本を読んだら、この世界に来ましたから…。」

「何ッ!?君は本を読んで、この世界に来たのか?」


 佐々木さんが僕の言葉に何故か驚いている…。


「えっと…佐々木さんは違うんですか?」

「あ、あぁ…俺は…と、言うより俺達は次元の裂け目に落ちて、この世界にやって来たと言った方が正解だ。

 そして、聖騎士団の本当の目的は、自分達の世界に戻る事にある。

 とは言え、そう簡単に戻る方法など見付かるはずもない…その為、傭兵紛いの事をやっていたら同じ様に転移してきた日本人と会う事になり、メンバーを増やしていった出来たのが、今の聖騎士団と言う訳だ。」


 まさか、自分以外にも転移してきた人がいる事に驚きを隠せない。

 しかも、一人だけではなく、聖騎士団の人、全員が…と聞かされたら驚くしかないだろう。


「な、なるほど…でも、こう言っては何ですが、僕も戻る方法なんて知りませんよ?

 とは言え、僕のじいちゃんは、元の世界に戻る事が出来たので、何かしらの方法があるかも知れないですが…。」

「何だってッ!?それはどんな方法だッ!!」


 佐々木さんは、突然、大きな声を出して立ち上がろうとする…だが、椅子に鎖で縛られている為、立ち上がる事が出来なかった。


「いえ、さっきも言いましたが戻る方法は知らないと…。」

「あ、あぁ…すまない…。

 だが、君のお爺さんが転移者だったとは…それだけでも、我々にも戻れる希望が出てきたと言う事か…。」

「あの…期待を持たせたみたいで申し訳ないんですが、僕のじいちゃんが、この世界に来たのって…じいちゃんが若い頃なんですが。

 しかも、この世界で300年以上前の事ですよ?」

「あぁ…なんだ、そんな事か。

 実を言うとだな…この世界に転移してくる人の中には、生きている時代が違う人達も何人か居るんだよ…っと、そうだ…君はどの時代から来たんだい?

 ちなみに、俺は西暦2021年から転移してきてるんだが…。」

「はい?聞き間違いですか?今、西暦2021年と聞こえたんですが…。」

「いや、聞き間違いじゃないぞ。

 と言うより、次元の裂け目を通る時、時間軸が狂うらしく色んな時代の人が来ている。

 ちなみに、私の知る中では…メンバーの古株の中にも江戸時代の人も一人いるぞ。」


 江戸時代…歴史に詳しくないない僕でも、江戸時代は聞いた事がある。

 よくテレビの時代劇で水戸黄門や暴れん坊将軍なんてのを見ていたからだ。

 そして、ファンタジー小説などでも出てくる刀を腰に差している侍サムライがいた時代だ。


「つまり…色んな時代の人が、ここに集まっていると?」

「そう言う事だ…それと…次元の裂け目に落ちて転移してきた者は、歳の取り方が遅くなると言うのも特徴だな。」

「どう言う事ですか?」

「そうだな…そうだ!夢幻君、俺の歳は何歳に見える?」


 先程もそうだが、何故か僕の事を君付けで呼ぶ佐々木さん。

 その事から考えると、僕よりは年上のはず…ならば…。


「えっと…僕より大人な感じがしますので20歳ハタチ位ですか?」


 僕的には大学生位に見えるので、20歳と言ってみた。

 まぁ、若干、若く言い過ぎたかも?と思うが、それでもそこまで歳は離れていないだろう。


「残念、ハズレだ…ちなみに、正解は59歳だ。

 とは言っても、僕が転移してきた歳は22歳の時だからニアピンなんだけどね。

 つまり、転移してきた歳から殆ど年を取る事が無くなったんだ…。

 もしかしたら、本当に年を取っていないのかも知れないが…検証のしようがないから本当の事は分からないんだけどね…。」


 と、佐々木さんは少し悲しそうな目で僕に教えてくれたのだった…。

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