第39話 みんなの声が俺の活力

買い物の途中、ある店の前で俺は立ち止まる。2人は先に入ってしまった。

俺はしばらく考え、入店するのを止めて外で待機に。

「あー、こんな所にいた。早く来てよ」

お店に入らない俺を恵が呼びに来た。

「いや、俺は外で待ってるから」

「ダメだよ。だって選ぶのは千秋なんだから」

手を引っ張られてランジェリーショップに連れ込まれる。

「ここは男が入るお店じゃないだろ」

「選ぶ人がいないとダメじゃん。ほら、彩奈も待ってるよ」

店内は女性しかいない。当然、手を引かれる俺に注目が集まる。

彩奈の下に連れていかれる。彩奈はいくつかの下着を選んでた。

「あぁ、千秋がやっと来た。ねぇ、千秋は黒と赤どっちが好み?」

は?なんてことを聞くんだ。すぐそばに店員さんもいるし。

「どっちも似合うよ」

「何を恥ずかしがってるの?今更でしょうに」

お店の女性店員もニヤニヤしている。

「じゃ、彩菜は赤。恵は白だな。どんな色でもセクシーで可愛いけど、見てみたいと思うのはその2色」

「赤がお好みなのね」

「彩奈の白い肌に、赤の下着が最高だと思う。恵は白い下着だな。清純な恵の体を、俺色に染めたい」

「そう、ならいいわ」

彩奈も恵も、少し照れてるようだ。

「男性視点の貴重な意見でしたね。どちらもお似合いですが、ここは赤で決まりですね。そちらのお嬢さんも彼の希望通り白にしましょう」

女性店員のフォローもあり、2人は購入を決めたようだ。

まぁ、なんだ。うん、見てみたいな。


時間は昼時。

食事はフードコートで簡単にすませた。

彩奈は海鮮丼、恵はローストビーフ丼で、俺はオムライス。

俺がオムライスを受け取り席に戻ると、4人掛けの席がすべて埋まっていた。

彩奈と恵と、知らない男2人。これどういう状況?

「知り合いの人?」

一応、確認した。本当に知り合いかもしれないしね。

「知りません!」

恵は大きな声でニッコリ笑顔で答える。続けて彩奈は、

「あら、人がいたのね。全然気が付かなかったわ。こっちは狭いし隣が席が空いてるわ。恵、移りましょう」

彩奈と恵が席を移動する。俺も隣の席に座った。

取り残された男2人は悔しそうな表情だ。結局、完全に無視されてるのですごすごと退散していった。

「やっぱり2人はモテモテだな。少し目を離すと男が寄ってくる。すごく嫌で心配だけど、嬉しい気持ちもある。だって、こんないい女が俺の彼女なんだぜって、自慢できるから」

「大丈夫だよ。あたしも彩菜ちゃんも千秋しか見てないから。他の男性には全く興味ないよ」

「そうそう、私たちをこんな体にした責任をとってもらわないとね」

「こんな体って?どんな体?」

「千秋以外の男性に近寄られると不快感がでて、触れられると鳥肌がたつ」

大丈夫、ちゃんと責任取るさ。


買い物の午後の部。

俺は荷物持ちなので2人の後をついて行くだけ。

2人は次々とお店を攻略していく。改めて凄い体力だなぁと少し感心。

ある女性服のお店に入った時の事。店の壁に、ポーズを決めてる彩奈のポスター飾ってあった。そのポスターの前で、同じポーズをした彩奈と恵の写真を撮ってみた。結果、お店の人やお客さんに彩奈とバレてしまった。

「まじ、彩奈じゃん」「隣の女の子もモデル?可愛い~」「一緒に写真撮れないかな」「サイン欲しい」

など、どんどん人が集まってきてしまった。

「うーん、まずいね。移動しよう」

彩奈と恵の腕をとりその場を離れた。

追いかけてくる人はいなかったので、ちょっと離れたお店から買い物再開する。こんな状況でも買い物を止めない2人は根性あると思う。

ある程度お店を見た後は、ハプニングのあったお店に戻って店員さんに謝った。

彩奈は店のポスターにお詫びのサインをしていた。


買い物を終え家に帰る。

俺の両手には沢山の荷物でいっぱいだ。

「クリスマス旅行楽しかったね」

恵がそう言ってくれた。彩奈も笑顔で同意。

「そう言ってくれて嬉しい。2人が喜ぶ顔が俺は大好きだ。その笑顔の為に、また頑張ろうって気持ちになる」

2人の手を取り、俺は告げた。

「違うわ、千秋。私たちだって千秋がいるから頑張れるのよ」

「そうそう、今ものすごく楽しい。毎日が楽しい」

「そうだ、ずっと一緒で楽しく生きよう。お爺さん、お婆さんになるまでずっと一緒だ。途中で嫌になっても逃さないからね」

今が最高だし、これからもずっと最高だぜ。



3学期の始まり。

今日から3学期が始まる。久しぶりの学校は楽しみです。

「おはよう」

教室に入ると数人の女性生徒が俺のとこにきた。

「上原君、クリスマスライブ行ったんだ。最高だったよ。歌も踊りも最高だった。私ファンになっちゃったよ」

握手、サイン攻めである。他のクラスの女の子も混じってるな。

「みんなありがとう。ただ、学校で騒ぐと注意されちゃうからね。気をつけようね」

サインを貰って満足した子たちは自分のクラスに戻っていく。

「おはよう、千秋。あなた大人気ね」

彩奈がやってきた。

「まぁ、珍しいってのがあるんじゃないかな」

人気と言えば彩奈のほうが全国区だ。ファン数も比べ物にならない。

「そういえば俺は彩菜のサイン持ってない。こんど書いてもらおうかな」

彩奈は俺の耳元で囁く。

「私を自身を何度も捧げたけど?物足りない?」

「あぁ、いくらでも欲しいし、次が欲しくなるよ」

なんて言ってみた。

「もう、バカ」

はい、可愛いバカ頂きました。照れながらの上目遣いは100点満点です。

俺が心の中で幸せを噛みしめていると、背中にむにゅっと柔らかい感触が。

「へい、千秋。おはようのハグだよ」

恵の凶器は最高です。自然に手がのびそうになった。あっぶねぇ。

「朝から千秋は人気者だね」

クラスメイトの女子からは、

「恵ばかりズルい」「私もハグしたい」「上原君とカラオケ行きたい」「じゅるり」

おい、最後!

「だってこれは幼馴染特権だよ。千秋のご両親からも、千秋のお世話頼まれてるからね」

ええ?そんなの俺も知らないよ。

「お休みの時におじさんとおばさんに会ったよ。家の前で偶然。息子が心配だからよろしくって。千尋ちゃんにもライブの時にも頼まれた」

うちの家族はそんなに俺が心配か。俺、無茶はしないよ?

「そういえば私も千尋ちゃんお世話をお願いされてたわ。千秋が無茶な事しないように見張ってくださいって」

「そんなに無茶なんてしないよ。みんな心配性だなぁ」

気にかけてもらえるのはありがたいけどね。

「とにかくこれからも頑張るからさ、みんなも応援よろしくね。みんなの声が俺の活力になるから」




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