第159話 ルインとムノー
「ううっ……!?」
「がはぁっ……こ、ここは……!?」
「おっ、この二人目を覚ましたみたいだぞ」
レナ達が話している間にルインとムノーが意識を取り戻したらしく、目を覚ました二人は身体が拘束されている事、そして目の前に立つレナ達の存在に気付くと状況を理解したのか怯えた表情を浮かべる。
どうやら死にかけた事で少しは冷静さを取り戻したらしく、先ほどまでは復讐心に囚われて正気を失ったかのように振舞っていたが、立場が逆転した事で一変して逃げ出そうともがく。
「ひいっ!?ち、近寄るな……あがぁっ!?」
「ぐうっ……ほ、骨がぁっ!?」
「動かない方が良い、あちこちの骨に罅が入っている」
「デブリの兄ちゃんに押し潰された事を覚えてるか?これ以上に逆らうなら容赦しないぞ~」
「どすこいっ!!」
二人の目の前でデブリは張り手を繰り出すとルインとムノーは先ほどまでの威勢はどうしたのか、掌を返して謝罪と命乞いを行う。
「た、頼む!!見逃してくれ……どうか、頼む!!」
「金なら払う、だから殺さないでくれ……」
「虫が良い奴等だな……」
「レナ君の命を狙っておいて今更何を言ってるのさ!!」
情けなく命乞いを行う二人に対してミナは槍を構え、非常に怒った様子で怒鳴りつける。二人は彼女の槍を見て怯えた子供のように互いの身体を抱きしめ、身体を震わせた
あまりにも惨めな二人の態度を見てレナ達は呆れてしまうが、このまま警備兵に突き出す前に二人には色々と聞くことがあるため、最初にシノがレナを見つけた手段を問う。
「貴方達、どうやってレナを見つけ出した?偶然見つけたの?」
「そ、それは……」
「正直に答えないとまたデブリ兄ちゃんが押し潰すからな!!」
「ふんっ!!ふんっ!!」
デブリがその場で四股を行うと、彼が足を地面に踏みつける度に振動が走り、その様子を見てルインとムノーは表情を青ざめさせる。そんな二人に対してレナはミナに肩を貸してもらいながらも質問を行う。
「ルイン、それにムノー……ここで俺の事を待ち伏せしていたの?」
「ち、違う……お前が飛んで行くのを見たという男から聞いて、ここまでやってきたんだ」
「見つけたのは偶然じゃない、俺達の後ろには盗賊ギルドがいるんだ……こ、ここで俺たちを殺せばお前等は完全に盗賊ギルドの標的になるぞ!!」
「また盗賊ギルドか……いい加減にしてほしいな」
うんざりした表情でレナはため息を吐き出し、予想通りというべきかこの二人もレナの命を狙うために盗賊ギルドと関わっているらしい。薄々と予想していたが二人も昼間に襲ってきた冒険者や警備兵に変装した盗賊たちのようにレナの命を狙いに来たらしい。
しかし、盗賊ギルドがどうやってレナの居場所を突き止め、二人の位置を教えたのかが気にかかり、二人に情報を与えた人物を問う。
「俺の居場所を教えたのは誰?」
「な、名前は知らない……だが、盗賊ギルドの幹部なのは間違いない。奴がお前がここにいるといってきたんだ。それを聞いて俺達はここへ駆けつけた、それだけだ!!」
「だから、それがどんな奴か聞いてんだよ!!容姿ぐらい覚えてるだろ!?」
「ね、年齢はそれほど若くはない。多分、50代ぐらいだ……だが、その男は異様な雰囲気を纏っていた。長年、冒険者ギルドに勤めていた俺でさえもあれほどの男は滅多に見たことがない……恐らく、相当な武人だ」
ルインの言葉にレナ達は顔を見合わせ、嘘を言っている様子は見えないので今度は二人がどのような経緯で知り合ったのかを尋ねた。
「どうして貴方達は二人で組んでいたの?どちらも、レナに恨みを持っているのが偶然とは思えない。誰かに指図されて手を組んで襲ったの?」
「ああ……俺もムノーさんも、そいつのせいで職も家族も友達も失った……自暴自棄になって酒浸りの日々を送っていた時、盗賊ギルドの遣いが来たんだ」
「何か同情を誘うように言ってるけど、本をただせばお前等が問題を起こしたせいだろ、兄ちゃんのせいにしてんじゃねえよ」
「ぐうっ……」
コネコの正論に二人は悔し気な表情を浮かべるが、小さな子供に論破されて言い返せない大人達にレナは呆れるしかない。項垂れる二人にシノは話の続きを促す。
「それで、盗賊ギルドの遣いはなんて言ってきた?」
「……儂等に復讐の機会を与えると言ってきた。その小僧を殺させる手段を与える代わりにこちらの指示に逆らわずに実行しろとな。もしも小僧を殺す事ができたら金貨100枚を与えるとも言ってきた」
「金貨100枚!?凄い大金だな!!」
「でも、そんな怪しい話に乗ったの?盗賊ギルドの悪名は知らなかった?」
「そんなわけないだろう、俺もムノーさんも立場上、盗賊ギルドの事はよく知り尽くしている。というより、そもそも二人とも盗賊ギルドに関わっていた事もあるからな」
「ルイン、貴様何を言い出す!?」
「ムノーさん、ここまで来たら白状しましょうよ……俺は冒険者ギルドに流れてきたミスリルを盗賊ギルドに横流ししていた。ムノーさんの方も自分の立場を利用して帝国の予算で買い込んだ魔石を盗賊ギルドに流してたんでしょう?」
「ぐうっ……」
ルインの言葉が図星だったのかムノーは何も言い返せず、片方はヒトノ国の魔導士、もう片方は冒険者ギルドのサブマスターという立場でありながら悪事を働いていた事にレナ達は呆れてしまう。
何かが吹っ切れたようにルインは自分が行った悪事を語りだし、盗賊ギルドに対して自分やムノーはがどれほどの援助を行い、見返りに自分達が邪魔に思う存在を盗賊ギルドに処理をしてもらった事を語る。
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