第643話 オリハルコンの弾丸
「これは……オリハルコンの弾丸!?」
「ああ、さっき走っている途中でムクチのおっさんと会ったんだ!!そしたら、1発だけ弾丸が出来上がったから持っていけって……」
「ムクチさんが……」
レナはオリハルコンの弾丸に視線を向け、1発とはいえこれほど早く出来上がった事に驚く。だが、この状況で新しい武器を手に入れたのは有難く、オリハルコンの弾丸を握りしめる。
伝説の武器の素材としても使用されるオリハルコンを弾丸に作り替えた事にルイは驚くが、ここで彼女はオリハルコンの性質を思い出してレナに告げた。
「レナ君!!オリハルコンで作り上げられた武器は魔法の力を封じ込める性能があるはずだ!!実際に過去に召喚された勇者の中には魔法剣士もいたが、その勇者は聖剣を使用した時に魔法剣の効果を最大限にまで発揮していたと伝わっている!!」
「という事は……」
「ああ、きっとオリハルコン製の武器なら通常よりも多くの魔力を込められるはずだ!!」
物体に魔力を付加させると負担が大きく、並大抵の金属では壊れてしまう。だからこそ魔法耐性があるミスリルなどの魔法金属でしかレナの付与魔法に耐え切れないのだが、レナが装備しているアダマンタイト製の武器よりもオリハルコンの魔法耐性が高いらしい。
最もあくまでも魔法耐性が高いのはオリハルコンであり、単純な高度ならばアダマンタイトが上回る。だが、この状況で最も役立つのはオリハルコン製の弾丸だと信じたレナは残りの魔鉄槍に魔力を封じ込めた後、最後の作業として残りの聖属性の魔石を破壊し、オリハルコンへと注ぐ。
「
「どうしましたの!?」
「いや、一瞬で関節付与が成功した……まるでオリハルコンに吸収されるように魔力が入るんだ」
オリハルコン製の弾丸に試しにレナは付与魔法を施すと、一瞬にして魔力がオリハルコンに封じ込められ、紅色の弾丸と化す。あまりにも魔力の吸収速度が速く、伝説の聖剣の素材にも使われていたと言われても納得できる。
「よし、僕達も移動しよう。ケルベロスを止めるんだ!!」
「ですが、私達が付いて行っても対抗手段がなければ足手まといになるのでは……」
「大丈夫だ、戦う必要はない。レナ君をケルベロスの所まで送り込むんだ!!」
ルイの言葉に他の仲間達も頷き、レナ達は移動を開始した。既にケルベロスは中央街を移動し、王城へと近づく。その様子を見てルイは笛を取り出し、不思議な音色を鳴らす。
中央街には金色の隼のクランハウスも存在し、ルイが吹いた笛の音に反応したのか、クランハウスの方角から天馬が駆けつけてきた。その数は3頭は存在し、ルイの元へと降り立つ。
「「ヒヒンッ!!」」
「良かった、来てくれたか……よし、レナ君はそこの飛竜に乗ってくれ!!他の者はこの天馬に乗って援護を行う!!異論はないね!?」
「はい!!よろしく、ヒリュー!!」
「シャアアッ!!」
ルイの言葉にレナはヒリューに背中に乗り込み、その後にヒリューをここまで連れてきたアルトが続こうとした。だが、彼よりも先にミナが乗り込む。
「レナ君、僕も行くよ!!」
「えっ……ちょ、ちょっと!?」
「シャウッ!!」
ヒリューとは幼いころからの付き合いであるミナが背中に乗り込むと、アルトは慌てふためいている間にヒリューは上昇してしまう。その光景を見てアルトは唖然とするが、今は彼に気を遣っている暇はない。
飛竜の操作はミナに任せ、レナは二つの魔鉄槍を付与魔法で操作して自分達の後方へと浮上させる。ケルベロスが辿り着くまでにオリハルコンの弾丸に出来る限りの魔力を注ぎ込む必要があり、聖属性の魔石を破壊する。
「ミナ、頼んだよ……出来る限り近づいて欲しい」
「分かった、僕に任せて!!」
「よし、我々も続くぞ!!」
「これ、僕が乗っても大丈夫かな……潰れたりしないよな?」
「ヒヒンッ……」
ルイの言葉に他の者も天馬に乗り込む中、デブリは困った様子で自分の元に訪れた天馬に呟き、天馬の方も不安そうな表情を浮かべる。だが、その間にもルイはレナ達を乗せた飛竜はケルベロスへと接近していた。
ケルベロスの周囲には既に傷だらけの飛竜の群れが飛び回り、どうにか時間を稼業とするが、やはり飛竜がケルベロスを恐れて近づけないため苦戦している様子だった。マドウとイルミナが定期的に魔法を放ってケルベロスの注意を引くが、ケルベロスの方は三つの頭を利用して邪魔者を振り払う。
『オアアアアアアッ!!』
おぞましい咆哮が王都中に響き渡り、心なしか最初の時よりもケルベロスの巨体が更に膨れているように見えた。その事からレナは本当に自分の魔鉄槍で倒す事が出来るのかとおもったが、ここまで来て弱気になる暇はなく、覚悟を決めて背後からケルベロスに向けて魔鉄槍を放つ。
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