第781話 魔人とエルフの襲撃
――1時間後、時刻は深夜を迎えた時に湖の周辺に異変が起きた。それはファングに乗り込んだ西里のエルフ達が姿を現し、獣人国の軍隊に向けて矢を放つ。
「行くぞ!!侵略者共に殺された仲間の恨みを晴らせ!!」
『うおおおおっ!!』
『ウォンッ!!』
十数名の西里のエルフはファングに乗り込み、湖へと駆けつける。彼等は矢に風の魔力を込めると、次々と湖にて見張りを行う兵士達に襲い掛かる。予想外の奇襲に兵士達は慌てふためき、すぐに湖に停泊していた船の兵士達も騒ぎ出す。
「て、敵襲!!敵襲!!」
「エルフ達が襲ってきたぞぉっ!!」
「奴等、ファングに乗り込んでいるぞ!?いったいどういう事だ!!」
船に乗っていた兵士達も慌てて降りると、ファングを乗りこなして攻撃を仕掛けてくる西里のエルフの戦士達の相手を行う。彼等は剣を抜いてエルフ達に近付こうとするが、ファングの機動力を生かしてエルフ達は決して無暗に近づかず、矢を放つ。
「喰らえっ!!」
「侵略者を倒せっ!!」
「仲間の仇を討て!!」
「ぐあああっ!?」
「ひいいっ!?」
「うぎゃあっ!?」
西里の戦士が放つ矢は風の魔力が込められ、衝突するだけで兵士達は吹き飛び、次々とやられていく。獣人兵にも弓兵は存在するが、エルフが放つ矢と普通の矢では威力も射程距離も大きく違い、獣人兵が放つ矢はエルフの戦士達に届きすらしない。
予想外にも戦況はエルフの戦士達が有利となり、獣人兵は弓では仕留めきれないとしると数の差を利用して彼等を追い詰めようと大量の兵士が船がから下りる。その中には苛立ちの表情を浮かべたガロウ将軍も存在し、彼は酒を飲んでいたのか空の酒瓶を握りしめながら怒鳴りつける。
「くそが、人が楽しく酒を飲んでいる時に来やがって……全員、一人残らず捕まえろ!!言っておくが、殺すなよ!!」
「えっ!?ほ、捕縛するのですか?」
「そうだ!!奴等は来訪者の情報を持っている!!そいつらの事を聞き出すまでは殺すな!!全員、捕まえて痛めつけて情報を吐かせてやる!!」
「は、はい!!」
ガロウの言葉に獣人兵は従い、湖に攻め込んできたエルフの戦士達を殺さず、捕縛しようと動く。しかし、敵を殺す事よりも相手を生かして捕まえる方が難しく、しかもエルフの戦士達は昼間に殺された仲間達の事を想い、全力で攻撃を仕掛けてくるのだから獣人兵からすればガロウの命令は最悪の判断だった。
「殺された同胞の恨み、決して許さんぞ!!」
「ま、待てっ……ぎゃああっ!?」
「くそ、こいつらちょこまかと……うぎゃっ!?」
「だ、駄目だ!!早すぎて捕まえられねえっ!!」
人間よりは高い身体能力を誇るとはいえ、彼等が相手しているのはエルフの戦士だけではなく、人語を理解するファングまでいる。ファングはエルフの指示通りに動き回り、敵を翻弄した。
「うおおおっ!!あ、やべっ……ぶ、ブモォオオオッ!!」
「ひいっ!?ミノタウロス!?」
「どうしてこんな場所にミノタウロスがいやがるんだ!?」
しかも奇襲を仕掛けてきたのはエルフの戦士だけではなく、野生の魔物に扮したミノも参戦していた。彼は木造製の棍棒を振りかざし、次々と獣人兵を蹴散らす。エルフの戦士だけでも厄介な状況でミノタウロスも現れた事に獣人兵は怖気づく。
その一方で船の上から様子を観察していたガロウは疑問を抱き、昼間に遭遇した西里のエルフの戦士達はファングを付き従えてなどいなかった。それに突如現れたミノタウロスも獣人兵だけを襲い掛かってエルフの戦士に手を出さない事に気づき、彼はある結論に達した。
(こいつら……そうか、魔物使いか!!魔物使いが使役した魔物共だな!?)
ガロウは魔物達がエルフの戦士に従っている理由を魔物使いの仕業だと見抜き、実際にその予想は間違ってはいなかった。ガロウは面倒そうな表情を浮かべながらもミノに視線を向け、彼は手斧を取り出すと地上へと降り立つ。
「ちぃっ……仕方ねえ、退け!!お前等っ!!俺がその牛の相手をしてやる!!」
「しょ、将軍!!お気を付けください、このミノタウロスは想像以上に強く……ぐはぁっ!?」
「うるせえっ!!てめえらみたいな雑魚が俺の心配をするんじゃねえっ!!」
「……ブモォッ!!」
自分を気遣って声をかけてきた獣人兵をガロウは殴り飛ばすと、その光景を見たミノは両手で掴んだ棍棒を構える。それを見てガロウは久々に骨のある相手だと悟り、手斧を掲げて突っ込む。
「行くぞ牛がぁっ!!焼肉にして食ってやらぁっ!!」
「ブモォオオオッ!!」
ガロウの手斧とミノの棍棒が衝突し、二人は激しく武器を繰り出す。その一方でガロウが消えた船に忍び込む影が存在し、魔人とエルフ達が敵の注意を引いている間にスケボを利用してレナは船内への侵入を果たす。
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