第605話 まさかの助っ人

「貴方達は……まさか、盗賊ギルド!?」

「ふん、半分は正解だ」

「おい、余計なことを言うな!!」



ドリスの言葉に魔術師の一人が答えると、すぐに他の者が叱りつける。その返答に対してドリスは訝し気な表情を浮かべるが、ともかく自分を狙って攻撃してきた時点で彼等が敵だと認識した。


何者なのかは分からないが、盗賊ギルドに関係する人間である事は間違いなく、ドリスは両手に作り出した円盤型の盾を構えると魔術師達は同時に攻撃を行う。



「「「ファイアボール!!」」」

「芸がありませんわね!!」



正面から同時に複数の火球が撃ち込まれると、ドリスは両手を差し出して氷盾で防ごうとする。その光景を見た魔術師の一人が彼女の行動に勝利を確信したように告げた。



「馬鹿め、そんなちゃちな氷で我々の魔法が受け止められると思っているのか!?」

「ええ、その通りですわ!!」

「何!?」



ドリスは自分の前方に出現させた2つの氷塊の円盤を高速回転させると、正面から放たれた複数の火球を次々と弾き返す。まともに衝突していれば火球が爆発して盾が破壊されただろうが、回転の力を加える事で攻撃の軌道を逸らし、別方向へと受け流す。


魔術師達が放った火球はあらぬ方向へと吹き飛ばされ、ある程度の距離を移動すると消えてしまう。砲撃魔法の中でもファイアボールは威力は強いが射程距離は意外と短く、ドリスは隙を突いて魔術師達に攻撃を行おうとした。



「今度はこちらの番ですわ!!火炎槍!!」

「くっ!?スラッシュ!!」

「馬鹿、火属性の魔法に風属性の魔法は……うわぁっ!?」




ドリスが放った火炎の槍に対して一人の魔術師が風属性の魔法で迎撃しようとするが、火属性は風属性を取り込む性質を持つため、ドリスの火炎槍は相手の魔法を打ち破って魔術師の一人の衝突した。


悲鳴を上げて魔術師はローブに燃え移った火を振り払うが、すぐに他の魔術師の中で水属性を扱える人間が消火を行う。



「ぎゃああっ!?あ、熱いいっ!?」

「愚か者が!!情けない声を上げるな、スプラッシュ!!」

「ちぃっ……小娘め、調子に乗るな!!」

「別に乗っていませんが……貴方達、実戦不足ですわね」



複数人で挑んできながら連携も碌に取れていない魔術師達に対してドリスは少し呆れたように答えると、魔術師達は彼女の言葉に怒りを抱き、同時に杖を構えて別々の属性の砲撃魔法を放つ。



「おのれ、小娘!!スラッシュ!!」

「ファイアボール!!」

「サンダーランス!!」

「おっとと……狙いが雑ですわよ!!」



ドリスは次々と放たれる砲撃魔法に対して相手が魔法を発動させる前に動き、次々と回避を行う。魔術師であるドリスだが、彼女の反射神経と運動能力は低くはなく、普段から魔法学園で身体を鍛える訓練も行っているので避けるだけならば何ともなかった。


魔術師達は自分の砲撃魔法を回避するドリスを見て苛立ち、碌に魔力の消費も考えずに次々と攻撃を行う。その様子を見てこのままドリスは彼等に魔法を無駄内させて魔力が枯渇するまで逃げ切ろうとするが、ここでドリスは異様な疲労に襲われて足をも連れさせてしまう。



「あぐっ!?」

「倒れた、今だ!!」

「喰らえっ!!」

「我等を愚弄した事、後悔させてやる!!」



ドリスもこれまでの戦闘で魔力を大幅に消耗し、体力の限界が近づいていた事に気づかなかった。転倒してしまった彼女に対して魔術師達は同時に杖を構えて攻撃を行おうとしたとき、彼等の背後から声が響く。



「サンダーランス!!」

「ファイアボール!!」

『ぐああっ!?』

「えっ……!?」



魔術師達の背後から電撃と火球が同時に放たれ、完全に油断していた魔術師達の身体が空中へと吹き飛ばされる。


その様子を見てドリスは目を見開き、いったい何が起きたのかと視線を向けると、そこには予想外の人物が立っていた。



「ドリスさん、無事だべか!?」

「ちょ、チョウさん!?それに貴方は……」

「くっ……さっさと立て!!」



ドリスを救ったのは彼女の魔法学園の魔法科の生徒であり、クラスメイトの「チョウ」だった。対抗戦では共に戦った仲でもあり、雷属性の魔法を得意とする少年である。


そしてドリスを救ったもう一人の少年はかつてレナに二度に渡って決闘を申し込んだ「シデ」だった。彼が自分を救ってくれた事にドリスは驚くが、二人はドリスの元に向かうとチョウが手を貸す。



「ドリスさん、大丈夫だべか!?」

「ちょ、チョウさん……助かりましたわ。それに貴方も……ありがとうございます」

「うっ……礼なんか言うな、それよりあいつは何処だ!?」

「あいつ?あいつとはレナさんの事ですの?」

「そうだ、レナだ!!レナは何処にいる!?」



どうにかチョウの手を借りてドリスは立ち上がると、シデはレナの所在を確認する。シデの言葉にドリスは戸惑うが、そもそもどうして彼とチョウがここにいるのか気になったドリスは質問を行う。






※やった!!豆腐屋の跡取り息子のチョウ君が着てくれました!!勝ったな(確信)

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