第350話 対抗戦第三試合〈ヒリンVSミナ〉
「コネコちゃん、凄いよっ!!よく頑張ったね!!」
「わわっ……恥ずかしいから止めてくれよミナの姉ちゃん」
「見事な足払いでした。ですが、最後の技は少々反省点もありますね」
「それでも勝ちは勝ちだ!!うおおっ、頑張ったなコネコ!!」
「コネコ、よく頑張ったな」
「へへっ……後は任せたぞ兄ちゃん!!」
戻って来たコネコをミナは両手で持ち上げると、ナオとデブリも嬉しそうに頷き、コネコも照れ臭そうな表情を浮かべる。そして最後にレナはコネコの元に近付くと、右手を差し出す。
差し出された右手を見てコネコは笑みを浮かべ、二人は握手を行うと、レナはブラン達の方へ向き直る。まさか自分達が二連敗もするとは思っていなかったのか彼等は悔し気な表情を浮かべ、治療を受けているシュリとブランに至っては塞ぎ込んでしまう。
『……すまない』
「油断した、なんて言い訳にもならないか」
「たく、面倒を賭けさせやがって」
「あ、あのあの……やっぱり、あの人たちも強いんじゃ……」
「そうね~確かに私達も侮りすぎてたわ~」
ツルギもシュリも敗北したとはいえ、決して勝てない相手ではなかった。しかし、2人は負けた事が事実のため、ブラン達には後がなかった。そんな彼等に対してイルミナは声を掛ける。
「一応は忠告しておきますが、今回の対抗戦はマドウ学園長とサブ魔導士の意向によって勝敗の数に関係なく最後の選手まで戦って貰います。ですが、総合的な勝敗の数によって今回の対抗戦の勝利は決まる事を忘れないでください」
「分かってるよ……次の試合は負けられないという事はな」
「ううっ……緊張します」
イルミナの言葉にブラン達は余裕もなくなり、実質的に次の試合に敗北すれば彼等は魔法科の生徒に敗退する事を意味した。まさかツルギもシュリも敗北するとは思わなかった分、ブランも頭を抱えた。
次の試合に関しては既にミナは闘技台に上がって準備運動を行い、既に対戦相手は決まっていた。そのミナの姿を見てブランは考え込み、彼の中ではレナを除けば彼女が厄介な相手だと考えていた。
(あいつは確かジオ将軍の姪だな……相当な槍の使い手だと聞いている。となると、俺が出向くしかないか……)
ブランとしては自分に恥を掻かせたレナに対戦を申し込みたいが、次に敗北すれば後はないため、彼はイルミナに試合に出る事を伝えようとした。だが、そんな彼をヒリンが引き留める。
「次の試合、私が出るわ~」
「ああっ!?何を言ってるんだお前、次は俺が……」
「私の事、信用できないのかしら~?」
「うっ……いや、そういうわけじゃないけどよ」
ヒリンがブランを真っすぐに見つめると彼は何も言い返せず、彼女の「魔法」の事を知っているだけにブランも下手な事は言えない。
基本的には仲間達の中では自分が一番強いと思っているブランだが、このヒリンだけは絶対に敵に回したくはないと考えており、下手に戦闘に陥れば油断すれば命を落としかねない。それほどまでにブランの中ではヒリンの存在が恐ろしくもあったが、イルミナはヒリンが出場するという話に戸惑う。
「貴女も戦うのですか?」
「あら~何か不都合でもありますか~?」
「いえ、こちら側としては問題はありませんが……」
「どうしたというのだ?イルミナよ、何が気になるのか?」
「いえ、その……事前の資料によると、彼女の称号は治癒魔導士では……」
「イルミナよ、問題はない。ヒリンは優秀な儂の弟子じゃ、不要な心配をするな」
「うふふ、御師匠様嬉しいわ~」
「う、うむ……期待してるぞ」
イルミナはヒリンの言葉に困った表情を浮かべ、サブに確認を取るように視線を向ける。本来、治癒魔導士は戦闘に向かない職業なので基本的には攻撃系統の魔法は殆ど覚えない。それなのに彼女を試合に出場させても大丈夫なのかと尋ねると、サブは問題ない事を認める。
師の許可が下りたヒリンはサブに微笑みを浮かべると、普段の彼ならば綺麗な女子を相手にすれば鼻の下を伸ばすところだが、何故か今回は冷や汗を流してあからさまに顔を逸らす。その反応にマドウは驚き、イルミナは訝しむが本人が問題というのならば彼女は止める事は出来ない。
「では闘技台に上がってください。対抗戦第三試合を行います!!」
「よいしょっと……うふふ、よろしくお願いします~」
「え?あっ……よ、よろしくお願いします!!」
丁寧にお辞儀されたミナは慌ててヒリンにお辞儀を行うと、彼女の姿を見てレナ達も驚く。今までの対戦相手は挨拶どころかレナ達の事を見下したような態度を取っているが、ヒリンの方は丁寧に対応を行う。
「ミナさんの事はこの学園に来てから色々と噂に聞いてるわ~お手柔らかにお願いします~」
「そ、そうなんだ……けど、勝負事だと僕は手加減できないから、ごめんね」
「いえいえ~お気になさらずに~」
「なんかおっとりした姉ちゃんだな……全然強そうに見えないぞ」
「いや、あの歩き方……少し、気になります」
「ナオもか?僕もあの女、油断できない気がする……不思議だな」
「え?そうなの?」
ヒリンに対してデブリとナオは何か気になるのか眉を顰め、ミナの方も緊張した面持ちで彼女と向き合う。レナとコネコは別にヒリンに怪しい所はないように思えるのだが、直後に彼女は全身にまとっていたローブを脱ぎ捨てた瞬間、全員が驚愕した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます