191ページ目…偵察【6】

「お帰りなさいませ、ご主人様♪それと、クズハさんもお帰りなさい。」

「はい、ただいま。」

「た、ただいまです、プリン様。」


 潜入捜査から戻った僕達は、プリンからの報告を受ける事となる。

 もっとも、プリンからとは言ったが、正確にはプチスラやプチドラ達からの報告となる訳だが…。


 何はともあれ、プリン経由で、もたらされた情報を整理してみる事にする。

 その際、例の店の調理方法が判明する事になるのだが…まさかのチートスキル系だとは思いも寄らなかった。

 しかも…おそらくだが、僕と同じスキルを持っている可能性が高かった。

 とは言え、僕ほど巫山戯ふざけた使い方をしていない所を見ると、同じスキルでも使用者によって性能の差が出るみたいだ。

 まぁ、普通に考えれば、戦闘を好んでする必要がないのであれば、別の方法で生き抜く術を身に付ければ良い。

 おそらく、その性格故に非戦闘へと仕様の変更をされてしまったのかもしれない。


 とは言え、それだけで敵じゃないと言う訳にはいかない。

 否、敵じゃなくても、スキルの使い方としては正しいのかもしれないが、その悪質な結果は、見逃せない部分もある。

 試行錯誤して作り上げた料理を、そのまま奪い取る様な悪質な手段を選ばない方法は許し難い物がある。


 同じ系統のスキルを持つであろう僕が言うのも、お門違いなのだが…被害にあった彼らを見てしまうと、どうしても自分の事を棚上げにしてでも文句を言ってしまうのは仕方がない事だと思う。

 そんな訳で、僕達は作戦会議をする事になる。


「ってな訳で、下手に戦うと、こちらのスキルを真似られる可能性が高いと思う。

 それに、まだ真の実力を隠している可能性が高いと思うんだ。

 でなきゃ、この聖王都の真ん中で他者から奪った料理のレシピで堂々と、お店なんて営業出来ないと思うんだよ。」

「で、ですが…逆に言えば、それだけの力を持った連中と事を構えるとなると…私達だけと言うのは、流石に戦力が足りないのでは?」

「確かに、クズハさんの言う様に三人では多勢に無勢かと…。」


 まぁ、確かにクズハの言う通り、三人だけで事を構えるのであれば戦力不足なのは確かだ。

 だが…半ば廃れているとは言え、冒険者ギルドだってあるし傭兵とかだっている。

 それに、ここは何と言っても『聖王都』だ。


 つまり、何が言いたいかと言うと、本物の聖騎士や騎士だっているのだ。

 それなのに、聖騎士団などと名乗る偽物を、何時までも放置しておくとは思えないのだ。

 そんな本物の聖騎士達が、この世界で、テロリストよろしく様々な問題となっている『零の使い魔』と関係のあると思われる『聖騎士団』と戦う場合、力を貸さない訳がない。

 そう考えると、戦力は僕達三人以外にも多数いると言う事だ。

 だが、それでも彼らは偽の情報では動く事はない…その為、今はプリンの作り出したプチスラ&プチドラ達が必死に情報集めをしているのだ。


「何か勘違いしている様だけど、これは僕達が解決する必要はないんだよ。

 元々、僕達が受けた依頼は調査…確認であって殲滅や退治ではないからね?」

「そ、そうなんですね…私はてっきり、ご主人様が殲滅するのもだとばかり…。」

「ははは…流石に、僕にはそれをするだけの力も時間も…余裕もないよ。」

「ご主人様なら、一人で殲滅が可能ですね。」


 何故かプリンがクズハに向けて、ドヤ顔で言う。


「こらこら、プリンも煽らないの!さすがに、マジで僕には無理だよ?」

「そんな事はありません、私のご主人様なら本気を出せば、何とでも出来ます。」

「いやいやいや、流石に本気を出しても多勢に無勢なんだから、マジで無理でしょ!」


 そもそも、僕のレベルは、まだそれほど高くないのだから…。


「ご主人様には、魔王化がありますので大丈夫です♪」

「………。」


 いや、そんな笑顔で…しかも魔王化まで言われたら否定出来るはずもない。

 もっとも、プリンの言う魔王化は、プリンと〖融合〗しないと出来ないのだから、僕一人ではないのだが…。

 それでもプリンの笑顔に、僕はテレながら頬をポリポリと掻く。

 どうやら、プリンは僕以上に僕の事を理解している様だ。

 僕は両手を挙げて降参のポーズを取る。


 それを見て、プリンは嬉しそうに僕に笑顔を見せてきた。

 そして…そのまま僕の腕に抱き付き、僕の耳元で『最強のご主人様は素敵です♪』と呟いたのだった…。

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