第249話 我等、学園隊!!

「では、出発前に改めて今回の集団パーティの確認を行いますわ。まずは前衛としてナオ、ミナさん、デブリさんに任せますわ」

「分かった」

「任せてっ!!」

「どすこいっ!!」



前衛役は格闘家のナオ、槍騎士のミナ、力士のデブリが担当を行い、基本的にこの3人が敵を食い止める役割を担う。特に力士のデブリは盾役としての役目を持ち、重要な立場だった。



「続けて中衛はコネコさんとシノさん!!御二人には自己判断で前衛の支援と、場合によっては交代を行って貰います」

「疲れた時は何時でも言えよ、あたしがすぐに変わってやるから」

「支援は任せて」



前衛と後衛の中間的な立ち位置として今回は「中衛」を設け、前衛が疲れた時やあるいは戦闘続行ができない程に負傷した場合に交代する役割を持つ。勿論、前衛だけではなく後衛の援護も忘れず、敵が背後から現れた時は即座に対応をできる人材でなければならない。


暗殺者と忍者である二人は全職業の中でもトップクラスの速度を誇り、敢えて前衛ではなく中衛を任せたのは全体の支援を頼むためだった。そして後衛として魔術師でドリスとレナが行う。



「後衛として私が後方支援を行い、殿はレナさんに任せます。もしも大型の魔物かあるいは物理攻撃が聞きにくい魔物が現れた場合、私達が対処しますわ!!」

「殿は俺に任せて、皆は前方の敵だけに集中して戦ってね」



ドリスは後衛として後方支援を行うのに対し、レナの場合は後方に現れた敵の対処や場合によっては前衛の援護に向かう役目を担う。基本的に接近戦でこそレナの付与魔法は真価を発揮するのだが、魔銃や弾腕を使用すれば後ろからでも援護は十分に行える。


また、荒野の大迷宮と違ってこれから挑むのは迷宮であり、敵がいつ出現するのかも分かにくく、後方の警戒も怠る事は出来ない。現在の戦力ではこれが万全の布陣だと判断したドリスは早速魔法陣に乗り込む。



「では、移動しましょう。何としても私達はブロックゴーレムを見つけ出し、オリハルコンを手に入れましょう!!」

『お~!!』



自然とドリスの言葉に全員が従い、どうやら天性のリーダーシップで全員を引き連れて彼女は兵士に頼んで魔法陣を発動してもらう。


相手が少年と少女だけの集団に兵士達は大丈夫かと心配するが、魔法学園の生徒は無条件で大迷宮に挑ませるようにヒトノ国側から言いつけられているので彼等は止められない。



「では、魔法陣を発動させるぞ?準備はいいか?」

「あ、ちょっと待ってくださいまし!!そういえば肝心なことを忘れていましたわ」

「え?何々?」

「私達の集団の名前を決めていませんわ!!」

「えっ……名前?」

「そんなのどうでもいいんじゃ……」



魔法陣を発動する寸前でドリスは重大な事を思い出したように驚愕の表情を浮かべながら振り返ると、真面目な顔で答える。


いったい何を言い出すのかとレナ達はドリスの発言に呆気に取られたが、ドリスによると名前を付ける事は大切な事らしく、わざとらしくため息を吐きながら説明を行う。



「いいえ、これは極めて重要な事です。もしも私達が本当にオリハルコンの回収に成功した場合、必ず大きな話題となります。それこそ新聞に載るぐらいのビッグニュースですわ!!」

「ビッグニュース……え、なに?」

「もしも新聞に載った場合、私達が集団に名前を付けて居なければきっと「魔法学園の生徒がオリハルコンを入手」という味気ない記事になってしまいますわ!!ですが、集団に名前があれば「魔法学園の〇〇〇がオリハルコンを入手」という記事に差し替えられます!!」

「いや、別に僕達有名になる気なんてないけど……」

「シャラップ!!お黙りなさい!!私達はいずれ金色の隼に入り、黄金級冒険者として活躍するのですよ!?ならば今の内に名声を集めておけば評価も必然的に高まります!!」

「評価が高まる……確かにそれはあるかもしれない」



ドリスの言い分にも一理あり、無名の学園の生徒が金色の隼に入ったとしても世間はそれほど認知しないだろう。しかし、学園を卒業する前に名声を高めていれば世間の認識も代わり、名を知らしめた生徒が入るというのであれば金色の隼の待遇も変わる可能性もあった。


仮に無名のままで金色の隼に加入してもドリス達に与えられる役割はそれほど重要ではないだろう。但し、レナの様に事前に王都中に噂が広がる生徒なれば金色の隼の対応も違うはずであり、実際にレナの場合は他の生徒と違って推薦状には好待遇で迎え入れるという内容が記されていた。


商人としてだけではなく、冒険者としても大成したいドリスは名声を広げるため、まずは自分達の集団名を決める事にした。個人が目立つのではなく、あくまでも全員の名前を知らしめるため、彼女は自分達の集団名は必要だと告げる。



「私達の名前は……そうですね、ここは魔法学園の生徒という事で学園隊というのはどうでしょうか?」

「また、分かりやすい名前だな……でも、学園隊か」

「いいんじゃないかな?分かりやすい方が覚えやすいし、それにこの名前だと魔法学園の生徒だってすぐに分かるよね」

「じゃあ、俺達の集団名は学園隊でいいかな?」

「決まりですわ!!では兵士さん、待たせて申し訳ございませんわ。どうぞ、魔法陣を発動してください」

「……あ、ああ……武運を祈るぞ」



促された兵士は呆気に取られながらも魔法陣を発動させると、瞬時にレナ達は光の柱に飲み込まれ、やがて広間から完全に消え去った――

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