第112話 剣と魔法の使い手
静まり返る甲板。プレスは血振りをした長剣を鞘へと納める。
「おれの勝ちで問題ないかな?」
いつもの調子で周囲を見回しながら問いかけるプレス。しかし周囲の船員たちの唖然とした表情を見て困ったような表情を浮かべた。
「ど、どうしたの?も、もしかして人が死ぬところを見るのが嫌だった?で、でも…法の下での正当な決闘だし…、命を懸ける条件だったし…、それにC級冒険者なんだから依頼によっては人を殺すことなんていくらでもあるから…」
「主殿…、そうではない…」
「ティア?」
「やりすぎだ…。ここにいる船員たちは主殿を魔導士だと思っていたはずだ。それなのにあれほどの凄まじい斬撃を目の当たりにして困惑しているのだ」
「あ…、確かに船に乗ってから剣は使ってなかった…」
船員たちは騎士の死に絶句したわけではない。この世界に決闘は珍しくなかったし、船を襲う盗賊と護衛が闘い死人が出るのも彼らの日常であった。
ティアの指摘の通り、魔物を一蹴した火矢やリヴァイアサンのブレスを防ぐ結界を見ていた船員たちはプレスが勝つとは思っていた…。思ってはいたがまさか剣で騎士を圧倒するとは思っていなかったのだ。ティアの声に事態を理解したのか彼らが口を開く。
「け、剣士だったんだ…?魔法ばっかり使ってたから…」
「ああ、恰好が逆なだけで…、おれもあの美人の姉ちゃんが前衛で兄さんが魔導士だとばっかり…」
「リヴァイアサンを殴り倒した時の姉ちゃんより迫力っていうか凄味が…」
「おれたち…本当にヤバい冒険者に護衛を依頼したんじゃ…」
「あの姉ちゃんを口説く勇気のなかった昨日の俺を褒めてやりたい…」
「口説いたらああなってたかもな…、最後に生き残るのはやっぱり臆病者だな…」
いろいろ聞こえてくるがそれを無視してプレスは残り三人の騎士に視線を移す。すると何を思ったのか三人の騎士が次々と抜剣して構えをとった。
「フランドル家配下、騎士ライス!」
「同じくジエ!」
「同じくグイーズ!」
次々と名乗りを上げる。この場において抜剣し名乗りを上げたということはプレスに決闘を申し込んだということになる。宰相の娘であるマリアが決闘をやめさせようとして何かを言いかけるが従者たちに止められる。この状況において第三者が介入し決闘をやめさせる行為は申し込んだ騎士達の面子を潰し名誉を傷つけることになるからだ。
「C級冒険者プレストン…」
プレスもそれに呼応するように静かに名乗りを上げる。決闘が成立した…、と同時に三人の騎士がプレスへと斬りかかる。
連携の取れた見事な動きと言えた。しかし、
「
三本の青白い火矢が現れる。それは凄まじい勢いで三人の騎士の胸へと直撃し瞬時にその命を奪うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます