第105話 岩石の巨人VS付与魔術師
「ここならすぐにはバレないと思うけど、隠れていてもあいつを倒せない。どうにか弱点を探さないと……」
「ダリルのおっちゃんの話だと、ロックゴーレムは水属性の魔法に弱いらしいけど兄ちゃんは使えないのかよ?」
「生憎と俺は地属性しか適性がないらしいから……」
「ゴオオ……!!」
岩陰に隠れながらミナの介抱をコネコに任せたレナはロックゴーレムに視線を向けると、どうにか岩壁から右足を引き抜き、レナ達を探すようにロックゴーレムが周囲を見渡す。
気付かれないように隠れながらもレナはロックゴーレムの注意を他に引くため、距離は離れているが地面に掌を押し当てて付与魔法を発動させる。
「
「ゴアッ!?」
「おお、やった!?」
ロックゴーレムの足元の地面が流動し、まるでアリジゴクのようにロックゴーレムの右足を飲み込む。ロックゴーレムは慌てて飲み込まれていく足を引き抜こうとした。
大抵の魔物ならば即座に地面に身体が飲み込まれるのだが、巨体に怪力を誇るロックゴーレムは完全に右足が飲み込まれる前に引き抜いてしまう。
「ゴオオッ!!」
「駄目か……距離が遠すぎて上手く魔法が使えない」
あまりに離れすぎているとレナの付与魔法の効果も弱まり、今までの魔物のように足止めもする事も難しい。そもそもロックゴーレムが並の魔物よりも大きく力も強いため、簡単には地中の中に沈むことが出来ない。
だが、事前にレナ達はロックゴーレムを仕留める方法はダリルから聞いており、相手の頭部を破壊するか、あるいは体内に存在するミスリルの鉱石を取り出せる事は知っていた。
『ロックゴーレムは体内にミスリルの鉱石を生成する理由は色々な説があるが、一般的にはミスリルの鉱石の影響を受けた岩石が意思を持ち、生物のように動くようになったと言われている。だからロックゴーレムからミスリルの鉱石を摘出すれば奴等は只の岩石の塊に戻るらしい』
ダリルの話を思い出したレナはロックゴーレムの全身に視線を向け、ある事に気付く。今まではロックゴーレムを倒す事しか考えていなかったが、もしもレナの考えが正しければロックゴーレムの体内からミスリルの鉱石だけを入手出来るかもしれない。
(一か八かの賭けだな……何だか、この言葉ばっかり考えてる気がする)
実戦の度に自分が危険な賭けを行っている事に気付いたレナは苦笑いを浮かべ、岩陰からロックゴーレムの動作を伺う。
ロックゴーレムは唐突に自分の右足を飲み込もうとした場所から急いで離れ、警戒するように注意深く周囲を見渡す。
(流石に警戒されてるな。さて、どうするか……)
ロックゴーレムとの距離は30メートルは離れており、仮にレナが付与魔法を利用した「瞬間加速」を発動したとしてもロックゴーレムの元まで到着するのに数秒は要する。それだけの時間があればロックゴーレムはレナの存在に気付き、反撃を仕掛けてくるだろう。
レナの作戦はロックゴーレムに近付くことが出来れば試す事は出来るが、近づく前に気付かれて攻撃を仕掛けられたら今度は防ぐ事が出来るかも分からない。しかし、このまま隠れ続けても埒は飽かず、レナは闘拳に視線を向けて賭けに出る事にした。
「二人はここで隠れていて」
「え、兄ちゃん!?」
「レナ君!?」
二人を岩陰に残すとレナは靴を脱いで裸足の状態でロックゴーレムの元へ駆け出し、瞬間加速を発動させて一気にロックゴーレムとの距離を縮める。だが、周囲を警戒していたロックゴーレムは高速接近するレナの姿を捉え、即座に右足を振り翳す。
「ゴオオオッ……!!」
「させるか!!」
先ほどのように右足で地面を蹴りつけて土砂の残骸を放たれる前にレナは右腕を掲げ、赤毛熊との戦闘でも利用した方法で闘拳を飛ばす。
弾腕を使用して銀玉を打ち込むよりも重量が大きい闘拳の方が威力は高く、レナの右腕から放たれた闘拳は見事にロックゴーレムの軸足の左足に的中し、脛の部分に亀裂が走る。
左足に衝撃を受けて体勢を崩したロックゴーレムの元へレナは飛び込み、両足に魔力を集中させて一気に跳躍を行う。レナの狙いは亀裂が走ったロックゴーレムの頭部へ掌を伸ばし、顔面を掴む。
「やった……うわっ!?」
「ゴアアッ!!」
自分の顔面に張り付いたレナにロックゴーレムは驚き、尻もちを着いてしまう。その際の着地の衝撃でレナは引き剥がされそうになったが、どうにか落ちずに抱き着くと、付与魔法を発動させた。
「お前の肉体が岩石で構成されているなら、俺に操れないはずがない……
「ゴオオオッ……!?」
次の瞬間、レナはロックゴーレムの巨体に付与魔法を発動させると、岩石で構成されたロックゴーレムの全身に紅色の魔力が宿った。レナを引き剥がそうとした両腕も停止し、ロックゴーレムは驚愕の表情を浮かべながら動かない。
「……やった」
――レナの地属性の付与魔法は本来は土砂や岩石の類を変形、操作する能力を持ち、全身が岩石で構成されているロックゴーレムでさえも操れる事が判明した。
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