209ページ目…始動

「そんな訳で、これから聖騎士団と『零の使い魔』の討伐作戦を開始する。」


 と…僕は、冒険者ギルドのギルドマスターであるクラウスさんからの、聖騎士団の討伐認定を受けてプリン達に声を掛ける。


「了解です。」

「で、ですが…相手は人族ですよ?本当に宜しいのですか?」

「うん…とは言え、今回は殲滅ではなく討伐って事で、魔物と違い捕獲して無効化すると言う手も使えるんだ…。

 つまり、今回は無理して殺す必要はないからこそ、僕は引き受けたんだけど…ね。」

「そ、そうなんですね…私は、てっきり、殺さなきゃいけないのかと心配しました。」


 そう、クズハが心配するのも無理はない、だが、この条件こそが僕が引き受ける決め手となったのだ。

 もっとも、今回に限らず、盗賊団などの討伐クエストにも適応される人的処置なのだそうだ。

 ただまぁ…盗賊の場合は、犯罪奴隷となり、その多くが一生を鉱山などで終えるらしいが…。


「まぁ、いざとなれば殺しても罪に問われない…とも言ってましたね。」

「うん、確かにプリンの言う通りだけど…正直な話、聖騎士団のみんなには…僕としては極力、そんな事はしたくないと思っている。

 出来る限り、生きて捕まえて…やり直すチャンスを与えたいと思っているんだ。」

「ご主人様…でも、何で?」


 プリンが温かい目で僕を見ながら、聞いてきた。


「あぁ、それは僕の住んでた世界では、悪い事をした人を捕まえて、しっかりと反省させた後、きちんと生きるチャンスを与える国だったからだよ。」


 と、日本人である僕は、この世界で生きてきたプリン達にすれば平和ボケ過ぎる発言をする。

 だが、プリンもクズハも、その考えを否定する事は決してしなかった。


「なら、気合いを入れないといけませんね。」

「そ、そうですね…倒すのではなく捕まえるのであれば、難易度は跳ね上がりますから…。」

「でも、クズハさんの言う通り難易度は跳ね上がりますが、腕や脚の1~2本斬り落とせば、大人しくなるのでは?」

「ちょッ!?プリン、何、物騒な事考えてるんだ!?」


 プリンの発言に慌てる僕…だけど、次の瞬間、それでもプリンなりの配慮なんだと思い知った。


「ご主人様、何を驚いているんですか?例え、腕や脚を無くしても、人は生きていけるんですよ?

 それに…死ぬ事に比べたら、かなりマシだと私は思うのですが?」


 言われてみれば、納得のいく答えである。

 人と言うのは、弱く…そして強い生き物なのだ。


「そ、そうだな…プリンの言う通り、生きてこそだ。」


 僕はそう言うと、〖空間転移ゲート〗の魔法を使い、ローラを向かい入れる。

 ちなみに、アリスがいないのは時間制限的な物だ。

 なので、喚ぶとしても、クライマックスになってからだと思う。


「主、アリスから伝言。

 『御主人様、絶対に無理しないで…。』言ってた。」

「そっか、ありがとう…それじゃ、ローラも来た事だし、作戦を実行する。」


 そう、僕の考えた作戦とは、冒険者ギルドのメンバーを連れて聖騎士団の拠点の幾つかを同時攻撃すると言う物だった。

 その為、アリスを除く…僕を含むメンバーを、それぞれ拠点へと送り捕獲すると言う作戦を立てたのだ。

 もっとも、その作戦にはプチスラやプチドラなどのサポートもあるので、成功確率はかなりあると思われる。


「ローラ、作戦は討伐だけど、極力、殺さずに捕まえるんだからな?」

「主、大丈夫、今のローラなら問題ない。

 だから、ローラの鎧出す。」


 プリンもクズハも…そして、ローラも〖無限庫インベントリ〗持ちではない為、生きてる鎧であるドラゴンは常に出しておくと嵩張る事になる。

 その為、僕が〖無限庫〗に収納していて、使う時にみんなに渡す事になっているのだ。

 もっとも、プリンに関しては種族特性の〖胃袋〗がある為、その鎧を収納する事くらいは出来るのだが…クズハやローラが僕に預けるのに、自分だけ仲間はずれは嫌だと言いだしたので仕方なく僕が預かる事になったのだ。


「よし、それじゃ各自、情報を貰ってから所定の位置に…決して無理はしない事!」


 僕はそう言うと、プリンからプチスラやプチドラからの情報を貰うと、聖騎士団の拠点の一つへと向かう。

 クズハもローラも同様に、それぞれ拠点へと向かう。

 そして、プリンはそれらの情報を冒険者ギルドのクラウスさんにも流すと、自分の持ち場である拠点の一つへと向かうのだった…。

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