第671話 地上へ

衝撃解放インパクト――!!」

『っ――!?』



闘拳と籠手から同時に衝撃波が放たれた瞬間、天井が崩壊して瓦礫と化し、地上へと続く大穴を作り出す。運が良い事に地上からはそれほど離れてはいない場所に存在し、地上の方も建物が存在しない広場に繋がっていた事が判明する。


強烈な衝撃波によって大量の瓦礫が地上へと打ち上げられるが、それを確認したレナは円卓に伏せている皆と一緒に潜り込み、避難を行う。その後は天井が崩壊した事で大量の瓦礫が降り注ぎ、予想通りというべきか肉片を集めて再生しようとしていたジャックの元にも瓦礫は落ちてきた。


やっと身体の半分近くまで再生を果たそうとしていたジャックだったが、巨大な瓦礫が落ちてきて肉体は再び破壊され、粉々になって飛び散る。しかも次々と新しい瓦礫が降り注ぎ、飛び散った肉片を圧し潰す。瓦礫の上に更に瓦礫が降り注ぎ、恐らくは肉片の方も押し潰されているだろう。



「くっ……収まったか?」

「そうみたいですわね……レナさんの付与魔法のお陰でこの円卓は壊れなかったようですわ」

「ふうっ……死ぬかと思った」



円卓の下に隠れていたレナ達は無事だったが、ジャックの方は完全に押し潰されてしまい、仮に瓦礫を退かしても原型を留めていないだろう。レナは最後にジャックが存在した場所を振り返るが、改めて上を見上げると天井が崩壊した事で夜空を確認出来た。



「やった!!空が見えるぞ!!」

「これで後は私かレナさんの魔法で地上へ脱出が出来ますわ!!」

「よし、すぐにここを離れよう……火竜の事も気になり、あまり長居は出来ない」

「はい!!皆、円卓に乗って!!」



レナは円卓に降り注いだ瓦礫を退かすと、全員を円卓に乗せて自分はブーツに付与魔法を施し、地上へ向けて上昇させた。円卓から落ちないように全員はしがみつき、やがて外へと飛び出す。


この際にレナ達は工場区に存在したはずの火竜が消えている事に気付き、その変わりに中央街にて轟音が鳴り響き、一部が火の海と化している事に気付く。




――アガァアアアッ!!




中央街にて暴れまわる火竜の姿をレナ達は確認すると、既に火竜が動き始めている事を知る。そして火竜の周囲には飛竜が飛び回っている事に気付き、ミナが父親が既に戦っている事を知る。



「そんな!?火竜がもう……お、お父さんがっ!!」

「落ち着くんだミナ君!!君一人で出向いたところでどうしようもないんだ!!」

「火竜が城下町で暴れるなんて……悪夢ですわ」

「中央街の人たちは大丈夫なのか!?いや、それよりも大魔導士は何を……」

「ルイ様!!」



状況に理解が追いつかずにレナ達が混乱する中、ルイは聞き覚えのある声を耳にして振り返ると、そこには天馬に乗り込んだイルミナの姿が存在した。


彼女は空を飛ぶ円卓の上に乗り込むルイを見て驚くが、すぐにレナの姿を確認して事情を理解すると、簡単に現時点の状況を説明する。



「火竜は既に動き出しましたが、大魔導士は飛行船にて待機しています。すぐにレナさんを呼び出すように言付かっています!!」

「レナ君を?」

「大魔導士の作戦は飛行船で火竜に接近し、竜騎士隊が街の外まで誘導した後に最上級魔法で仕留めるつもりです!!しかし、もしも最上級魔法でも仕留めきれなかった場合、船に搭載させた魔石を誘爆させて火竜を倒せと……」

「……そういう事か」

「ふ、船を爆破!?そんな事をして大丈夫なのか!?」



ルイはイルミナの報告を聞いて全てを悟り、一方で他の者達は戸惑う。だが、レナは自分の力が必要という言葉を聞いて飛行船が存在するドッグに視線を向ける。



「大魔導士は既に飛行船で待っています!!後はレナ様の到着を待っている状態です!!」

「俺が飛行船を飛ばして火竜の元までマドウ先生を連れて行くんですか?」

「はい……最悪の場合、市街地で最上級魔法を発動させる事も考慮してください」

「そ、そんな……」



最上級魔法は竜種にも通じると言われる程の最強最大の魔法であるため、そんな魔法を市街地で発動させればどれほどの被害を生み出すのかは分からない。だが、火竜を放置すればこの王都は滅びるのは間違いなく、他に手立てはない。


既に竜騎士隊は火竜を市街地の外へと誘導させようとしているが、火竜を操作するリョフイがそれを許さず、中央街から離れる様子がない。リョフイの存在はレナ達も知っているが、まさか火竜と共に竜騎士隊と戦闘を繰り広げている事までは知らなかった。



「ともかく、飛行船へ向かってください!!まだ昆虫種と盗賊ギルドの勢力が残っている可能性もあるため、私が護衛します!!」

「クランハウスの方はどうなっている!?」

「そちらにも連絡を送り、地下に存在する特別訓練場に避難するように指示を出しています!!カツとダンゾウも既に動いているはずです、それよりも先ほど、地上の方で王子のような御方を見かけましたが……何かありましたか?」

「何だと!?アルト王子を見かけたのか!?」



イルミナの発言に驚き、レナ達もまさか地上にアルトが抜け出したのかと驚愕する。イルミナは彼等の反応に戸惑いながらも頷く。

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