一方その頃…
第25話 闇に蠢く
そこは漆黒の空間…。
周囲は完全な闇に覆われている。この世界のどこか…。最早、人も亜人も動植物も既に生きることを諦めた場所…。
プレスが決着をつけた頃…。
「ふむ…」
闇の奥から…いや闇その物からだろうか…声が聞こえてくる。いやこの空間に響いたという方が正しいかもしれない。その瞬間に集まっていた者たちが体を凍り付かせる。
声の主だけではない…。その場にいた全員が漆黒のフィルゼガノンの消滅を感じていた。
「ふっふっふ…」
声が響く。己が腹心である部下の魂が永遠に消滅したことを寧ろ楽しむかのように…。
「わ、我が君!?」
それ以外の者たちは動揺を隠せないようだ。そして滅多に聞くことのない『我が君』と呼ばれた存在の笑い声に恐怖すらも感じていた。
「まさかフィルゼガノン殿が…?」
「何があったのだ…」
「かの二体の眷属はどうしたのだ!?」
二体の眷属…。ブラックワイバーンとインペリアルドラゴンゾンビ。ダークリッチがその叡智を用いて作成した極めて強力な魔物。知能こそ低いが特にインペリアルドラゴンゾンビはここに居合わせる者でも手を焼くほどの存在であった。
「魔力反応がない…。討伐されたとみて間違いないだろう…」
居並ぶ者の中でも特に魔力に長じた者が呟く。周囲は信じられないと言った声を漏らした。
悲願の糧としてエルニサエル公国カーマインの街を標的とし魂の回収を行う…。相手は脆弱な種族。ここにいる全員がカーマインの街の攻略など容易いものと考えていた。しかしこれまでとは異なる大規模な行いである。万全を期すため腹心の中でも実力者として知られるフィルゼガノンがその役目を請け負ったのだ。それが失敗するとは…。
「と、とにかく調査を…。フィルゼガノン殿と二体の眷属に何があったのか早急に…」
「待て!」
「「「!」」」
狼狽えた一人が話す言葉を遮るように声が響いた。闇の中、その空間に禍々しい魔力が充満する。全員が直立して凍り付く。口を開いたものが消滅する。それほどの威圧感が居並ぶ者を圧倒した。
「面白い…。人族か亜人か…。いずれかであっても我が腹心を滅ぼすとは…。面白い…面白いぞ…」
周囲の者達はその口を開くことができなかった。全員がじっと次の言葉を待つ。
「聞け!!!」
響いた声に全員が跪く。
「フィルゼガノンは最も信頼する腹心であった。失ったことは残念であるが我らが悲願を目指すことに何ら変わりはない。しかしまだ時期が早い。調査は構わぬが悟られるな!そして今はダンジョンを優先せよ!!」
「「「我が君のお心のままに!!!」」」
全員がその場から消える。そこには闇だけが残っていた…。
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