第298話 カツの実力
――時刻は戻り、金色の隼のカツと対面したレナ達は3人同時に攻撃を仕掛けた。三方向から同時に攻撃を仕掛け、カツの隙を突いて逃走する手段を探すつもりだったが、カツは仁王立ちで3人の攻撃を受けた。
「せいやぁっ!!」
「おらぁっ!!」
「はあっ!!」
『……効くかぁっ!!』
デブリは掌底を胸元、ナオは鉄格子を頭部、レナはブーツに付与魔法を施して脇腹に打ち込むが、カツは正面から受け止める。仮に相手が赤毛熊であろうと倒れる程の衝撃が走ったはずだが、カツは攻撃を受け切って逆に弾き返す。
攻撃を仕掛けたレナ達の方が後退してしまい、全員が驚愕の表情を浮かべる。その一方でカツの方は首を鳴らす動作を行い、地面に突き刺さった自分のランスを回収する。3人の攻撃をまともに受けても損傷はないらしく、彼は大盾とランスを装備するとレナ達に振り返る。
『どうした?これで終わりか?』
「ぼ、僕達の攻撃が効かないのか!?」
「くっ……これが金色の隼の実力」
「……強い」
カツが余裕そうな態度で答えると、レナ達は冷や汗を流す。正体に気付かれないように全員が本気で戦えない状態とはいえ、同時に攻撃したのにびくともしないカツの「防御力」と「耐久力」に恐れを抱く。
一方でカツの方はレナに蹴り込まれた脇腹の部分に視線を向け、攻撃を受けた際の違和感に疑問を抱き、レナのブーツに視線を向ける。攻撃を受けた際に異様なまでの「重さ」を感じた彼はレナが装備しているブーツに何か秘密があるのかと考えた。
(さっきの攻撃、このガキが一番重かったな……それにしてもこいつらなんで姿を隠してんだ?まあ、盗賊なら姿を隠すのは当たり前か……)
カーネの屋敷に侵入してきた時点でカツはレナ達の事を盗賊の類だと判断し、いくら気に入らない雇い主であろうと護衛の仕事のためにカツは3人を捕まえるために行動する。
武器を取り戻したカツは今度はランスを構え、最初に体格が大きく最も狙いやすい事からデブリを攻撃対象と決めた。
『手加減はするが、死ぬなよ!!刺突!!』
「ぐぅっ……うわぁっ!?」
「なっ!?」
「そんなっ!?」
兵士から奪った大盾を構えたデブリに対してカツはランスを吐き出した瞬間、大盾が凹む程の強烈な衝撃がデブリに襲いかかり、100キロを超えるデブリの巨体が吹き飛ぶ。
その光景を見てナオとレナは助けに向かおうとしたが、続けてカツは二人にも攻撃を仕掛け、救援を阻止した。
『乱れ突き!!』
「くっ!!」
「早いっ!?」
ミナも扱う戦技をカツは発動させ、残像によってランスが何本にも増えたかのように攻撃を仕掛ける。しかし、普段からミナと組手を行っているレナはランスの軌道を呼んで回避に成功し、ナオの方も持ち前の動体視力で攻撃を見切って回避した。
『避けたか、中々やるな……こいつは久々に楽しめそうだ!!』
「いい加減に……してください!!」
「だああっ!!」
ナオとレナは同時にカツに近付くと、先にナオは空中に跳躍して回転を加えながら鉄格子を頭部に振り下ろす。一方でレナの方は体勢を屈めて大盾の方に手を伸ばし、直に触れて付与魔法を施して大盾の重量を増加させようとする。
しかし、二人の攻撃を呼んでいたようにカツは後方に下がると攻撃を回避した。逆に無褒美になった二人に対してランスと大盾を使って同時に攻撃を行う。
『甘いんだよ!!』
「あぐぅっ!?」
「がはっ!?」
空中にナオにランスを薙ぎ払い、レナに対して大盾を衝突させて二人を吹き飛ばすと、カツは勝利を確信した様に追撃を中断した。だが、まともに攻撃を受けたかのように思われたレナとナオだが、地面に倒れる事もなく着地する。
「くっ……大丈夫ですか?」
「うん、どうにかね……」
「いててっ……くそ、なんて攻撃だ」
『おいおい、まだ立つのかよ?』
3人が同時に立ち上がったのを見てカツは素直に驚き、自分の攻撃を受けてもまだ戦意を保つレナ達に素直に感心する。
だが、このまま戦闘を続けたとしても誰が見てもレナ達にに勝ち目はない事は明白であり、カツは最後通告を行う。
『もう諦めろ!!お前等じゃ俺には勝てない、それは分かってるんだろ?だいたいさっきから変な戦い方しやがって……いったい何の真似だか知らないが、そんなへっぴり腰で俺に勝てると思ってるのか?』
一流の冒険者で同時に武芸者でもあるカツはレナ達が先ほどから戦い方に違和感を感じ取り、理由は知らないが3人が本気で戦っているようには見えなかった。決して手加減して戦っているわけではなさそうだが、何故か使い慣れない武器や道具を利用して戦う人間のような動きをしているように感じられた。
レナ達の方もカツの言葉を聞いて互いに顔を見て頷きあい、そしてデブリは凹んだ大盾を捨て、ナオは鉄格子を手放し、レナは身体を解すように腕を回す。3人の雰囲気が変化した事に気付き、カツは大盾を身構える。
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