第743話 カツとダンゾウの捜索

――雪山の集落を離れたレナ達は長老から受け取ったペンダントを手にしてまずは雪山から離れると、湖へと移動を行う。そしてイルミナが発見したという転移魔法陣の台座に辿り着くと、まずは魔法陣の確認を行う。



「あった、やっぱりこの台座だけ、魔法陣の中央に窪みがあります!!」

「この大きさは……丁度、僕達が持っている転移石が嵌め込めそうだな」

「という事は長老の話していた勇者が所持していた魔石とは……転移石の事でしょうか?」



ルイは魔法陣の窪みを確認して自分が所持していた転移石を取り出すと、試しに魔法陣に近付ける。すると、魔法陣は転移石に反応するかのように光り輝き、ルイが魔石を魔法陣から話すと光は消えた。


転移石に反応した魔法陣を確認してレナ達は長老の話していた勇者が大陸に帰還する際に使用した台座が、目の前に存在する台座である事に確信を抱く。恐らく繋がっている先はレナ達がこの島に転移する前に利用した魔法陣である可能性が高い。



「よし、これで一応は帰還方法は確保したといってもいいだろう。問題があるとすればカツとダンゾウか……」

「あの二人は何処へ行ったのでしょうか。まあ、二人とも無事だとは思いますが……」

「空から探索したいんですけど、この島の上空はグリフォンや天馬の生息圏らしいのであんまり高くは飛べないんです」

「ふむ、それは困ったな。レナ君が空を飛べないとなると探すのは一苦労しそうだ」



ここまでの道中はレナのスケボを利用し、何とか移動する事は出来た。流石に一人の利用のスケボに3人が乗り込むのはきつかったが、もう魔人の力を借りれない以上は移動に関してはレナのスケボ以外に手段はない。


ちなみに回収した地竜の核に関しては湖の近くの地中に隠しており、他の魔物に壊されないように注意している。折角手に入れた素材を破壊されては困るため、万が一の場合を想定してこの場所に残しておいたのが幸いした。



「魔人の話によると雪山付近にはカツとダンゾウは見かけなかったそうだ。そして僕達が転移した時の状況を考えても、二人が最初に飛ばされた場所は西の荒野か東の高原……どちらから捜索を開始するべきか悩むな」

「団長、一旦引き返すのはどうでしょうか?帰還方法は判明した以上、無理にここに留まる必要はありません。ここは一度帰還して捜索隊を編成し、二人の調査を行うのが最善かと……」

「確かにそれは僕も考えた。だが、戻るとしても最初にここに転移した時の事を考えてくれ。同じ魔法陣に乗っていたのに全員が別々の場所に飛ばされた事を忘れたのか?」

「それは……」



ルイの言葉にイルミナは衝撃を受けた表情を浮かべ、最初に島に転移した時、レナ達は同じ魔法陣の上に立っていた。従来の大迷宮に繋がる転移魔法陣は同じ場所に立っていたならば同じ場所に転送される仕組みだった。しかし、この「島」の場合は最初に転移した時は各々が別々の場所に飛ばされている。


仮に帰還して捜索隊を編成し、もう一度島に戻ってきたとしても全員が同じ場所に転移する保証などない。そもそも転移した先が雪山や場合はそれ相応の準備を整えておかないとすぐに凍死してしまう。実際にレナ達はあまりの寒さに危うく凍え死にそうになったが、魔人に助けられた事で命を助かった。しかもレナ達を助けた魔人も今はどうなっているのかも分からない状況で無暗に引き返すのは危険過ぎるとルイは判断した。



「人手が少ないのは事実だが、今は僕達だけで探すしかない。あまりに時間を掛けていると救助隊が派遣される可能性もある……恐らく、猶予はあと1日程度だろう」

「1日……その間に二人を見つけて帰還しないといけないんですか」

「難しい事だとは分かっているが、最悪の場合は僕達だけでも帰還して情報を持ち帰らなければならない。だが、そう悲観することはないさ。僕達にはこれがあるからね」



ルイは改めてペンダントを取り出し、この島には味方になってくれるかもしれない存在がいる事を示す。このペンダントを持っていればこの島に暮らすエルフの子孫の協力を得られる可能性もあるため、ルイはまずは東の高原から二人の捜索を行う事を決断した。



「よし、善は急げだ。まずは東から捜索を行おう」

「どうして東からなんですか?」

「単純に荒野と比べても見通しが良く、探しやすい環境だからさ。念のため、この場所に目印を立てておこう。そうだな、とりあえずは適当に旗でも立てておくか」

「分かりました。では私のマントを使用しましょう」



仮に湖に二人が戻ってきた場合を想定し、レナ達は適当な道具を調達して魔法陣の近くに旗を立てる。傍の代わりにイルミナが所持していたマントを括り付け、書置きも残しておく。


運が良い事に地竜の住処であるこの場所には魔物が近寄る様子はなく、水源という意味合いでもカツとダンゾウが立ち寄る可能性が高いため、目印を残しておけば二人も気付く可能性はあった。旗を立てるとレナ達は改めて東へ向けて歩み出す。

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