38ページ目…融合

『テクテク…ポヨン、ポヨン』


 ご飯を食べ終わった僕達は町に向けて歩き出していた…もっとも、スライムのプリンちゃんは、歩いていると言うより飛び跳ねているのだが…。


〔そう言えば…ご主人様、一つ聞いて良いですか?〕


 ご飯を食べて歩き出して暫くしてから、彼女が〖念話〗で僕に質問して来た。

 黙々と歩いていたから退屈させてしまったかな?と思い、休憩がてら彼女と会話をする事にした。


「ん?聞きたい事って?」

〔ちょっと気になったのですが…ご主人様は右腕を生やさないのですか?〕

「あぁ…コレの事?」


 僕は肘から先が無くなっている右腕を左手で指さした。


〔そう、それです…人族は手や足を生やせないんですか?〕

「う~ん…僕の世界の人は生やす事は出来ないね。

 この世界の人は、どうか分からないけど…。

 って言っても、僕の場合は〖自己治癒〗があるから、その内、治ると思うけど…流石に時間は掛かると思うよ?」


 右腕を無くしてから、暫く経っているが、少し再生しただけで、殆ど再生していないのが現状である。


〔〖自己治癒〗ですか…確かに時間が掛かりそうですね…。

 私みたいに〖自己再生〗が使えたら良いのに…って、先程、ご主人様が言った『この世界の人』とは、どう言う事ですか?〕

「あぁ、その事か…僕は異世界から来てるんだよ。」

〔異世界ですか…なるほど、だからそんなに強いんですね♪︎〕

「だから〜何度も言ってるけど、プリンの方が強いんだってば!」


 って言うか…そんな簡単に異世界って事を信じて貰えるのだろうか?


〔ご主人様の方が強いのに…グスン…。〕


 プ、プリンさん…スライム形態だと、涙を流す事出来ないはずなのに…泣き真似ですか?

 地味に、色んな事が出来るのは、やはり進化前の影響なのだろうか?

 正直、まだまだ予想外な隠し玉を持っていそうで怖いッス。


「そ、それに…僕はプリンと違って、そんなスキル持ってないから使えないよ。」


 い、いかん…話題を戻そうとしたのに、どもってしまった…。


〔そうですよね…私と違う…あッ!〕

「え?何ッ?敵ッ!?」


 僕は慌ててキョロキョロと周囲を確認するが、敵影を発見する事が出来ない。


〔いえ、敵ではなく…ご主人様、一つ試したい事があります。〕

「試したい事って?」

〔はい、私には〖融合〗と言うスキルがあるんです。

 内容としましては、一時的に他の物と同化…合体する事が出来るスキルです。

 もちろん、一時的ですので分離も可能です。〕


「ふむふむ…それで?」

〔あ、あの…融合すれば、私と同じ存在になるので、〖自己再生〗を使えば、ご主人様の右腕を生やす事が出来るんじゃないかと…。〕


 右腕と生やす…確かに今のままではかなり不便だ。

 僕は、つい彼女の甘い誘惑に乗ってしまった。


「そうだね…ダメで元々だし、お願い出来るかな?」

〔はい、最初は痛いかもしれないけど…すぐに気持ちよく…。〕


『ズビシッ!』


〔キャッ!な、何すんですかご主人様ッ!?〕


 彼女はポヨンポヨンしながら僕に文句を言ってきた。

 それもそのはず…僕は、左手を手刀にして彼女の頭…が、どこか分からないが頭らしき場所を叩いたのだ。

 まぁ、ぷるんぷるんしてるから、ダメージ自体は与える事は出来なかっただろうが、それでも衝撃はあったはず…故に、彼女の台詞を止める事に成功した。


「何を…じゃない!変な言い回しをしするな!

 なんか別の意味に聞こえて恥ずかしいだろ!」


 僕は少し顔が赤くなるのを感じつつ、彼女に注意をした。


〔ぶ~ぶ~!ご主人様、酷いです~。〕


 しっかし…どこでそんな知識を手に入れたんだろう…以前、『マッド』だったから人間を観察でもしてたのだろうか…と、これからを考えると、ちょっと不安になってきた。


「ごめんごめん、それより…融合だっけ?

 確かに右腕がないと不便だから早く試して欲しいな~。」

〔も~すぐそうやって誤魔化す…。

 でも、旦那様を支えるのは妻の務つとめ…すぐに融合しますね。〕


 うん…だから、何度も言うが…プリンは嫁じゃないんだけど…。


〔〖スキル:融合〗〕


 彼女がスキルを発動する…彼女の体が緑色に輝いたと思ったら僕の方に飛んできた。

 つい、反射的に目を綴じてしまった…そして、彼女は僕の体を包み込んだ。

 いや~!ぬるぬるする~!


 …なんて事は全くなく、天日干しした布団にくるまれた様な…そんな気持ちの良い感じがした。

 嫌な感じはしない…むしろ、ずっと、このままでいたいとすら思う。


 そして、僕は…ゆっくりと目を開いたのだった…。

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