第672話 ナオとの合流

「は、はい……呼び止めて飛行船へ避難するように指示を出しましたが、何かありましたか?」

「まずい……すぐに飛行船へ向かう!!奴を大魔導士に接触させるな!!」

「ど、どういう事でしょうか?」

「説明は移動しながら行う、イルミナも付いてくるんだ!!」



イルミナはルイの言葉に戸惑うが、立ち止まって説明する暇はなく、飛行船へ向けてレナ達は移動を開始した。イルミナはアルトが七影の長のヒトラに肉体を乗っ取られた事を知り、動揺を隠せなかった。



「ひ、ヒトラがアルト王子の身体を!?それではアルト王子は大丈夫なのですか!?」

「分からない……だが、奴はアルト王子の肉体を利用してこの国を乗っ取るつもりならばまだ生きている可能性はある。いくら死霊使いといえど、死した肉体を利用して国を治めるなど出来るはずがない」

「どういう意味だ!?」

「死んだ人間が国を治め続けるのは不可能だ。死ねば肉体は腐敗化し、やがては人間の姿を保てなくなるだろう。それはアルト王子の肉体でも同じだ」

「で、ですがアルト王子の胸元に確かに刃が突き刺さりましたわ!!」

「ああ、だが死んだとは限らない。確かにあの一撃でアルト王子は意識を失ったが、心臓を貫かれたとは限らない、もしかしたら別の要因があるのかもしれない」

「別の要因……?」



レナ達の目にはアルトの肉体を乗っ取る時、ヒトラは彼の剣で心臓を突き刺したように見えた。しかし、もしもアルトの死体にヒトラが乗り移っているだけならば肉体の腐敗化は抑えきれず、仮に国を乗っ取る事が出来てもいずれは他の人間に正体を見破られる恐れはある。


そもそもの話としてレナ達はアルトの正体を知っている事もあり、いくらヒトラがアルトの姿で演じようと騙される事はない。だからこそルイは必ずヒトラは自分達の命を狙う事を予測し、警戒を怠らないように注意した。



「ヒトラよりも先に飛行船へ辿り着くんだ!!イルミナ、援護を頼む!!」

「分かりました!!」

「ヒヒンッ!!」



イルミナは先行すると周囲の状況を警戒し、何としてもルイ達を飛行船の元まで移動させるために戦闘準備を整える。その間にレナ達も準備を整えるために装備の確認を行おうとしたとき、移動中にミナが聞き覚えのある鳴き声を耳にして振り返った。



「えっ!?もしかして……」

「どうしたミナの姉ちゃん……この声!?」

「急にどうしたんだ二人とも……うおっ!?」



聞き覚えのある鳴き声を耳にしたミナは顔を向けると、他の者達も彼女の反応を見て不思議に思って振り返る。すると、全員の視界に背中にナオを乗せたヒリューが近づいてくる光景が映し出される。



「ドリス!!皆さん!!無事でしたか!?」

「な、ナオ!?もう毒は大丈夫ですの!?」

「うん、森人族の人たちに治して貰ったんだ!!」

「シャアアッ!!」

「ヒリュー!!良かった、ヒリューも無事だったんだね!?」



飛行船に向かう際に別れたヒリューも無事であった事にミナは喜びの声を上げ、ドリスも親友が毒から完全に復活を果たした事に涙を浮かべる。一方でレナはどうしてナオがヒリューに乗り込んでやってきたのかと驚くが、彼女は簡単に経緯を話す。




――昆虫種の毒に侵されたナオは以前にレナ達が助けた森人族の3姉妹に助けられ、完全に身体が治ったらしい。しかし、ナオが目を覚ました直後に火竜が出現し、中央街では竜騎士隊の火竜の激しい戦闘が繰り広げられた。




クランハウスの守備を任されていたカツとダンゾウも竜騎士隊の協力に向かい、残った冒険者達は住民を地下の訓練場に避難させ、ナオもそれに協力していたという。しかし、そんな彼女の元に突然にヒリューは訪れた。


レナ達と別れたヒリューを誘導したのはシノの相棒である「クロ」らしく、クロが隠れていたヒリューとルイの天馬を連れてクランハウスまで引き返したという。ナオはヒリューの存在を知っていたため、ミナが可愛がっている飛竜が現れた事に驚く。


ナオは鋭い直感でレナ達の身に何か起きた事を察すると、クランハウスの人間にはレナ達の危機が迫っている可能性がある事を理由に外へ抜け出す事を告げた。最初は反対されたが、ナオの意思が固い事を知ると彼女を助けてくれた3姉妹の森人族が特別に調合した薬剤が入った袋を渡して彼女を行かせた。



『森人族が調合した特製の回復薬よ!!効果は高いから持って行きなさい!!』

『どうかお気を付けて~』

『決して無理をしてはいけませんよ』

『はい、ありがとうございます!!』

『ウォンッ!!』



小袋を手にしたナオはヒリューに乗り込むと、クロは主人の事は任せたとばかりに鳴き声を放ち、それに対してナオは頷くとヒリューと共に空へ飛ぶ。そしてヒリューは一直線に工場区へと向かい、レナ達と別れた場所に向かおうとしたとき、途中で空を飛ぶイルミナの姿を確認して後を追っていたらレナ達とも偶然に再会したらしい。





※ナオ「感覚的には60~70話ぶりぐらいの本編登場です(´;ω;`)」

 カタナヅキ「す、すまん……(;´・ω・)ワスレテタワケジャナイヨ」




※新作「初級魔術師、舐めんじゃねえよ」も投稿しました。

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