第114話 魔炉の製作
「その魔炉がないとミスリルは加工出来ないんですか?」
「出来ないわけじゃないが、難しいな。出来たとしても質が悪い金属しか出来上がらないだろうな」
「なら、火属性の魔石を用意すればゴイルさんがその魔炉を作ってミスリルを加工してくれますか?」
「おう、それは問題ない。むしろ、ミスリルを加工出来る機会なんて滅多になかったからな!!幾らでも手伝ってやるぜ!!」
「なら、次の目的は火属性の魔石か……ちなみに店とかで売ってないですかね?」
「まあ、何処かの店で売ってはいるだろうが、相当に高いぞ。下手をしたらミスリル並に貴重な代物だからな」
魔炉の製造に関してはどうしても火属性の魔石の中でも良質な物を用意しなければならず、一応は販売されているが高額に売り出されているので現在のレナ達の資金では購入は難しい。
だが、ミスリルの加工に必要不可欠な代物ならば何としても手に入れなければならない。材料さえあればゴイルでも制作可能らしく、とりあえずは材料を手に入れるためにレナはダリルに尋ねる。
「ダリルさん、具体的に火属性の魔石の価値が分かりますか?値段がいくらとか……」
「そうだな……だいたい魔術師が扱うような魔石の場合は金貨が1、2枚程度じゃないか?」
「金貨!?とてもあたし達じゃ払えそうにないな……」
レナの言葉にダリルは答えると、その返事を聞いたレナは黙り込み、他の者達は購入以外の手段で魔石を入手出来ないのか話し合う。
「なあ、ロックゴーレムの時みたいに魔石を体内に宿している魔物とかいないのかよ?」
「それなら大迷宮「迷路」の階層に生息している「リザードマン」だな。奴等は体内に火属性の魔石を宿しているから、もしも倒す事が出来れば魔石は手に入る。だが、リザードマンは強敵だぞ?コボルト以上に素早さにボアの突進も受け止める耐久性、それに窮地に追い込まれると火炎の吐息を放つ危険な魔物だ。ある意味ではロックゴーレムよりも厄介な相手だな……」
「だが、リザードマンから取れる魔石なら素材としては申し分なしだ。奴等の火炎の吐息はそもそも魔石の力を利用して生み出しているからな」
「リザードマンか……僕も戦った事はないな」
まだレナ達は訪れた事がない大迷宮の中にはリザードマンと呼ばれる魔物が存在し、その魔物の体内から得られる火属性の魔石ならば素材としては最適らしく、どうするべきかミナはレナに問う。
レナの方も色々と考えた末、火属性の魔石を確実に入手する手段を考える。大迷宮にもう一度挑み、リザードマンと呼ばれる魔物を倒して入手するか、あるいは別の方法で手に入る手段がないのかを考えていると、ここでレナの視界にミスリル鉱石が映し出されてある妙案を思いつく。
「レナ君、どうするの……レナ君?」
「……よし、決めた」
「どうした兄ちゃん?」
覚悟を決めたようにレナは立ち上がると、その反応を見て他の者達は不思議に思うが、レナは机の上に置かれたミスリル鉱石に視線を向けてダリルに質問する。
「ダリルさん、このミスリル鉱石を加工したらどの程度のミスリルが得られるか分かりますか?」
「え?そ、そうだな……これだけの上質な代物だと11~12キロ程度は取れると思うが……」
「ちなみに加工前のミスリル鉱石を買い取ってくれる人とかはいますか?」
「そりゃいるだろう。まあ、ミスリルと比べたら価値は少し下がるだろうが、それでも金貨40~50枚ぐらいは手に入るはずだ……おい、レナ?何を考えているんだ?」
レナの言葉にダリルは不思議に思うと、机の上に乗せたミスリル鉱石にレナは手を置いて突拍子もない発言を行う。
「よし、これを売りましょう。その売ったお金で火属性の魔石と装備品を整えます」
『ええええっ!?』
ミスリルを入手するためにロックゴーレムという強敵を倒して手に入れたミスリル鉱石を売却しようというレナの言葉に全員が驚愕する。
魔炉の改造に良質な火属性の魔石が必要とはいえ、それを購入するためにミスリルの加工に必要不可欠なミスリル鉱石を売り払おうというレナの言葉に全員が驚く。
もしもミスリル鉱石を売却して大金を得て火属性の魔石を購入したとしても、そのミスリル鉱石を加工しなければ何の意味もないため、慌ててゴイルが引き留める。
「おいおい、待て待て!!そのでかいミスリル鉱石を加工して貰うために俺を呼んだんだろう!?なのにそれを売っぱらってどうしようってんだ!?本末転倒じゃねえか!!」
「そうだぞ兄ちゃん!!あんなに苦労して手に入れたのに売ってどうするんだよ!?」
「レナ君、落ち着いて!!それだと本末転倒だよ!?」
「落ち着くんだレナ!!冷静に考えろ!!」
「いや、冷静に考えた上での判断です」
全員がレナを止めようとしたが、当の本人は落ち着いており、自分がミスリル鉱石の売却を申し出た理由を話す。
「この鉱石を売却して手に入れたお金で火属性の魔石を購入した後、余った分のお金で装備品を整え直してもう一度大迷宮に挑みたいと思います」
「挑む……まさか、リザードマンを討伐するつもりか!?」
「本気か兄ちゃん!?あれ、でも火属性の魔石を購入するなら別に挑む必要なんてないんじゃ……」
「違うよ、俺たちが行くのは「迷路」じゃなくて「荒野」の大迷宮だよ」
「こ、荒野?何で?」
レナの言葉にコネコは不思議そうに首を傾げると、そんな彼女にレナは自分の行先を告げる。
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