213ページ目…救助作業

 もうもうと立ち上がる煙が、少しずつ晴れていき、その爪痕を鮮明に映し出していく。

 その結果、困った事に、僕の放った威嚇射撃?は物の見事に建物の入り口…だけでなく、建物の半分を吹き飛ばし半壊させていたのである。

 その為、僕達は当初の予定を大幅に変更して、負傷者の救助作業をするハメとなったのである。


「おーい、そっちはどうだー?」


 僕達のチームでリーダーを引き受けたラムダさんが他のメンバーに、要救助者がいないかを聞いて回っている。

 ちなみに、既に5人ほど救助されているのだが、死者はおろか重傷者もいなかったのには奇跡に近いのかも知れない。


「みんなー来てくれー!こっちに一人埋まってるぞー!」


 ん?今の声は、サブだよな?…と、僕は声のする方へと向かっていく。

 すると、崩れた天井の下敷きになっている様で、隙間から片腕だけが出ている状態の人を見付けた。


「おう、サブ!こいつ生きてんのか?」

「へい、兄貴!先程、しっかりと腕が動いていやした。」

「そうか!…とは言え、これだけ崩れているとなると…どこから手を付けて良いのか…。」


 まぁ、確かにこれだけ崩れてると、下手に手を出そう物なら、更に崩れて中の人は助からないであろう。

 そう、つまりは上手に手を出せば問題ないと言う事だ。


「あ、あの…僕が言うのも何ですが…僕が瓦礫退かしましょうか?」


 僕の台詞に、その場にいたみんなが一斉に僕の方を振り向く。


「い、いや…旦那はその…何もしない方が良いかな?と思うんですよ…はい…。」


 と、ラムダさんが腫れ物を見る様な目で僕を見ながら答えてきた。


「す、すんません…全部、俺が悪かったですから、ムゲンさんは、向こうで座って、大人しくしていてくれませんか?」


 リーダーのラムダさんに続き、サブまでも僕に何かをさせようと思わないみたいで離れた所で休んでいろと言うのには、僕は困ってしまった。

 とは言え、ここで何もしないのは僕も悪い気がするので、少しだけ力を貸す事にする。


「えっと…流石に、休んでいるのはどうかと思うので…この瓦礫の山だけは片付けますので…。」


 僕はそれだけ言うと、相手の許可を待たずに無詠唱で〖魔法:模型創造モデリング〗を発動させて、瓦礫をアーチ状に作り替えていく。


 そして、それが完成した時には、埋まっていた人を引っ張り出すだけの空間を確保出来る様にいたのである。


「だ、旦那…あんた、いったい何者なんです?」


 と、ラムダさんが僕に聞いてくる。

 なので、僕はありふれた言葉だが、よく使われている返事をする事にした。


「僕ですか?僕は、ただの冒険者ですよ?」

「「「「嘘吐きダウトッ!!」」」」

「何故にッ!?」


どうやら、僕の返事が納得出来なかった様で…暫くの間、全員から嘘吐き呼ばわりされる様になってしまったのだった…。


◇◆◇◆◇◆◇


「で、こいつらからの情報では『零の使い魔』とは関わりがない…と言う話だ。

 それで…詳しく聞いた所、彼らは本部からの指示で動いているらしく、もしかすると、その本部の方では何か知っているのでは?と言う事だった。」


 と、捕まえた聖騎士団のメンバーから事情聴取をしたラムダさんが、わざわざギルドで待機を指示された僕の所まで来て報告をしてくれた。

 ちなみに…僕が担当した拠点は、重要な拠点ではなく…所謂いわゆる、下っ端の詰め所として使われていた建物だった様だ。


「あら…ご主人様の所ハズレだったみたいですね。」

「ご、ご主人様…落ち込まないで下さい。」

「主、仲間…ローラ達と一緒。」


 と、プリン達も僕の所と同じく何の情報も得られなかった事を伝えてくる。

 だが…ここで疑問が出てくる。

 そう、彼らが黒と判断された原因の一つに、各拠点に配置したスライムが、拠点に出入りする『零の使い魔』を見ている…と言う事だ。

 だが、拠点にいた者達は、その存在を知らないと言う。


 そして…それは嘘発見器の様な魔法道具で検査しているので嘘を付いていないと言う事になる。

 そんな中、ラムダさんが驚くべき事を言ってきた。


「そう言えば…一つ気になった事を言っていたな…。」

「気になった事?」

「あぁ…何でも、自分達は『異世界』から迷い込んだらしく、元の世界に戻る為に行動していただけだ…と言っていたんだ。

 まぁ、この世界には異世界から来た勇者が魔王を倒したと言う話があるくらいだし、そんな事もあるのかもしれないのだが…聖騎士団の全員が、その『異世界人』と言ってるんだから、とてもじゃないが信じられんよ。」


 と、言ってきたのだった…。

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