第358話 大将戦に相応しい戦闘
「そ、そんな……今のも耐えるなんて凄いです。でも、もう身を守る物はありませんよね?」
「くっ……」
「降参してください!!貴方は立派に戦いました、だけどこれ以上続ければ……」
レナの傍にはもう身を守る石壁は存在せず、一方でヘンリーが立つ西側の陣地には多数の無傷の石壁が健在だった。状況的には圧倒的にレナの方が不利ではあるが、それでも彼に降参する意思はない。
「断る……この程度で諦めないよ」
「ううっ……この分からずやっ!!」
ヘンリーは震える腕で魔剣を構えると、再び砲撃魔法を発動させようとする。仮にレナが魔銃を装備していたのならば反撃する事も出来たが、生憎と今回の試合には魔銃とスケボだけは持参していない。
理由としては魔銃では殺傷能力が高く、下手に使用すると相手を殺しかねない。スケボに関しては持ってくるべきだったかもしれないが、闘技台は結界で隔離されているため、スケボで拘束移動を行おうとしても結界に阻まれて動きが制限されるので持ってきていなかった。
「これで終わりです!!アイスボール!!」
「
今度は氷属性の砲撃魔法を発動させたヘンリーは、杖先から直径が2メートル近くも存在する氷の塊を生み出す。それを見たレナは闘拳に付与魔法の重ね掛けを行い、正面から打ち砕く。
迫りくる氷塊に対して地面を勢いよく踏み込み、闘拳を突き出す。その結果、氷塊は闘拳が衝突した瞬間に砕け散り、周囲に氷の破片が散らばる。自分の魔法を正面から破壊したレナにヘンリーは慌てふためき、次の魔法を発動させようとした。
「そ、そんなっ!?この魔法でも駄目なんて……ううっ、けどこれは防げないはずです!!」
「なっ!?」
次の砲撃魔法を発動させようとしているのか、魔剣を構えて今度は「黄色の魔法陣」を生み出したヘンリーにレナは驚愕する。彼は先ほどから矢継ぎ早に魔法を繰り出しているが、普通の魔術師ならば既に魔力を失って倒れてもおかしくはない程の魔法を使用している。
砲撃魔導士が扱う「砲撃魔法」は威力が大きい分に連発には不向きとされ、魔力の消耗量が高い事から本来は連続して使用できる代物ではない。しかし、ヘンリーはまるで一切の疲れも見せずに次々と魔法を生み出していた。恐らくは常人よりも魔力容量が桁違いに高いと考えられた。
(雷属性の砲撃魔法が撃たれたら今の装備じゃどうしようもできない……どうする!?)
ヘンリーが生み出そうとしている砲撃魔法が魔法陣の色合いから「雷属性」である事を見抜いたレナは咄嗟に右腕の闘拳に視線を向け、即座に金具の部分を外して射出させる。
「サンダーランス!!」
「させるかっ!!」
魔法陣から雷撃が放たれるが、先にレナの右手から発射された闘拳と衝突し、闘技台に電流が迸る。結果的には闘拳が雷撃を防いだ事でレナは無事だったが、電撃を帯びた闘拳は床に落ちてしまう。
判断が遅ければ自分が黒焦げになっていたと知ったレナは冷や汗を流し、その一方でヘンリーの方は悉く自分の攻撃を防ぐレナに危機感を抱いた様に顔色を青くした。
「そ、そんな……これでも駄目だなんて、信じられない」
「流石に今のはびびったよ……けど、次はこっちの番だ!!」
「ひいっ!?」
レナは左手の籠手に意識を集中させ、掌を構える。距離はまだ遠く、精度も高いとは言い切れないが、現時点のレナが扱える遠距離攻撃を仕掛けるしかなかった。
「
籠手に付与魔法の三重掛けを施す事で紅色の魔力を増幅させ、レナはヘンリーに狙いを定めると一気に魔力を開放させて反撃を行う。
「
「ひいっ!?マジック・シールド!!」
籠手から強烈な衝撃波が放たれ、その威力は西側の陣地の手前に存在した石壁を全て粉砕してヘンリーに襲いかかる。しかし、咄嗟に危険を察したヘンリーは魔剣を前に構えると緑色の魔法陣を発動させ、衝撃波を防ぐ。
シュリが使用していた結界魔法もヘンリーも扱えたらしく、衝撃波は魔法陣によって阻まれてしまい、10秒ほど経過すると魔法陣は解除された。ヘンリーは安堵のため息を吐くが、一方でレナの方は仕留めきれなかった事に悔しく思う。
(やっぱりこの子、只者じゃない……こんなに魔法を使用しているのに全然疲れている様子がない)
ヘンリーは先ほどから魔法を多用しているにも関わらずに汗一つ流さず、掠り傷一つも負っていない。一方でレナの方はどうにかヘンリーの攻撃を防ぐ事に成功しているが、彼の砲撃魔法を一度でも受ければ戦闘不能は免れない状況だった。
このまま戦い続けてもいずれは砲撃魔法の餌食になると判断したレナは、危険を承知でヘンリーに向かう事にした。まずは地面に落ちている闘拳を回収するために動こうとした時、ヘンリーは目元を塞いだ状態で魔剣を突き出す。
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