第211話 改めての紹介
「ふう…」
そう洩らしてプレスが一息つく。お互い一応は冗談であったのだが…、…一触即発であったような…、もしお互いが本気であればこの孤児院どころかダリアスヒスの全てが灰燼に帰していたかもしれないプレスとマルコと呼ばれた乙女の言葉を用いる筋骨隆々でダンディーな口ひげを蓄えた巨漢との睨み合いから少し経って、プレスとティア、教会を兼ねる孤児院の司教であるスワン=ロンバルディと巨漢のマルコが大広間でテーブルを挟み向かい合っていた。夜も更けてきたのだがまだ起きていたシスターたちがお茶を淹れ、菓子が供される。プレスはシスターたちに丁寧に感謝を述べて本題へと入ることにする。
「ティア…。紹介するね…。こちらがマルコ。えっと…、ティアのことだから存在そのものがでたらめってことも分かると思うんだけどね…。そしてマルコ。ミケとサラから聞いていると思うけど改めて紹介する。おれの相棒のティアだ」
「マルコよ♪いちおうマルコ=ファーガスンって名乗っているわ。よろしくね♪ティアちゃん!」
身の丈二.五メトルの巨漢はソファに足を揃えて腰を掛け、両手を胸の前で組んでそう話す。
「ティアと申します。宜しくお願いします」
ティアの額に一筋の汗が流れる。挨拶をしている間もティアはマルコの全身から発せられる輝く闘気のようなものを感じ取っていた。どこをどう解釈してもその溢れる力は圧倒的な強者のもの…、そしてそれは…。そこまで思い至ってティアは僅かに首を振ると眼前の強者の真の姿について、自身の考えを打ち消した。それが余りにも荒唐無稽であったからである。
「マルコ…、そんなに威圧的な闘気をおれの相棒に向けないでくれ…。普通の魔物だったらもうその存在が危い状況だ…」
「なによ!ちょっとくらいはいいじゃない…、それにしてもこんな可愛い竜の
「ええ。プレストンは一人で旅をしていると思っていましたからね…。二人だったので孤児院に危害を加える強大な敵だと…」
「あたしも同じよ!転移してきたらスワンちゃんの前に物凄い気配が二つもあったから…、でもプレスちゃんだったから嬉しかったわ」
「それでおれは死にかけた…」
「男は細かいことに拘ってはいけないって教えなかったかしら…?」
そんな話を打ち切ってプレスはティアへと顔を向ける。
「ティア…。もしかしたら察しがついているかもしれないけど…、マルコは…、ええっと…、なんだ…、ま、ぶっちゃけると放浪神マルコだ!」
「ヨロシクね!」
うふ♪っとウインクをする巨漢。その仕草にティアは成す術もなく絶句する。
放浪神マルコ…。かつてこの世界を作ったとされる神々に幻滅しこの世界で生きることを決めたとされる伝説の神の名であり、その存在はこの大陸の東側を中心に信仰の対象となっている。この大陸で人族や亜人は様々な神を祀っている。その殆どが土着の風習や自然現象などを信仰の対象としたものだが、この放浪神マルコだけは違っていた。
「た、確かに…」
ティアはなんとか言葉を絞り出す。
「放浪神マルコが実在の神であるということは我らグレイトドラゴンにも伝わってはいた…。だがその本人というか…、本物の神がこの場に…?あ、主殿…、こ、これはどういうことなのだ?」
「えー!プレスちゃん!あたしも聞きたい!!」
未だ呆然としているティアと冗談めかして語りかけるマルコに話を向けられたプレスは頬を掻き掻き、答え始めた。
「えっとね…」
プレスは目の前に笑顔で座っているマルコ本人から聞かされたかつての話を思い出し、語り始めるのだった。
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