第153話 カーネが逆らえない人物
「そうだ!!なら、こういうのはどうだ?カーネ会長が逆らえない人に頼んで庇ってもらうというのはどうだ!?」
「カーネ会長が逆らえない人物って……例えば?」
「えっと……国王様、とか?」
「無理だろ」
デブリの言葉に全員が呆れた表情を浮かべ、彼自身も自分のあまりの提案に恥ずかしく感じたのか、黙り込んでしまう。だが、考え自体はそれほど悪くはなく、カーネが苦手とする、あるいは逆らえない人物に手を貸してもらうという点は良い考えかもしれない。
最も相手はこの王都の商業を実質的に支配しているといっても過言ではない大商会の主であるため、そんなカーネが逆らえない人物と言われてもそう簡単には思いつかない。
「まあ、国王様は無理としても……カーネ会長が逆らえない相手となると他に誰かいないかな?」
「う~ん……そんな人いるのかな?」
「カーネ商会は冒険者ギルド、盗賊ギルド、ヒトノ国に対しても多額の援助を行っているから人脈は広い。間違いなく、この国の重要人物の一人なのは間違いない」
「あの汗臭いおっさん、そんなに凄い奴だったのか……そうは見えなかったけどな」
「でも、そうなるとカーネ会長が逆らえない人なんて滅多にいないんじゃ……」
カーネ商会はヒトノ国に存在する商会の中でも最も規模が大きく、カーネ自身も多方面に顔が利く。そんなカーネが逆らえない人物などそれこそ国王以外に想像できなかったが、ここでレナはある事を思い出す。
(そういえばこの間、魔法学園の学園長に用事があるとか言ってたよな……という事はカーネは学園長とも何かしらの関係を築いているのかな)
魔法学園にカーネが訪れてレナの勧誘を行った際、彼は学園の応接室ではなく、わざわざ学園長室で出迎えた事を思い出す。実際にあの時は本当に学園長である「マドウ」が学校側に訪れており、その事を考えるとカーネは本当にマドウとも繋がりがあるようだった。
この国にたった一人しか存在しない「大魔導士」を勤めるマドウは魔法学園の学園長を任せられていながらも、多忙なので滅多に学園には訪れる事は無い。そんなマドウがカーネと会うためだけに学園に訪れたのかと思われたが、ここでレナは疑問を抱く。
カーネが学園側に訪問したとき、彼は付き添いの人間もおらず、たった一人で学園長室で待ち構えていた。レナに会うために大分早い時間に訪れたとは言っていたが、それにしては商会の会長自らがわざわざ一人で学園に訪れた事にレナはある結論に至る
(もしかしてカーネよりも学園長の立場が強い?)
商会の会長でありながらカーネが自ら一人でマドウに会うために学園に立ち寄っている時点でカーネとマドウの立場の違いが伺え、レナはカーネ商会で働いているシノに問う。
「カーネ商会は大魔導士のマドウさんとも縁があるの?」
「それは知らない、だけどカーネ商会が魔法学園の創設の際に多額の援助をしている事は知っている」
「ふむ……シノさん、カーネ商会を辞める前に出来れば調べて欲しい事があるんだけど……」
レナはカーネとマドウがどのような関係を築いているのかを知りたい事を伝えると、彼女は調べる事を承諾してくれた――
――それから数時間後、外にいるのは危険なのでダリル商会の屋敷に戻って来たレナ達はシノが戻ってくるのを待っていると、彼女は背中に大きな荷物を抱えて屋敷に訪れた。
「ふうっ……流石に疲れた」
「シノさん!!無事に辞める事は出来た?」
「色々と揉めたけど、どうにか違約金を支払って辞めてきた」
シノは戻る前にレナが用意した違約金の代金を受け取り、カーネ商会に戻って自分が辞める事を報告し、契約破棄の際に生じる違約金を支払う。相手側も随分と粘ったようだが、どうにか辞める事に成功したらしい。
カーネ商会としては能力的には優秀なシノを引き留めようとしたらしいが、約束を律儀に守ってシノは無事にカーネ商会を止めてきたらしく、今後はダリル商会の用心棒として住み込みで働く予定だった。ダリルとしても称号持ちの人間が商会に入る事は有難く、シノを快く迎え入れた。
「へえ、こいつがレナの言っていた嬢ちゃんか。俺はダリルだ、これからよろしくな嬢ちゃん」
「よろしく……お願いします」
出迎えたダリルに対してシノはため口で答えようとしたが、これから自分が働かせてもらう事を思い出して敬語を使う。彼女は荷物を置くと、早速コネコが質問を行う。
「それで?あのハゲのおっさんとマドウの関係というのは分かったの?」
「私が調べた限り、どうやらカーネは定期的にマドウに連絡を取り合っているみたい」
「連絡?」
「どうも魔法学園の創設する際に支払った援助金の代わりにカーネは自分の娘とマドウの孫を結婚させようとしているみたい」
「それって……政略結婚じゃないか!?」
シノの調査の結果、カーネはマドウの孫と自分の娘を結婚させて彼と親戚関係を築き、王国に対してより強い影響力を持とうとしている事が発覚する。
「マドウの方も学園の創設に協力して貰った以上はカーネの願いは無下に出来ないけど、まだ孫の方は10才を迎えたばかり、それに対してカーネの娘は35才、孫が結婚する年齢を迎えた場合はカーネの娘は40才を迎えている。そうなると子供を望むのも難しいから渋っている」
「マジかよ……」
「年齢差20才は流石に……」
「思っていたよりやばい話だったな……」
予想の斜め上の展開にレナ達は呆れてしまい、それでもこれでカーネとマドウの関係性がよく分かり、やはりというべきか立場的にはカーネよりもマドウが上らしい。
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