第554話 提案させていただきます。


 アイは「ヤツ」の創造した「ヒトのカタチをしたモノ」だ。

 自律行動するし判断力も高いが、こうやって自分から提案を申し出てくるのは結構珍しい事のように思う。

 ともあれ提案自体は、


「大歓迎だ。言ってみてくれ」

「ありがとうございます」


 アイはいつもと変わらぬ調子で話しはじめた。


「当館の昇降機の構造を調べましたところ、丈夫な鋼線を動力で巻き上げる仕様となっておりました」


 うちのエレベーターはロープ式と言われるタイプのものだ。最新のものだと屋上に機械室の無いタイプもあるらしいが、うちみたいに古い建物は当然機械室がある。アイは機械室に入って確認したのだろう。

 全くの余談ではあるが「油圧式」のエレベーターもあるらしい。積載量が大きくなり、機械室も不要だという話だ。


「問題は動力源です」


 と、アイは言った。


「昇降機を稼働させるための動力を確保する必要があります。この点について提案させていただきます」

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