121ページ目…実験結果

『ガチャガチャ…ガチャン。』


「よし、これで全身鎧フルプレートアーマーの装着は完了っと…。」


 僕は、誰に言うでもなく、独り言よろしく呟いた。


〔ご主人様、お疲れ様です。〕


 そんな僕に対してプリンは、その呟きに対し労ねぎらいの言葉を僕に掛けてくれる。

 そして…全身鎧を身に纏ったアンデッド…元スケルトンは、その身体が問題なく動くか運動を始める…。


 僕は、そんなアンデッドの彼女を、実験の結果に少し満足していた。

 と言うのも、スケルトンであった彼女…ゴーレムの中でスケルトンになってからと言う物…何も出来なかった為、レベルは1のままだった…。

 つまり、スケルトンでも最弱の部類に位置していたのだ。


 だが…今の彼女はスケルトンではない…。

 何故なら、僕の〖擬魂付加フェイクソウル〗により、擬似的に魂の力を増していったからだ。

 では、魂の力が強くなると、いったいどうなるのか…それは、レベルが上がるのと同じ事になるのだ。

 強い物には、それだけ強い魂が入っている。


 つまり、敵を倒して経験値を手に入れ、レベルが上がり強くなる…この経験値と言う物が、相手の魂の力を吸収して自分の力として吸収した証として存在しているのだ。


 ただし…本来であれば〖擬魂付加フェイクソウル〗を、幾ら使ったとしても生き物には経験値として蓄積される事はない。

 だが、生きていない物…つまり、鉱石などの無機物(金属の塊なども含む)や、何かの死体(まぁ、魔物の場合は死骸が残らず塵となって消滅える事の方が多いが)…に使った場合、それは経験値として付加する事が出来るのだ…って言うのが、今回の実験で分かった事だった。

 どうりで〖擬魂付加フェイクソウル〗を使って修理したレオが強くなる訳だ…。


 で、何で今頃そんな話をするかと言うと、ここで先ほどから彼女をスケルトンではなくアンデッドと呼んでいるかと言う話に戻る。

 最初、彼女はスケルトンだった…。

 で…だ、その後、僕は泥を固定化する為に泥に対しても仮初めの魂を付与していた。

 もちろん、その泥を支える骨にも魂の力を増幅してやる必要がある訳だ。

 その為、僕は調整する度に何度も〖擬魂付加フェイクソウル〗を使っていた。

 つまり、経験値をどんどん与えていた事になる。


 では、経験値を大量に手に入れたらどうなるか…こちらも、当然と言えば当然だが、レベルが上がる。

 そして、レベルが上がれば進化が可能になる…ただし、今回の場合は存在進化したと言った方が良いのかもしれない。

 スケルトンからスケルトン・ソルジャー…スケルトン・ソルジャーからグール…そして、グールからは中々進化しなかったのだが、何故かは知らないがレヴェナントと言う種族へと存在進化しているのだ。


 レヴェナント…確か、戻ってきた者とか幽霊とか言う意味だった気がするが…違ったかな?

 とりあえず、元の世界…日本人にとって幽霊は実体を持たない物なのに、泥と骨とは言え実体を持っているのはどうなんだろう?と言う疑問は、この際、そこら辺に置いておくとして…僕は、それほどの進化を与えるだけの経験値を与えた事になる。


 だけど、実際には他の物から奪った魂は使っていないのだから、実に怖ろしい魔法だと思う。


 ちなみに、レヴェナントに進化した彼女は泥の体なのに、それこそ人間の皮膚にしか見えなかったりする。


 しかも…水に触れても、再び泥になるなんて事もない…本当に泥なのか?と疑いたくなる程だ。

 まぁ…アレだ…街に戻ったら、どっかの工場に行き鎧の材料を手に入れて、オリハルコンの鎧は回収するつもりだ…そこの君、ケチと言う事なかれ…。


 だって、考えてみてくれ…そこらのありふれた金属とオリハルコンでは価値が違いすぎるんだもん…。

 しかも、このアンデッドは僕の手を離れる予定である…そんな物の為に貴重なオリハルコン製の鎧を与えるのは勿体なさ過ぎなのだ。


 そんな訳で、アンデッドを含む、ゴーレムなどの魔法生物に対して、〖魔法:擬魂付加フェイクソウル〗は予想以上に有用性がある事が今回の実験で分かった。

 だけど、この魔法を覚えるきっかけとなった『零の使い魔』なる存在、その目的も含めて、もっと警戒するべきなのだろう…と、改めて心に刻むのだった…。

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