第248話 オリハルコンを求めて
「ふん、カーネの奴め……こんな物を売りつける辺り、あいつも相当に金に困ってるんだな。ヒヒイロカネを買うために資金集めでもする気か?まあ、一番金に困ってんのは俺だけどな……」
「どうすんだよおっちゃん……このままだとまずいんだろ?」
「……どうしよう」
「いや、あたしに聞かれても困るんだけど……」
コネコの言葉に心底困った表情を浮かべたダリルは全員に顔を向け、相当に切羽詰まっているらしい。競売の開催日まであと少しだというのに打開策が思いつかず、ダリルは頭を抱えてしまう。
そんな追い詰められている彼に対してレナ達は何か良い案がないのかと考えていると、ドリスはある事を思いついた様に口を開いた。
「オリハルコン……ならどうでしょうか?」
「えっ?」
「最近、よく噂になってるオリハルコンを出品したらどうですの?」
「お、オリハルコンだと!?ヒヒイロカネに匹敵する魔法結晶じゃないか!!」
オリハルコンの名前を耳にするとダリルは慌てふためき、そんな貴重な代物を自分の商会が取り扱っているはずがないと首を振る。しかし、そんな彼に対してドリスは市中に広がっている噂の内容を教える。
「実は最近、煉瓦の大迷宮にて「ブロックゴーレム」が出現したという噂が流れていますわ。ブロックゴーレムの事はご存じですの?」
「い、いや……そいつがどうかしたのか?」
「ブロックゴーレムは荒野の大迷宮の「ロックゴーレム」とは異なり、岩石ではなく煉瓦で構成された特殊個体ですわ。分かりやすく言えばゴーレムの「亜種」ですわね。そしてブロックゴーレムは体内にミスリル鉱石ではなく、オリハルコンの素材となるオリハル水晶を宿すと言われています」
「オリハル水晶?」
「このオリハル水晶は加工する事によってオリハルコンが完成しますわ。もしも、オリハルコンを出品するとしたら商会としての面目が保てるのでは?」
ドリスの言葉にダリルは考え込み、確かにヒヒイロカネと同等の価値を誇るオリハルコンを出品すれば商会としての面子を保つどころか、あのカーネにも一泡吹かせる事ができる。
しかし、問題があるとすればオリハルコンもオリハル水晶もダリル商会には存在せず、手に入れるとすれば冒険者から買い取るか、あるいは契約を結んでいる冒険者に大迷宮に向かわせて回収してもらうしかない。だが、煉瓦の大迷宮を攻略できる冒険者など王都内でも人数は限られていた。
「だ、駄目だ……うちが契約を結んでいる冒険者の殆どは銀級冒険者だ。煉瓦の大迷宮といえばこの王都で一番危険な迷宮じゃないか。そんな場所にひよっこ同然の冒険者を送り込むわけにはいかないだろ……」
「ダリルさん、それなら俺が行きますよ。丁度、皆で一緒に行こうかと話してたところだし……」
「お、お前達がかっ!?いや、だが危険過ぎる!!俺のためにそんな無茶をさせるわけには……」
「言っておきますけど、別にダリルさんのためだけに行くつもりはありませんわ。うちの商会としてもブロックゴーレムの噂が本当だとしたら是非、オリハルコンは入手しておきたいのです!!」
ダリルは危険である事と、また自分のためにレナ達に迷惑を掛ける事に後ろめたさを感じるが、ドリスがそんな彼に対してはっきりと自分もオリハルコンを欲しい事を告げた。
レナとしても親代わりに想っているダリルを放っておくことが出来ず、何者かが何の目的でダリル商会を競売に参加させたのかは知らないが、ここでダリル商会の格を落とさないためにもレナはオリハルコンの回収する事を決める。
「ダリルさん、止められようと俺は行きます。それに冒険者として他の大迷宮がどうなっているのかも気になりますし」
「まあ、あくまでも噂なんだろ?本当にそんな奴がいるのかも分からないし、あんまり期待せずに待ってろよおっちゃん」
「レナ君とコネコちゃんが行くなら僕も……」
「当然、私も行く。索敵と支援は得意分野、薬も色々と持っていく」
「僕も行くぞ!!オリハルコンなんて全然興味ないけどな……あくまでもお前等だけじゃ心配だからな!!決して、オリハルコンが目的じゃないぞ!!」
「デブリ君、欲望が抑えきれてませんよ……ドリスが行くなら僕も同行するよ。ドリス一人だけだと心配だし、それに前衛は多い方がいいでしょう?」
「決まりですわ!!なら、明日の早朝に出発しましょう!!各自、それまでに準備を整えて下さいましっ!!」
全員の意思を確認すると、ドリスの言葉に全員が頷き、ダリルはおろおろと彼等を見渡す。ここで自分が止めたとしてもレナ達が行動を中止する様子はなく、結局はダリル商会の命運を再びレナ達に賭ける事になった――
――翌日の早朝、ドリスの指示通りにレナ達は大迷宮の出入口である中央街の広場へと終結する。今回は全員が武装しており、各自しっかりと転移石を用意しておく。また、レナは移動の事を考えてスケボも持ち込む。
「皆さん、集まりましたわね!!準備はちゃんと整えましたか?」
「おやつはちゃんと鉄貨3枚分だけ持ってきたぞ」
「バナナはおやつに入らないからおかずとして持ってきた」
「よし、完璧ですわね!!」
「いや、遠足か!?」
定番のボケを挟むとレナ達はドリスの指示の元、大迷宮の前に集まった。ちなみにドリスはこの中では一番の最年長者であり、元々の性格もあって今回はリーダー格を勤める事になった。
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