102ページ目…森羅万象

『パチンッ!…バキンッ!!』


 僕は指を鳴らす…すると、僕を咥えていたドラゴンの牙が折れ、そのまま僕は解放される。


「GUGYAAAAAAA!」


 牙が折れた痛みからか威嚇の為か、ドラゴンが一際大きく叫び声を上げた。


 そして…僕は、その一瞬の間に相棒であるプリンの位置を確認すると…。


「プリンッ!!」


 僕はプリンの名前を叫ぶと、プリンの元へと空間転移する。


「ごめん…心配掛けた。」

「よ、よかった…ご主人様生きてる…。」


 そう言うと、プリンはボロボロと涙を流し、その場にへたり込んでしまった。


『パシャン。』


「ご主人様、冷たいです…。」

「そりゃ、そんな所に座り込んだら濡れるに決まってるじゃん…湖の水は冷たいだろ?

 そんな事より、あいつを倒す…だから、立ってくれるかな?」

「あぅ…気が抜けた所為か、体に力が入りません…。」

「だったら、そのままで良いから…融合するぞ。」


 僕はそう言うと、プリンに優しくキスをする。

 すると、プリンの体が緑に光る…そして、僕達は再び一つになった。


「プリン、サポート頼む!」


 そう言うと、僕は再び指を鳴らす。

 しかも、今度は単発ではなく連続で…。


『パチンッ!パチンッ!パチンッ!』


 に刺さっていた牙が体内に取り込まれる。

 次に俺の体と、レオに空いた穴が塞がる…そして、最後にレオが金色に輝いた。


「ガウガウ!!」


 一連の現象をHPもMPも…そしてSPすらも使わずに、一瞬の内に完了させる。

 まだまだ森羅万象の力は、こんな物ではないはずだが…ひとまず、これにて終了。

 準備万端とばかりに、俺は再度、ドラゴンと真っ向から対峙する。


〔貴様、いったい何者だ!?それに何故、我の牙に貫かれて生きている…その力はいったい何なのだ!〕


「はぁ?何でがお前なんかに教えなきゃ行けないんだ?

 そもそも…こっちは、いきなり襲われて死に掛けたんだ、きっちり落とし前付けさせて貰うからな!!」


 俺はそう言うと、右手を前に出す。


竜の牙ドラゴンファング!」


 僕の叫び声に反応するかの様に、僕の手から白い剣が顕れる。

 先ほど体内に取り込んだ竜の牙を〖魔法:模型創造モデリング〗で作り出した剣だ。


 じぃちゃん曰く、竜の牙は、全てを穿つ…ならば、その牙で作った剣ならば、全てを斬り裂くはずだ。

 もっとも、牙の強度までは分からないが…。


〔そ、それは、もしや先ほどの…我の牙か?〕


「あぁ、お前…の、ご自慢の牙だ…ちょっと使いやすい様に、ちょっとばかり加工させて貰ったがね。」


 俺の中の破壊衝動を抑えながら、ドラゴンに返事をする。

 どうも、〖魔王〗の称号の性か、俺の中の凶暴性が増している様だ。


〔ご主人様、ちょっと怖いです…。〕


 元々、プリンの精神には影響が出なかった魔王化ではあるが、プリンと分裂する際に全ての能力を等しく与えた所為か、発現していた〖ミニ魔王〗の影響かは分からないが…再び俺と一体化した事により、プリンの精神に恐怖の感情を与えてしまった様だ。

 ただまぁ…やはりプリンは、こうじゃないとね。

 何だかんだと、強気な発言をする事が多いが、その中で見え隠れする弱い部分が、今更ながら愛おしく思えてしまう。


 そんなプリンとイチャ付く為、さっさとドラゴンを倒してのんびりしようと思う。


「はぁぁぁぁぁ!闘気弾オーラショットッ!」


 気合いと共に僕の左手から巨大な力の塊が撃ち出される。

 それに併走するかの様に、俺は走り出した。


〔小虫ふぜいが、なめるな!〕


 ドラゴンはそう言うと、闇の力を纏った左手で闘気弾を弾き飛ばす。

 って、アレを弾き飛ばすとか…どんだけやねんって話だ。


 だけど…残念ながら、それは悪手である。

 何故なら、その後ろを俺が走っているから…だ。


 闘気弾を弾き飛ばした事により、その手が邪魔で死角が出来る。

 俺はその隙を付いて、攻撃を仕掛ける。


『ドカッ!!ガチャンッ!』


 ドラゴンの横っ面を力任せにぶん殴った反動で、鎧化しているレオの一部が砕け散る。

 十分に魔力を通しているから、かなりの強度になっていたはずなのに砕けてしまった…。

 折角直したのに、また後でレオを直さないとな…と思いつつ、ドラゴンを見る。

 上手い具合に殴りつけた様で、さらに2本、牙が折れている…が、地面には牙が見付からない。


〔ご主人様、牙は私が回収しています。〕


 プリンはそう言うと、触手を使い僕の前に牙を出してくる。

 投げた剣を受け取る事と言い、牙を回収すると言い…器用過ぎじゃないですか?

 と、心の中で思ったのだが…。


〔ご主人様のお役に立ちたくて練習しましたから…ポッ〕


 と、プリンは丁寧に答えてくる…。

 二人で一人なのに、一方的に俺の事を読まれてる気がするのは何でなんだろう…。


〔貴様、貴様、貴様ーーーッ!!〕


 ドラゴンはそう言うと、大きく息を吸い込む…。

 さっきのドラゴン同様、同じ様に…と思ったが、ここで嫌な予感がする。


 何故、先にブラックドラゴンが攻撃を仕掛けてきたのか…考えられる事は一つ…。

 僕の行動パターンを見る為…。


 ならば…と、僕は無限庫から『竜玉』を取り出し、プリンのスキル〖吸収〗を使う。

 竜玉は、ドラゴンの力を秘めし玉…ならば、コレを吸収すれば、ドラゴンと同じ様に…。

 本来の使い方とは、ちょっと違うと思うが、ちょっとした閃きだったが…どうやら今回は正しかった様だ。


 僕の中に竜の力が流れ込んでくる…なるほど、コレは実に良い物だ。

 僕もドラゴンと同様に、大きく息を吸い込む…そして…。


『『ブォーーーーー!』』


 俺とドラゴン…お互いの息ブレスが同時に吹き出す…。

 ヤ、ヤバイ…同時だと、僕の方が先に息が切れるんじゃ…。


〔ご主人様、援護します!〕

〔ウギャーーー!〕


 お互いの炎が、相手の炎を消し去る様にぶつかり合う…。

 しかし、懸念していた息ではあるが、先に息が切れたのはドラゴンの方だった。


 何故なら、魔王化により今の俺はである為、基本的に呼吸をしない…そして、スライムである以上、体を変形させる事が可能…。

 そして、一番の要因は、俺にはプリンがいる…そう、最も重要な事だが、プリンは俺と一緒に戦ってくれているのだ。


 何て事はない、僕一人だけなら余裕で負けていただろう…だが、俺にはプリンがいた…。

 即ち、プリンが体の一部を変形させ炎を吐く為の呼吸を担当してくれていたのだ。


 そりゃ、エンドレスで息ブレスを吐けるのと、呼吸に息継ぎが必要なのとでは自ずと結果は見えてくる。

 俺一人だと制御が出来なくても、プリンがいれば分担すれば余裕…まさしくプリン様々って所だ。


 そう考えると、俺よりもプリンの方が活躍している事になる。

 さすが、を名乗るだけの事はある…後でたっぷりと褒めてやらねば…と思った瞬間だった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る