145ページ目…ダンジョン監視員
僕は、みんなのステータスを確認した後、休憩を言い渡すとダンジョンマスターの権限を使い、第3階層の様子を急いで見て回った。
やはり、懸念した様に何人も第3階層に冒険者達が入り込んでいる。
これでは何の為に、ダンジョンを探索する為の免許を発行したか分からない。
やはり、あの調査団達の所為で違反を犯している冒険者がいると言う事か…。
とは言え、探索許可を持たない物が入り込んで怪我をしたりするのは自己責任なので、どうなろうが構わない…が、一応、注意だけはしておいた方が良いのかもしれない。
「あの~失礼ですが、貴方達はこの階層を探索する為の免許を持っていますか?」
「あぁッ!んな事、お前に言われる筋合いは無いだろうがッ!
てめぇ~は黙って引っ込んでろ!」
「そうですね…では、さようなら…。」
はい、こいつらは反省する所か逆ギレ…。
さらにダンジョンマスターへの暴言…これは、もう死亡決定だな。
もっとも、目的は怪我を負わせ後悔させる事であって、その過程で、最悪死ぬ事がある…と言うだけの話である。
ただまぁ、流石にイラッとしたので…
〔え~、こちらマスターワンからスライムワンへ…オーバー〕
何となく、無線機で話す様な口調の念話での会話を試みる
〔はい、こちらスライムワン、マスターワンへ…何でしょうか?オーバー〕
…あれ?このスライム…確か、最低限の端末の役割しか与えてなかったはずなのに、やけに個性的になってないか?
何で、こんな器用な受け答え出来る様になってるんだ?
もしかして…この性能は、プリンの悪戯か?
多々、疑問は残るが…あまり待たせるのも悪いから早く指示を出そう。
〔えっと…今、僕の位置はそこから分かるかな?〕
〔…はい、確認しました。〕
今度はオーバーと言わなかった為か、3秒ほど待ってから返事をするスライム君。
ある意味、高性能な気もするが…と言うか、何でこんな仕様なんだろう?
〔んじゃ、僕の前に冒険者のパーティーが居るのは分かるよな?〕
まぁ、前と言っても相手から見えない様に隠れているのだが…。
〔え~…1、2…5人組の冒険者達ですか?〕
〔そうそう…こいつらさ、僕が注意したら暴言吐いたんで、ちょっとキツイお仕置きをしたいんでけど…こいつらの前後に団体さんを配置して、挟撃って出来るかな?〕
〔そうですね…配置までは可能ですが、魔物達が都合良く冒険者達を
なるほど…全部が全部、こちらの思い通りにはならない訳か…。
〔まぁ、それで良いか…やるだけやっちゃって~。〕
〔了解ッス!〕
本当に、このスライム、何なんだろう…軽く言えば、軽く返すし…本当に変わったスライムだな。
まぁ、それはそれって事で、置いとくとして…あの冒険者達も少しは懲りるだろう…。
僕は次の冒険者達の所に行くとしよう…。
「あの~失礼ですが、貴方達はこの階層までの免許を持っていますか?」
「この階層の免許ですか?私達の持ってる免許はこれですが…もしかして、ダメだったりします?」
おっと…今度の冒険者は女性だけのパーティーか。
変な奴等に、絡まれたりしなければ良いが…。
まぁ、確認しなくても僕達以外は、初心者クラス…第2階層までしか入れない様になっているんだが…一応、確認するフリをしないと怪しまれるから注意しないとね。
「どれどれ、ちょっと見せて貰いますね…あ~…ちょっと不味いですね。
この免許だと、この階層まで入る許可はないですね…。
まぁ、確かに貴方達なら十分に戦えるとは思いますが、一度ギルドに戻り中級ランクの階層まで可能な免許に切り替えた方が良いですね。」
さて、どう反応するか…。
「え~!この階層って中級クラスだったの~?道理で上の階層と違って強い魔物が出てくる訳ね…
ね~、ちょっと聞いて~!この階層での探索って、この免許じゃダメだって~!
一旦ギルド戻って中級クラスの免許に更新しなきゃダメだってさ~!」
僕に対応していた彼女が叫ぶと、ゾロゾロと仲間達がやってくる…。
前衛役の剣士に盾持ちが一人ずつ、後衛役のアーチャーに魔法使い、援護役のヒーラーに盗賊…っと、若干人数が多くなっているが、何ともバランスの取れた6人組のパーティーだ。
「リーダー、免許がどうしたって?」
前衛職である女剣士が聞いてくる…なるほど、話しやすそうだと選んだ、このヒーラーがリーダーだったのか…。
って、ヒーラーがリーダーとは珍しいパーティーだな…。
「えっと…この人が、この免許だと、この階層の狩りはダメなんだって~。」
「あ、どうも初めまして…。
実は、今日はダンジョンの初日と言う事で、誤って許可のない階層に入り込む冒険者がいないか巡回中でして…。
先ほど、こちらのヒーラーさんに免許を見せて貰った所、この階層で狩りをする許可がないのが判明いたしまして…。」
「ふ~ん…で?」
おや?リーダーさんは良い感じの人だったが、この女剣士さんは、ちょっと反発的な態度だな…。
「まぁ、バランスの取れたパーティーみたいなんで問題はないとは思いますが、一応、ギルドの方で中級ランクでも狩りを許可する免許に更新した方が、トラブルに巻き込まれないで済むとお願いしている所でして…。」
「なるほどね…理解した。
しかし…私はこのままでも問題ないと思うけど…みんな。どうする?」
余程、自身があるのか女剣士は問題ないと言い放つ。
だが、流石はリーダーと言うべきか?彼女は落とし所は知っている様で…。
「も~、何言ってるかな…わざわざ監視員さんが注意してくれてるんだよ?
それを無視するなんてダメに決まってるじゃん!
ダンジョンは逃げないんだから、面倒かも知れないけど、一旦戻って更新して貰おうよ?」
「えぇ、出来れば、そうしてくれると、こちらの方も助かります…。」
リーダーの返事に僕が続けて答えると女剣士は舌打ちしながら質問してくる。
「チッ!そう言えば…あんた監視員って言ったよな?
あんたの免許って何処まで行けるんだ?」
まぁ、そうなるよな…注意するだけではなく、実力を教えろ実力があるなら従うぞ…と、脳筋には良くある事だ。
「仕方がないですね…あまり見せるのは控える様に言われて居るんですで、貴方だけになら…ですが、他言しないで下さいね?
先程も言いましたが、本来は見せてはダメですので…。」
「あぁ、私は口が硬いからな…それは保障しよう。」
「そうですか…では、こちらの方に…。」
僕はそう言うと、女剣士さんを連れて少し離れた場所へと移動すると、懐から冒険者カードを取り出す。
「本当に、内緒でお願いしますよ?」
「くどい!」
仕方ない、こりゃ見せないと納得しないタイプだ…と、彼女に冒険者《ギルド》カードとダンジョン探索の免許を見せる。
実は…今回、ダンジョンを支配した事により、ラオンさんから僕は特例としてAランクの冒険者としての冒険者カードを発行されている。
その為、冒険者カードだけでも僕が実力者と言う事が分かる様になっている。
更に言うなら、免許でもその差が一目瞭然である。
何故なら、彼女たちの免許は初級である第2階層まで…それに対して、僕の免許は上級である第7階層まで…。
これで、実力が分からないなら…よほどのバカだ。
案の定、実力差を知った女剣士は態度を改める。
「す、すいませんひた!」
慌てたのか、噛んだ様だ。
だが、ここは大人の対応が必要な場面だ。
それと…プリンがいなくて良かったと思う…。
「いや、先ほども言いましたが…正直、貴方達の実力なら問題ないとは思うんだけど、念の為…ね?」
僕がそう言うと、女剣士はみんなの方へ戻ると、先程まで駄々を捏ねていたのに急いで帰ると言い出した。
ちょっと驚かせ過ぎたかもしれない。
「そうそう…この紙をラオンさんに渡せば、申請が通りやすいと思うよ?」
僕はそう言って、一枚の紙を渡す。
ダンジョンがオープンする際に話し合った結果、僕が実力を認めた場合に渡す様に決めた紙だ。
ラオンさんに見せれば、すぐに分かる様に取り決めた
その紙を受け取ったリーダーが僕に聞いてくる。
「あの…ラオンさんって、ギルドマスターのラオンさんですか?」
「うん、そうだよ?僕はそのラオンさんしか知らないからね。」
「えっと…あの…その…普通は、簡単にはギルドマスターに会うなんて事ないんですけど…。」
「え…そうなの?」
どうやら、僕への対応と他の人への対応の差と言う物は、予想以上にあったみたいだ。
「あ~…だったら、受付に出せば対応してくれると思うよ…たぶん…。」
「そ、そうですね…ははは…。」
ちょっと気まずい雰囲気になってしまったが、こればっかりは仕方がない。
自分が、あまりにラオンさんと会っていた為、他の人もそうだと認識していたのは完全に僕のミスだ。
今度から、注意して話すようにしよう。
「そうだ…この階層で何かドロップしましたか?」
「いえ、まだ何も…。」
他の人へと目配せしても、全員首を横に振るだけでドロップ品は手に入れていないみたいだ。
「そうですか…でしたら、僕の指示に素直にしたがって免許の更新をしてくれるみたいなので…こちらを差し上げましょう。」
僕はそう言うと小さな小瓶を鞄から取り出す。
もっとも、鞄の中から取り出したのではなく、他の人には見えない様に、鞄の中で
「ありがとうございます…って!?
こ、これって…もしかして
「えぇ…それがあれば、今から引き返したとしても、今日の稼ぎとしては十分に元が取れますよね?」
「え、えぇ…ですが、良いのですか?」
「はい…かまい「みんな、さっさと帰るぞ!」」
ポーションが貰えた事で、女剣士さんは僕の台詞に被せてまで帰る事を提案する。
何と言うか…そもそもリーダーはお前じゃないだろうが!とツッコミを入れたくなるのをグッと堪えていると、それまで今まで黙っていた他のメンバーが声を揃えて言う。
「「「「お前が言うなッ!!」」」」
「リ~ダ~!」
少し涙目になってリーダーに助けを求める女剣士…ちょっと可愛いと思ってしまったのは秘密だ。
「はいはい、では…みんなギルドに戻りますよ~。」
リーダーさん女剣士さんの頭を何故ながらそう言うと、他のメンバーを連れて出口に向けて歩いていく。
その時、ちょうど遠くの方で悲鳴が聞こえた…どうやら、僕に暴言を吐いたヤツらが痛い目に遭っている様だ。
僕は全滅しなければ良いな…と思いつつ、他のパーティーに注意する為に移動を開始するのであった…。
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