第7話 先生、事件です
風呂に入り後は寝るだけ。テントで寝れるか少し心配だ。俺のテントは敏彦・浜崎君の3人。隣のテントは恵・彩奈・小泉さんがいる。
テント内で寝る準備をしてると隣のテントが少し騒がしい。
どうやら数人の男子生徒が、彩奈に友達になろうとか遊び行こうとかライン交換しようとか、押しかけてきたみたいだ。嫌がる彩奈の肩をつかんで迫っているらしい。
女の子だけだからしつこいやつもいるのか?嫌がってるのに長い間粘ってるぞ。ちょっとしつこいの範疇超えてないか?助け舟だしたほうがいいな。
俺はトイレに行くふりをして教師のテントに向かった。
「先生、女子のテントに押しかけて騒いでる奴いるんでどうにかしてください。煩いから眠れないし、女子は嫌がってるみたいです。無理やり体に触れようとしてるみただし、隣で犯罪おこされても困るんでとっ捕まえてください」
俺が注意すると面倒な事になりそうだったので、先生にどうにかしてもらおう。
数人の先生が小走りでテントに向かった。
自販機で紅茶を3本買ってテントに戻るタイミングで、教師に連行されてる3人組とすれ違った。他のクラスなので名前は知らないけど、随分チャラい感じの男だなぁ。
テントに戻り、隣のテントに声をかける。
「上原だけど起きてる?」
テントから恵が顔を出した。
「災難だったな。先生がちゃんと捕獲してたからもう安心だな。ほら、飲み物買ってきたからこれ飲んで寝ろ」
飲み物を渡す。
「ありがと~。千秋が先生呼んだの?」
「おう。生徒に注意されてもしつこい奴は言う事聞かないだろ。先生に問答無用に連行してもらったほうがいいと思ったから」
「私と彩奈ちゃんは平気だけど、桂子さんが怖がっちゃって」
あー、確かに夜中に男どもがきたら怖いよな。
「ん、わかった。俺でよければ一緒にいるけど。寝る準備をしてそっちのテントの前に陣取る。そしたら怖くないでしょ」
恵と彩奈は一緒にテントに入れば?と言ってくれたが、小泉さんが怖がるだろう。だから入り口に陣取ればいい。俺が入り口に陣取る限り誰も入れない。テント内からは直接見えないから小泉さんの安心だろう。いることは言っておかないと、気配にびびって寝れなくなるけどね。
小泉さんへの説明は2人に任せた。テントの入り口にマットを敷いて寝袋をセットする。中で怖いことあったら声をかけてくれと言い、俺は寝袋の中に入った。
ふぅ、疲れた。テントに一言お休みといって寝た。
~安西彩奈~
今日は色々あった。上辺だけの告白にうんざりしたり、しつこく言い寄る男子生徒も最悪だった。いつもの事と思えば我慢はできるけど気持ちのいいものではない。
反対にいいこともあった。最近仲の良くなった千秋の事。恵と仲が良くて、いつも絶賛していた彼。うん、適度な距離感や優しさが心地いい。嫌味や下心がないので身構える必要がなくて自然体でいられる。恵と一緒にいる感覚にちかい。安心しすぎて寝ている時に手を握ってしまったのは恥ずかしかったけど。
就寝時にやってきた男子生徒はとにかくしつこかった。友達になろう、遊びに行こう、連絡先教えとか。露骨に嫌そうな表情で断ってもあきらめない。途中からは逆に嫌がらせしてるのかと思ってた。
小泉さんにも悪いことをした。ぐいぐいと言い寄る男子生徒が怖かったのだろう、テントの隅で膝を抱えてじっと下を見ていた。
「なぁいいだろ。俺も結構モテるし、彩奈とカップルになったら学校の話題を独占できるぜ」
「結構です。あなたと話題になりたくないですから。あと名前呼ばないでください。気持ち悪いので」
「照れなくていいからさ。俺、彩奈の仕事にも理解あるし力にもなれるよ。まずは連絡先交換して遊びに行こうよ。お互いの事をよく知ってさ。新田さんやそこの女の子も一緒に遊ぼうよ。男を紹介してあげるし」
私が嫌味を言っても理解しない。恵が迷惑と言っても照れていると勘違い。話をしようよと、テントに入ろうとする。本当に馬鹿な男だ。
同じことの繰り返しにキレそうになった。叫びそうになった。
「お前ら何してる!」
我慢の限界寸前で先生方がきてくれた。あいつらは友達に会いに来たと説明しだした。先生に事実確認をされたので、私たちはこの馬鹿で愚かな男の事を伝えた。
何回断ってもしつこく言い寄ってくる。恋人になろうと強要する。女子のテントに無理やり侵入しようとする。私たち3人は身の危険を感じたとはっきり説明した。
その後、男子生徒たちは先生に連れられ去っていった。ふぅ、やっといなくなった。
「上原だけど起きてる?」
テントの外から声をかけられた。どうやら千秋が先生を呼んできてくれたらしい。ナイスだよ千秋。
今夜は千秋がテントの入り口にいてくれるらしい。千秋だったら小泉さんも安心だろう。テントの中に入ってもらおうと思ったけど、彼は入り口の外で寝ると言い張る。小泉さんにも確認して千秋を呼んだけど、結局彼はテント入り口で横になった。
もう、本当に気をつかう男だ。恵は千秋らしいと言っていたけどね。彼もテント前で寝る体制になったので甘えさせて貰うことにした。外はそこまで寒くないと思うけど大丈夫かな?ちゃんとお礼しないといけないな。
私たちも寝る体制になる。その時の恵の一言。
「千秋が入り口塞いでるからトイレ行けないね」
あー、そうきたか。確かに夜中に起こすのはかわいそう。私たちは千秋が眠りにつく前に急いでトイレに向かった。
お休み、千秋。ありがとう。心の中でつぶやいた。
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