第37節・風見鶏の城


 ベルファの町の正門に当たるセイレーン大門は町から脱出しようとする人で溢れかえっていた。

いくつもの馬車が隊列を成しており、町の衛兵たちが馬車や避難民の誘導を行っている。


 町に向かっていく者は私たちくらいで時折避難している人たちが「町にはいかないほうがいいぞ!!」と声を掛けてくれている。


「こりゃ……船を出せる状況じゃないかもしれませんな」


 ロイの言う通り恐らく港の方も大変なことになっているだろう。

私たちはとりあえずジェイムズに会ってみようと話し合い、セイレーン大門に向かって馬車を進める。

すると門に居た数人の衛兵たちが「待て!」と進路を塞いできた。


「今から町に入る気か? 見ての通りもうすぐここは戦場になる。命が惜しけりゃ戻れ!」


「ええ、親戚を回収したらすぐに戻りますよ」


 ヘンリーおじ様がジェイムズからの手紙を衛兵に渡すと彼らはそれに目を遠しヘンリーに返した。


「あの貿易商の親戚か。アイツからは時々酒を買っていたんだ。さっさと店を畳んで逃げるように言っておいてくれ」


「そうします。彼も命あっての物種ということは分かっているでしょうし」


 衛兵たちが持ち場に戻ると私たちは門を潜り町に入った。

そして近くの駅に馬車を停めると荷台から降りる。


 前に来た時とは大違いだ。

前はどこを見ても人で賑わっており、粗雑ながらも明るい町だったが今では町そのものが死んでしまったかのように静まり返っている。


 通りにはクルギス家の兵士たちが用意したいくつもの柵などが並べられており、着々と戦の準備が行われているのが分かる。


「……急ぎましょう」


 ユキノの言葉に私たちは頷いた。

そしてなるべく目立たないように路地などを進んで行き、”ジェイムズ商店”という看板が掲げられた店の前に来た。


 周りに誰もいないことを確認するとヘンリーおじ様がドアをノックするが返事が無く、ミリが「留守?」と首を傾げた。


「いや、中に何人かおるの。忍者娘、お主も分かるか?」


「……はい。五人ほど居ます。どうしますか?」


 ジェイムズ以外にも誰かいるのだろうか?

何か嫌な予感がするが……。


「一旦戻りましょう。なにか嫌な感じだ」


 ヘンリーおじ様がそう言い一歩下がった瞬間、店のドアが勢いよく開かれ中から武装した兵士たちが飛び出してくる。

更に路地からも兵士たちが次々と現れあっと言う間に取り囲まれてしまった。


「……袋の鼠?」


 そう苦笑するとユキノがため息を吐く。


「ヘンリー様? 信頼できる相手だったのでは?」


「その筈……なんですがねぇ。こりゃ参った」


「主様、ヤるか? ヤってしまうか! 儂に掛かればこんな奴ら……」


「うん、駄目」


 どうやら私たちを取り囲んでいるのはクルギス家の兵士たちのようだ。

彼らに危害を加えたらあっという間にお尋ね者だ。


「リーシェ・シェードランとその仲間たちだな!」


 兵士たちの間から一人の騎士が現れる。

無精ひげを生やした壮年の騎士で彼は私たちを見ると兵士たちに武器を降ろすように命じた。


「我らに同行してもらおう。大人しく従えば危害は加えない」


「━━どこに連れていくつもりだ」


 ロイが一歩前に出て騎士にそう訊ねると騎士は西の方を指さす。


「我らの城、ルカヴィ城までだ。伯爵様が貴様らに会いたいそうだ」


 クルギス伯爵が?

私たちは顔を見合わせ、ヘンリーおじ様が「ついて行きますか」と肩を竦めた。

彼の言う通りまずは騎士に従うとしよう。

いきなり殺されるということも無いだろうし、もし危なくなったら命一杯暴れればいい。


「分かりました。クルギス伯爵にお会いします」


 私の言葉に騎士は「賢い選択だ」と頷くと歩き始める。

私たちは兵に取り囲まれながら騎士の後に続いてこの場を離れるのであった。


※※※


 ベルファの町から西方。

海に面した崖の上にクルギス家が本拠地とするスカヴィ城があった。


 この城はアルヴィリア内でも比較的新しい城であり、自由都市地方がアルヴィリアから独立した際に前線基地として築城された。

今はエスニア海西方を支配する象徴となっており、城にはクルギス伯爵家の旗がはためいている。


 そんな城にある領主の執務室に私たちは連れて行かれ、クルギス伯爵と対面していた。


 数年前。

サジさんやアジくんが死ぬ原因を作った男。

当時のことを思い出すと怒りがふつふつと湧いてくるが殴りかかるわけにもいかず堪える。


「リーシェ・シェードラン。お久しぶりですな。姉君同様にお元気そうで」


「……お陰様で。そちら少々やつれました? 風見鶏も大変なようで」


「ほほう、中々良い皮肉だ。だがまだまだ姉君の方が皮肉が上手ですな」


 いや、まあ私はルナに口喧嘩で勝ったことないし……。

あの姉がたまに放つ鋭い毒舌には少し憧れたこともあるがどうにも私には真似できなかった。

今も義姉が言いそうなことを思いついて言ってみたのだがやはりオリジナルには敵わないらしい。


「まあやつれたというのは事実でしょうな。風見鶏には風見鶏なりの苦労があるのですよ」


 そう自虐的にクルギス伯爵は笑うと「さあ、腰かけなさい」とソファーの方を指さした。

全員は座れないため私とヘンリーおじ様が座り、残りは後ろに立つことにした。

そしてクルギス伯爵が向かい側のソファーに座るとため息を吐く。


「さて、諸君を呼んだのはその悩み故。知っての通り当家はこの内戦から……大公閣下の陣営から離脱を選んだ」


「随分と思い切ったことをしましたな。レクター大公の性格を考えれば只ではすまないと分かっていた筈では?」


 ヘンリーおじ様の言葉にクルギス伯爵は頷いた。


「私は諸君らのいう通り風見鶏だ。それも全てはこの家を後の世まで残すため。そのためなら私は西へ東へその向きをいくらでも変えよう。だが風見鶏にも限度がある。あまりにも強い突風が吹けば根元から折れてしまう」


「……例の海洋交易路の件が突風だと?」


「左様。ヘンドリック様ならば分かっていましょう。金の流れを止められることは死に等しい意味を持つと。特に当家はベルファで行われる貿易で成り立っている。海を奪われては我らは干上がってしまう。それに大公閣下はコーンゴルドの戦いで積極的な動きを見せなかった当家のとり潰しを考えていると聞く。これ以上は大公側にいられんよ」


 ヘンリーおじ様は「私のことも知っておられるか」と肩を竦めた。


「大公閣下は私に何の相談もなくメフィルに当家の交易路を売った。これは酷い裏切りだ。断じて許すことは出来ない」


 「では反大公軍に加わるので?」とロイが訊ねるとクルギス伯爵は首を横に振る。


「決めかねている。大公閣下は私を許さないだろうから帰参できぬ。しかし反大公軍も本当に信用できるか分からん。故に私は一つ策を練った。大公軍と反大公軍に文を出し、それには民の避難が完了するまで町に手出しをしないこと。そして大公軍には反大公軍を。反大公軍には大公軍を追い払えば味方すると」


「……潰し合わせる気ですか?」


 私が眉を顰めるとクルギス伯爵は「そうだ」と笑った。


「反大公軍が勝つならばそれで良し。負けたのならばベルファの町を大公軍に渡し、我らは即座にコーンゴルドの方に逃げるとしよう」


 レクターとは決別する。

しかし同時にできる限り生き残れる選択をする。

まさに風見鶏な考え方だ。


「卑怯と、臆病者と蔑むかね? ならば好きにするとよい。先ほども言ったが私はクルギス家を存続させることに全力を尽くす。それが他者から見て泥まみれの目にするのも憚れる姿だとしてもだ」


 クルギス伯爵はおどけてみせたがその瞳には強い意志を感じた。

以前の件もあり、この男のことは大がつくほど嫌いだが家を守るという意志は本物だと思える。


「なるほど。伯爵様が置かれている状況は良く理解しました。それで? 我らに何をさせようとお考えで? まさかリーシェ様を餌にルナミア様を利用しようだとか考えてはいませんよな?」


「そのことも考えたが彼女を人質にしたら次の日にはルナミア・シェードランに攻め込まれそうだ」


 いくらルナミアでも一人の為に軍を動かしたりは……と思ったが周りにいた仲間たちが「うんうん」と頷いた。

いやいや、ルナはもっと冷静だよ?

私一人の為にそんなことはしないよ?

自信ないけど。


「偶然ヘンドリック様の手紙を手に入れましてな。失礼ながら中身を読ませて頂いた。どうやら諸君らは海を越え、ザドアの大砂漠に向かうつもりのようだが。その船に追加で一人乗せてもらいたい人物がいるのだ」


 「乗せてもらいたい?」と首を傾げるとクルギス伯爵は執務室のドアの方に向かって「入ってきなさい」と言う。

すると「失礼します」という声と共に一人の少女が入ってきた。


 父親と同じ茶色いセミロングの髪。

目は美しい紫色で肌は白くまるで人形のような整った顔立ちだ。

「あらま、すっごい可愛い」とミリが言うと少女は頬を赤らめ「あ、ありがとうございます」と小声で頭を下げた。

そしてクルギス伯爵の隣に立つともう一度丁寧に頭を下げる。


「この子はヴィクトリア。我が子だ。諸君らにはこの子の護衛をお願いしたい」


「あ、あの……。ヴィクト……リアです。初めまして」


 ヴィクトリアが緊張した様子で一礼し、私たちも軽く会釈する。


「大公側からの離脱はかなりリスクの高い行為だ。反大公軍に合流したとしても勝てる保証は無い。故に万が一のことを考え、我が子をキオウ家にいる信頼できる人物に預けようと考えている」


 ザドアの大砂漠に向かうならば必ず一度はキオウ領の港で補給をする。

寄港した際にヴィクトリアを迎えの者に引き渡して欲しいというのだ。


 私はヴィクトリアの方を見ると彼女は申し訳なさそうに目を伏せた。

ヴィクトリアはどう見ても旅慣れしていない。

そんな彼女を連れて行くのは私たちにとって、彼女自身にとってもリスクのあることだろう。


「……もし拒否したら?」


「その時はお友達の貿易商と共にスパイ容疑で処刑するしかないだろうな」


「これ、お願いじゃなくて強制ですよね?」


 クルギス伯爵を睨むと彼は真っ直ぐに見つめ返し、「その通りだ」と頷いた。

そしてソファにゆっくりと背もたれるとこう言うのであった。


「一日じっくりと考えるがいい。明日の朝、返事を聞こう」


※※※


 私たちは城の貴賓室に移動させられるとそこで軟禁状態になった。

大人しくしている間は客人として扱ってはくれるらしく、何か必要なものがあれば外で待機している衛兵に声を掛けろと言われた。


「私は反対! だーれがあんな男ことを助けてやるもんですか!」


 部屋に入るなりミリは近くにあった椅子に腰かけふんぞり返る。

クレスもソファーに寝転ぶとテーブルに置いてあった果物入れからリンゴを取り齧って「儂もあの男が気に喰わんから反対じゃ」と言う。


「リーシェも反対でしょう? だってあの男は……ほら、あの時に」


「うん。私は今でもクルギス伯爵を許していないよ。でも私の感情だけでみんなを危険に晒すわけにはいかない」


 クルギス伯爵の娘を逃がすことを拒否すれば即刻全員絞首台行きだ。

ミリやクレスはとことん抵抗してやればいいと息巻いているがクルギス伯爵と敵対することは私たちだけではなく反大公軍にいるルナの達も悪くしかねない。


「私は娘っ子一人連れていくくらいいいと思いますがね。一緒にずっと旅をしろっていうんじゃないんだ。キオウ領に着いたらすぐに降ろしておさらば。それでいいと思いますが?」


「私もヘンリー様の意見に賛成ですね。無駄に危険を犯す必要はありません。船旅中邪魔だと判断したら海に落としてしまう手もあります」


「……冗談だよね?」


 「冗談です」とユキノは真顔で言うが彼女の場合冗談かどうかが判断付きにくくて反応し辛い。

「ロイは?」と壁にもたれ掛かっているロイに訊ねると彼も「俺も途中まで一緒なくらいいいと思っている」と頷いた。


「なんじゃ、お主らあの男の言いなりになるのか? つまらんのぉ。あの程度の男、儂がこうちょーっと痺れさせれば……」


「クレス」


「はいはい、分かっておるわ。主様の決めたことなら反対はせん」


 ミリはまだ少し納得して無さそうだが「ま、皆がそれでいいっていうなら」と首を縦に振った。

さて、とりあえずクルギス伯爵に対する回答は決まった。

あとは一日この部屋で休憩でも……。


『失礼します』


 貴賓室のドアがノックされヴィクトリアが入ってきた。

彼女は両手でトレーを持っており、その上にはティーポットと皿の上に乗せられた焼き菓子があった。


「その……父上のせいで大変なご迷惑をお掛けしているので……」


 ヴィクトリアが遠慮がちにそう言うとユキノが彼女から片手でトレーを受け取る。


「感謝いたします。ささ、ヴィクトリア様もお座りください。何かお話があってのことでしょう?」


 ヴィクトリアは頷くと丸テーブルに並べられた椅子の一つに座る。

それに合わせて私たちも椅子に座り、ユキノはトレーをテーブルに置くとカップに片手で器用に紅茶を注ぎ始める。


「あ! 私が……」


「いえ、クルギス家のご令嬢にこのようなことをさせられません。ここはメイドである私にお任せください」


 「メイドなんですか?」とヴィクトリアが驚くと私は笑みを浮かべながら頷いた。


「戦いから給仕までなんでもござれのスーパーメイドです。毒舌なのが玉に瑕だけど」


「毒舌は愛情故です」


「え!? じゃあ、私への毒舌も……ってなんでそんなゴミを見るような目で見るのよ!!」


「そりゃお主、日頃の行いじゃろう。儂のように清廉潔白に生きておればそのような目で見られることは無い」


「……言うほど清廉潔白か?」


 ワイワイと騒ぎ始める仲間たちにヴィクトリアは目をパチクリとさせるとやがて噴き出した。

そして「あ、すみません」と頭を下げると微笑む。


「皆さん、とても仲がよろしいんですね」


「ええ、まあ。なんだかんだで長い付き合いですからな。我らは家族のようなものですよ」


 家族、か。

確かにそうかもしれない。

ロイが居て、ミリが居て、ユキノが居て、クレスが居て、ヘンリーおじ様が居る。

皆と一緒にいると心が温かくなり安心できる。


「素敵ですね。少し羨ましいです。私は父上にあまり外に出るなと言われているので……」


「箱入り娘ってやつ? あ、このクッキー美味しい」


 ミリの言葉にヴィクトリアはやや困ったように「……そんなところです」と頷いた。


「それで? ヴィクトリア様は何か俺たちに用ですか?」


「あ、ヴィクトリアで良いです。皆様の方が年上ですし」


 そう言うとヴィクトリアはユキノが入れた紅茶を一口飲み、それから姿勢を正した。


「まず、皆様には心からお詫びを。当家の問題に巻き込んでしまい大変申し訳御座いませんでした。父上はあのようなことを言っていましたが私は皆さまの旅の邪魔をしたいとは思っていません。明日までに父上を説得するつもりです」


 「任せてください!」とヴィクトリアは胸を張るが私たちは顔を見合わせ、それから彼女に「ええっと」と声を掛けた。


「私たち、クルギス伯爵の話しを呑もうかと思っています。キオウ領までですしそんなに大変じゃないと思うので」


 「そ、そうなんですか……」と言うとヴィクトリアはなんだか気まずそうにもじもじとし始めた。


「ちゃんと道中は私たちの言うことを聞いてくれりゃ大丈夫よ。まあ? そこのメイドはアンタを海にすて……うご!?」


 ミリのおでこにユキノの高速手刀が入ったのが見えた。

仰け反ったまま動かなくなったミリをヴィクトリアが心配そうに見るとヘンリーおじ様が苦笑しながら「ところで随分と父君に愛されていますな」と話題を変える。


「戦が始まる前に家族を逃がすというのは良くあることですがクルギス伯爵は何か鬼気迫っている感じがしましてね。貴女を心の底から戦場から遠ざけたいのだな、と」


 ヘンリーおじ様の言葉にヴィクトリアは暫く無言で俯いているとやがて決意したように顔を上げた。


「私は生まれた時より人目に着かないように生きてきました。父上は私を決して公の場には出さず、静かに隠れ住むようにこの城に住んでいました。全ては私の力のせいです」


 「力?」と首を傾げるとヴィクトリアは頷き、ユキノに「怪我をしている腕を見せてください」と言った。

それにユキノは少し困惑しながら包帯を巻いた方の腕を差し出すとヴィクトリアがそっとユキノの腕に触れる。

すると彼女の身体から何か温かい光のようなものが溢れ始め、ユキノの腕に流れていくのが見えた。


「こりゃ驚いた……!」


 その光景を見たクレスが興味深げに身を乗り出す。


「これは……。腕が?」


 ヴィクトリアがユキノの腕から手を離すとユキノが驚いたように包帯を解き始める。

すると彼女の腕は治ったのか自在に動くようになっていた。


「お主、癒し手か」


 「癒し手?」とクレスに訊ねると彼女は「うむ」と頷く。


「治癒の術は女神の奇跡。魔術では人の傷を治すことは普通は出来ぬが、極まれに癒しの力を持った人間が生まれる。だが癒しの術とは己の生命力を人に分け与える術。使い手は力を使うたびに命を消耗させるのだ」


 驚きヴィクトリアの方を見れば確かに彼女の額には汗が浮かんでおり、少し疲れたように見える。

ユキノは慌ててヴィクトリアに「大丈夫なのですか?」と訊ねるとヴィクトリアは微笑みながら「この程度なら」と首を縦に振る。


「癒し手はその希少性から発見され次第、諸侯が保護し自由都市の一つである聖都アルカニアに預けることになっています。ですが人の傷を癒す奇跡は誰もが欲しがるもの。とくに戦争では負傷兵をいち早く戦場に復帰させることができます」


「━━エスニア大戦でも帝国・反乱両軍ともに癒し手を大量に動員しておった。その結果多くの癒し手がその命を使い果たし散った。大戦後も癒し手の血と肉には不老不死の力があるなどといったふざけた噂まで流れ、生きたまま喰われた者もおる」


 クルギス伯爵は己の娘が大公軍に捕まっても、反大公軍に”保護”されても戦争に利用され悲惨な運命を辿ると考えたのだ。

故に内戦から遠いキオウ領に彼女を逃がし、隠すつもりだという。


「その力を使うことは色んな意味で危険なこと。どうして私たちに打ち明けたの?」


 今の話通りなら術を使うことも、人に見られることも非常に危険な筈だ。


「……ご迷惑をお掛けするのならば誠実に理由を話すべきと。そして、皆様が本当に信用できるかを確認する為です」


「それで? 私たちのことは信用できそうかしら?」


 ミリの言葉にヴィクトリアは微笑むと肯定し、「明日からよろしくお願いします」と頭を下げた。


「ほれほれ、難しい話は終わりじゃ。こっからは優雅……からは程遠いがティータイムじゃ。メイド、儂のカップに紅茶を注ぐがよい!」


「自分でしやがりください、この駄蜥蜴」


 といいつつもユキノはクレスのカップに紅茶を注ぐ。

そして私たちはその後暫くの間は談笑し、ヴィクトリアにこれまでの旅のことなどを話すのであった。

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