第226話 金色の隼の目的

「彼等は黄金級の階級の冒険者で統一されていたが、近々下の階級の冒険者や、優秀な魔術師を加えて冒険者集団パーティを拡大化したいらいい。そこでヒトノ国内で最も若く才能が溢れる魔術師が集まっている魔法学園に見学したいと儂に頼んできたのだ」

「なるほど……でも、冒険者じゃない人を勧誘するんですか?」

冒険者組織クランというのは知っておるか?複数の冒険者が集まり、更に冒険者以外の人員を取り入れた冒険者の組織と言えば分かりやすいかのう。金色の隼は冒険者組織を作りだし、これからはギルドが発注する依頼を受けるだけではなく、彼等自身で依頼主から直々に仕事を受けるつもりだ。最終的には組織を拡大化させた後、冒険者ギルドに昇華させるのが彼等の目標らしい」

「冒険者組織、ですか……」



金色の隼の目的は優秀な人員を集め、冒険者以外の人間も勧誘し、組織を作り上げる。その後は組織を拡大化させ、最終的には冒険者ギルドとして国から正式に認められるのが目的だという。


この発想は金色の隼の団長を務めるルイの目的らしく、他の者達も彼女の意思に賛同し、協力している。現在の金色の隼は優秀な人材を探して勧誘しているらしく、そこで国中から集められた称号持ちの魔法学園の生徒に目を付けたらしい。



「実はあの決闘で金色の隼の冒険者達もお主に強く興味を抱いてな。そして儂の演説を聞いた後、お主以外にもどのような生徒がいるのか気になった彼等は魔法学園を見学したいと言い出してきたんじゃ。こちらとしても金色の隼の冒険者達と親交を深める良い機会だと判断し、実は明日の昼に彼等を招くつもりじゃ」

「それで、学園長の頼みというのは……」

「うむ、黄金級冒険者は多忙な身の上だからのう。時間が取れたのは明日だけらしい、だからこそ儂は対抗戦に出場した我が学園の代表者を彼等に紹介しようと思っておる」



金色の隼が求める優秀な人材に当てはまる生徒は、マドウの中では対抗戦に出場した学園の代表を務めた生徒達だと確信し、明日の昼に金色の隼の冒険者達には彼等を紹介したい事を告げる。


急な話ではあるが生徒達にとってもヒトノ国の最高位に位置する冒険者と接する貴重な機会であり、黄金級冒険者の仲間入りを果たせる可能性も存在した。マドウはこの件を他の生徒達にレナから話を通してくれるように頼む。



「既に魔法科の生徒には通達しておるが、騎士科の生徒にはお主の方から伝えてくれるか?お主から伝える方が他の者も安心するだろう」

「はい、分かりました」

「ああ、それと……実は金色の隼の方からお主だけ伝言があってのう。先日の決闘は素晴らしかった、君のような人材ならば歓迎すると言っておるのだが……」

「そうなんですか?」

「まあ、急な話だからゆっくりと考えるがいい。返答は明日に本人たちに聞かせればよいだろう」



マドウによると先日の決闘でレナの実力を知ったルイは非常に関心を抱いたらしく、マドウを通して金色の隼の勧誘を伝えるように頼む。マドウはレナに返答の方は明日直接本人に伝えるように促す。


レナは学園長室を後にすると、まさか自分が金色の隼の勧誘にされるなど夢にも思わず、他人に自分の実力を認めて貰うというのは悪い気分はしない。だが、黄金級冒険者の仲間入りという機会を得られたが、レナの返答は決まっていた――






――放課後、教室にてレナはコネコ達を呼び集め、学園長から伝えられた話を行う。最初は全員が驚いたが、あの有名な金色の隼に自分達が紹介されると知ってミナやデブリは驚きを隠せない。



「ほ、本当に金色の隼の人達に会えるの!?パーティーの時はあんまり話すことが出来なかったけど、あの人たちって本当に凄い人なんだよね?」

「し、信じられない……この僕が金色の隼に入れるかもしれないのか!?」

「いや、デブリの兄ちゃん……気が早いよ、まだ勧誘されるとは決まったわけじゃないだろ?」

「それでも可能性はゼロじゃないだろ!?うおおおっ!!こうしちゃいられない、今から稽古してくる!!」

「あ、行っちゃった……」



デブリは話を聞いて興奮を抑えきれず、訓練場に向けて走り出す。金色の隼が訪れる時間帯を伝えていないのに立ち去ったデブリにレナは後で伝える事に決め、他の者に振り向く。



「コネコはどう?同じ冒険者なんだし、金色の隼の事は気になったりする?」

「う~ん……あたしが気になるのは黄金級冒険者の仲間入りを果たしたらどれくらい稼げるかだな、金額によっては別に仲間になってもいいって感じかな?」

「私も同意見、給料が高いなら入ってもいい」

「お金目当て!?それに二人とも上から目線過ぎない!?」

「そっか、まあコネコは孤児院の仕送りもしないといけないし、シノもお金は必要だったよね。ミナはどう?」

「僕はそうだな……冒険者には興味があるけど、僕の夢はお母さんのような立派な騎士になる事だからね。勧誘されても断ると思う」



コネコとシノは給金や待遇次第、ミナの場合は他に夢があるので勧誘されても断るらしく、結局完全に乗り気になっているのはデブリだけらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る