第380話 金色の隼の報酬
「何だこれ……金貨、いやメダルか?」
「へえ、綺麗だな。高く売れそうだな……あ、分かった!!城から抜け出すときに盗んできたんだな!?流石は兄ちゃん、やるぅっ!!」
「え、そうなのレナ君!?」
「そ、それはまずいぞ!!ちゃんと取ってきた場所に戻してこい!!」
「いや、違うって……これはアルト君から貰ったんだよ」
メダルを受け取った経緯をレナは他の者に伝えると、ダリルはメダルを確認してすぐに思い出したように驚きの声を上げる。
「そ、そうだ!!思い出したぞ、こいつは確か金色の隼の
「アルト王子がどうしてそんな物を……」
「何か、後ろ楯とかどうとか言っていたけど……でも、アルト君によるとこれを渡せば金色の隼の人と取引が出来ると言ってたけど」
「そうか!!金色の隼に力を借りるんだな!?」
「確かに金色の隼の方々なら戦力としては申し分ないし、兵士ではないので王都を離れる事が禁じられていませんわね!!」
レナの言葉を聞いてダリルは希望を見出した表情を浮かべるが、すぐに別の問題を思い出して頭を抱えた。黄金級冒険者の力を借りるにしても、冒険者として雇う以上は報酬を用意しなければならない。
「い、いや待て……金色の隼は確か黄金級冒険者で構成された組織だったな?なら、まずいぞ……彼等を雇うにはお金が必要だ」
「金?そんなの、この間手に入れたオリハルコンのイヤリングを売った金で雇えばいいじゃん」
「そ、それはそうだが……実を言うとな、ムクチの奴が新しい屋敷が出来上がったらここは鍛冶師専用の工房にしたいと言い出してな、その準備のために色々と金を使って……今は半分ぐらいしかないんだ」
「はあっ!?何だよそれ、あんなのにあったのにもう半分しかないなのか!?」
「し、仕方ないだろうが!!それにレナの新しい装備を整えるために最新式の魔炉を用意したり、新しい屋敷の方の建設も進めるために色々とあったんだよ!!」
「じゃあ、どうやって金色の隼の方々を雇いますの?彼等を雇う以上、半端な値段では引き受けないと思いますけど……」
ドリスの言葉に全員が黙り込み、確かに黄金級冒険者を雇い入れる場合は相当な金額を必要とするだろう。しかも今回は滅ぼされかけている街の救出のため、ホブゴブリンの軍勢との戦闘、更にイチノまで彼等の天馬と馬車で移動しなければならない。
金色の隼が天馬をどれだけ所持しているのかは不明だが、竜騎士隊よりも多いとは考えにくく、イチノまで移動する人数は限られるだろう。
そう考えるとやはり少ない人数でホブゴブリンの軍勢に対抗するためには黄金級冒険者の彼らの力を借りるしかない。だが、そのために金色の隼にどれだけの報酬を用意しなければならないのかは分からなかった。
「し、仕方ない……こうなったらあたしがずっと貯めてきた豚さん貯金箱を壊すしかないのか……!!」
「だ、駄目だよコネコちゃん!!あんなに大切にしていたのに!!」
「いいんだ、兄ちゃんのためなら……!!すまねえ、トンコツ!!」
「ちょ、ちょっと待って!!どうして僕にトンカチを向けるんだ!?僕は貯金箱じゃないぞ!!」
「……落ち着いて、まずは今皆で支払えるだけの金額を計算する必要がある」
涙目でデブリに大してトンカチを振り上げようとするコネコをシノが抑えつけて宥めると、ひとまずは全員が用意出来る金額を提示する。
「俺は今まで色々と貯金してたから……えっと、金貨50枚ぐらいなら支払える」
「あたしの豚さん貯金箱も結構金入ってるぞ!!まあ、今まで銅貨か鉄貨ぐらいしか入れてないけど……」
「ぼ、僕も貯金箱持ってくるよ!!多分、金貨2枚ぐらいはあるから!!」
「ぐうっ……こんな事ならこの間の報酬を使わずにちゃんと貯金していれば良かった。ごめん、僕の方は多分銀貨3枚ぐらいだ……」
「私もお母様に頼めば金貨30枚ぐらいは用意して貰えますわ!!それに私が個人で貯金していたお金なら金貨10枚、合計で40枚は払えます!!」
「それなら僕も金貨5枚ぐらいならあると思います!!」
「私の方は殆ど貯金はない、実家の方に送っていたから……財布に銅貨が20枚ぐらい」
「という事は……皆で合わせるとだいたい金貨100枚ぐらいか。結構、持ってるんだなお前等……」
ダリルを除いた全員が金を集めた場合、金貨100枚程度は支払える事が判明した。特にレナはミスリル鉱石の件で普段から高い給金を受け取っていた事が幸いした。
だが、ここでレナは他の者達に申し訳なさそうに尋ねる。ミナ達の気持ちは有難いが、今回の件は彼女達とは無関係のため、本当にお金を貸して貰ってもいいのかと問う。
「でも、皆本当にいいの?今回のお金、貸してもらっても返す事が出来るか分からないのに……」
「今更何を言ってんだよ兄ちゃん!!」
「そうだよ、水臭い事言わないで!!」
「私達の友情はこんな事で失いませんわ!!」
「困った時はお互い様……ここにいる皆、レナにはよく世話になっている」
「むしろ、これだけ世話になったのに銀貨3枚しか支払えない僕って……なんか、すまん」
「き、気にしないでいいですよ……それは仕方ありませんから」
「皆……ありがとう」
全員の言葉にレナは感動して瞳を潤ませるが、今はお金を用意するのが大事であり、最後にダリルにいくら支払えるのかを尋ねた。
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