第498話 ドリスの魔力感知
――翌日、レナ達は時間通りに煉瓦の大迷宮へ再び訪れていた。心配されていたドリスの体調に関してだが、一日休んだら彼女はすっかりと元気を取り戻し、問題なく煉瓦の大迷宮へと挑む。今回の面子は昨日と変わらず、到着早々にレナ達は早速動こうとしたが、その前にドリスが皆を引き留めた。
「皆さん、少し待ってください」
「あら~?」
「ん?どうしたドリスの姉ちゃん、トイレか?ならあたし達はあっちの方にいってるから早く済ませて……」
「いえ、違いますわ!!というか、コネコさんも女の子なんだからもう少し言葉を慎みなさい!!そこはちゃんとお花を摘みに行くといいなさい!!」
「ん?こんな場所に花なんてないだろ?」
「コネコちゃん、そういう意味じゃないから……」
ドリスの言葉にコネコは首を傾げるが、改めてドリスは咳ばらいを行うと、大迷宮に挑む前に昨日の内に覚えた魔力感知の事を話す。
「皆さんにお伝えしておくことが実はありますの。私とレナさんは昨日の内にルイ団長とイルミナ副団長から素晴らしい技術を教えてもらいましたわ!!」
「え~それは凄いわね~」
「知ってるよ、魔力感知とかいう奴だろ?」
「生物の魔力を感じ取る能力、だよね?」
「ええ、私とレナさんは昨日の内にその力を身に付ける事に成功しましたわ!!」
「それは知ってるけど……ドリスの場合はあんまり使わないように注意されたんでしょ?」
魔力感知を覚える訓練の際、ドリスは倒れたという話は他の人間もレナから聞かされているため、ナオは心配した表情を浮かべる。だが、そんな親友の心配を他所にドリスは自慢気に答えた。
「ええ、確かに私は訓練中に倒れたのは認めます。しかし、ただ倒れたわけではありませんわ。意識を失いかけましたが私はあの御方の魔力を感知する事に成功しましたもの」
「成功?一体誰の……」
「この国で一番の魔術師、といえば分かりますわね?」
「兄ちゃんの事か?」
「レナ君?」
「老師の事かしら?」
「いえ、違いますわ。レナさんもサブ魔導士も優れた魔術師なのは確かですけど、私が言いたい人物はマドウ大魔導士ですわ!!」
ドリスの言葉にミナとコネコは真顔でレナに顔を向け、ヒリンは自分の死であるサブ魔導士の事かと微笑む。ミナとコネコにとっては最高の魔術師と言われれば真っ先にレナを思いつき、ヒリンの場合は敬愛する師匠を思い浮かべるのは当たり前の話だったが、そんな3人にドリスは申し訳なさそうに否定する。
ちなみにナオとデブリの場合は普通にマドウ大魔導士の事を思い浮かべたが、他の3人が別の魔術師の名前を出してきたので「あれ?マドウ大魔導士尊敬されてないのかな?」と考えてしまい、口がはさめなかった。
「なるほど~確かに老師のお師匠様なら納得だわ~」
「マドウ大魔導士……ああ、あの爺ちゃんか。そういえば魔術師だったな、あの爺ちゃん」
「コネコさん、それはいくら何でも失礼すぎますわ!!私達の通う魔法学園の学園長ですよ!?」
「いや、だって……あんまり魔法を使うところ見た事ないから忘れてたんだよ」
仮にも自分が通う魔法学園の学園長の事を忘れていたコネコにドリスは衝撃の表情を浮かべるが、一旦落ち着くと改めてドリスは魔力感知を覚えた時の出来事を話す。
「こほんっ……話を戻しますけど、実は私が魔力感知を始めて使用したとき、一瞬とはいえ、かなりの範囲の魔力を感じ取ることが出来ましたの。そしてその中でもひときわ大きな魔力を感知したとき、私は直観で気づきましたわ。この魔力の正体はマドウ大魔導士である事を!!」
「でも、マドウ大魔導士は城に滞在しているはずだよ?クランハウスとはかなり距離が離れているはずだけど……」
「ええ、そうですわ。残念ながらレナさんと違って私の魔力感知は長時間の維持は出来ません。しかし、そのかわりに範囲にかんしてはきっとレナさんよりも広いと思いますわ!!」
「そういえばルイさんも僕と同じようにとか言ってた気がするけど……」
魔力感知の範囲と持続時間に関しては個人差が存在し、例えばルイの場合は範囲は30メートルもあるが、持続時間は一瞬か長くても数秒しか維持できない。一方で副団長のイルミナは10メートル圏内の魔力しか感じ取れないが、ルイと異なって集中力を維持すればいつまでも持続させることが出来る。
レナの場合は最大で半径100メートル圏内の魔力を感知する事が出来るが、範囲を伸ばせば伸ばすほどに高い集中力を必要とする。但し、範囲を縮めれば何かを行動しながらでも魔力感知を維持できた。だが、ドリスの場合は効果は一瞬であるが範囲に関してはレナよりも更に遠くの魔力を感知する事が出来るらしい。
「私が昨日倒れた後、無理をしない程度に実は魔力感知の練習も行っていましたの。その結果、最大で1キロまでは遠くに離れた人物の魔力を感知できることが分かりましたわ!!」
「1キロ!?それは凄いな!!」
「でも、ドリスの場合は魔力感知を発動すると負担が大きいんじゃ……」
「その点も問題ありませんわ。範囲を狭めて使用する分には特に負担もかかりませんし、昨日倒れたのは無理に短時間で何度も魔力感知を試みたのが原因みたいで、今は完璧に使いこなせますわ」
「そうだといいんだけど……」
「けどさ、それが本当なら凄い事じゃないのか?これなら一発でゴブリンキングの居場所も分かるだろ?」
「そうですわね、ゴブリンキング程の存在なら魔力も持て余しているでしょうし……早速試してみますわ!!」
「あんまり無理はしない方がいいと思うけど……」
意気揚々にドリスは覚えたての魔力感知を試すため、まずは集中するために瞼を閉じた。その瞬間、彼女の雰囲気が一変してレナ達は緊張した表情で見守る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます